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Suicaがポイント業界に殴り込み! 日本の現金主義を変える救世主になるか?=岩田昭男

Suicaのオートチャージが入場時に加えて出場時にも働くようになりました。今後はクレジットカードに代わり、電子マネーがキャッシュレス化の主役になりそうです。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)

※本記事は、『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』2018年4月1日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:岩田昭男(いわたあきお)
消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。
岩田昭男の上級カード道場:http://iwataworks.jp/

オートチャージ拡大でより便利に。キャッシュレス化の促進なるか

右肩上がりで増え続けるSuica愛好家

首都圏では毎日の通勤にSuica(スイカ)が大活躍しています。

2001年にJR東日本が発行を始めてから17年になりますが、切符を購入する必要がないことや自動改札機にタッチするだけでわずか0.2秒で入場できる手軽さがウケて、発行枚数は一貫して右肩上がりで増えています(2018年1月時点の発行枚数6,630万枚)。

Suicaは非接触ICを使った電子マネーで、電車の乗車はもちろん、街のコンビニやドラッグストアなどの買い物にも利用できます。しかし「プリペイド方式」のため、あらかじめお金を入れておかないと使えません。

運悪く残高が足りなかった場合には、駅の自動改札機にタッチしても扉が開かず、入場(退場)することができません。

オートチャージでいつでも改札スイスイ

こうしたときに役立つのが、オートチャージ機能です。オートチャージとは電子マネーの残高が一定額を下回った場合に、決済時等に自動的に金融機関の口座からチャージ(入金)を行う仕組みのことです。

Suicaの場合は、オートチャージ設定金額と入金額をあらかじめ1,000円単位で決めることができます。私の場合は3,000円を下回った場合に5,000円を入金するというルールにしています。

この結果、朝夕のラッシュアワーの新宿駅で、改札の前で立ち往生することがなくなったので大いに助かっています。

3月17日から、改札を出るときにもオートチャージが可能に!

ただ今のところ、JR東日本とPASMOの利用できる私鉄圏内で、オートチャージ機能が利用できるのはビューマークのついたカードだけというのが残念なところです。

ビックカメラSuicaカードやJALカードSuicaなど、数が限られています。その代わり、いずれのクレジットカードもSuicaに紐付けておけばチャージのたびに3倍のポイントが貯まりますので、これはお得です(他での利用は0.5%のところ、1.5%になります)。

そして、2018年3月17日から、このオートチャージサービスが拡大されました。以前は改札から駅構内に入る時だけオートチャージ機能が働いていましたが、今では改札を出る時にも自動改札機にタッチすればチャージが可能になります。

ただし、出場時に運賃を精算した後の入金(チャージ)残額が、オートチャージの設定金額を下回る場合、1回のみオートチャージされます。オートチャージしても入金残額が精算額に満たない場合はオートチャージされません。

また、定期券区間を経由して、定期券区間外の駅間を利用した場合は、出場時にオートチャージされないなどの条件があります。

Next: ユーザーのためだけじゃない? JR東日本の本当の狙いとは



共通ポイント「JREポイント」の整備と連携

JR東日本がこうした新しいサービスを付け加えたのは、乗客の利便性を考えたのはもちろんですが、もう1つ理由があります。それは昨年にスタートした「JREポイント」という共通ポイントが関係しています。

現在JR東日本は、アトレ、シャポーなど、ばらばらだった駅ビルのポイントサービスを統合してJREポイントとし、さらにSuicaポイント、ビューサンクスポイントなどを統合してグループ内の共通ポイント化を急いでいます。

昨年12月にはSuicaポイントが正式に加わり、この6月にはビューサンクスポイントも加わって、JREポイントがその威容を現すことになっています。

こうなると利用者の意識は確かに変わるでしょう。

JR東日本の全ポイントサービスがJREポイントに統合されたならば、首都圏各地にあるアトレ、シャポー、グランデュオなどエキナカのショッピングセンターでの買い物分もポイントで合算できます。

さらに街中でのSuicaの利用やビューカードで貯まるポイントも合算できるため、意識して買い物をすると、かなり大きな額のポイントを毎月獲得できるようになります。

他の電子マネーとの限度額競争も意識している

一方で、エキナカでの利用が増えると、買い物に使うSuicaの利用も増えますから、結果的に残高も少なくなります。そうなると、自動改札機を出ようとしても残高不足で扉が開かないケースも増えるでしょう。

そうした不便をなくすために、自動改札機を出る際にもオートチャージができるようにしたのです。

その背景には、さらにプリペイド方式電子マネーの過当競争が隠れています。SuicaはもちろんPASMO、nanaco、WAON、Edyも誕生当初は限度額が最大2万円でした。今もSuicaとPASMOは2万円ですが、nanaco、WAON、Edyは5万円に上がっています。

特にnanacoとWAONの発行会社は、ここ5年ほどで、スーパーから百貨店にまで業態を広げているため、2万円では少なすぎるという声があがりました。その声に応えて、早々に5万円にまで引き上げた経緯があります。

コンビニなら2万円でも十分でしょうが、百貨店となると5万円ぐらいないと買い物ができないという判断です。

実際、現在の電子マネーの中で最も利用件数が多いのはnanacoと言われます。一方で、利用金額が最も多いのがWAONと言われています。

これはnanacoがセブンイレブンを中心として展開しているのに対して、WAONはイオンモールで単価の高い買い物が増えていますから、利用件数は少なくても金額が大きくなるというのです。

Next: クレジットカードに代わり、電子マネーがキャッシュレス時代の主役へ



電子マネーがキャッシュレス時代の主役に踊り出た

こうした動きを見てJR東日本も、Suicaで電車に乗ってもらい、エキナカでコーヒーやパン、新聞を買ってもらい、さらに駅ビルで洋服やアクセサリーを買うなど、すべてを駅の関連施設で消費してもらおうという戦略で動き出しました。そして、その中心にJREポイントが座るという絵を描いているのです。

そうした買い物の利便性を促進して高めるにも、エキナカから街中へと出るときにお金が足りなくならないように、出場時のオートチャージを付け加えたということでしょう。

電子マネーはかつては小額決済のツールでしたが、電子マネーが広く普及したことと人びとのリタラシーが上がってきたこともあって、今やクレジットカードに代わるキャッシュレス時代の主役になろうとしています。

このオートチャージサービス拡大の動きも、そうした流れの一環と見るのが正解でしょう。

image by:GagliardiImages / Shutterstock.com

※本記事は、『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』2018年4月1日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』(2018年4月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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世の中すっかりカード社会になりましたが、知っているようで知らないのがクレジットカードの世界。とくにゴールドカードやプラチナカードなどの情報はベールに包まれたままですから、なかなかリーチできません。また、最近は電子マネーや共通ポイントも勢いがあり、それらが複雑に絡み合いますから、こちらの知識も必要になってきました。私は30年にわたってクレジットカードの動向をウォッチしてきました。その体験と知識を総動員して、このメルマガで読者の疑問、質問に答えていこうと思います。ポイントの三重取り、プラチナカード入会の近道、いま一番旬のカードを教えて、などカードに関する疑問にできるだけお答えします。

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