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日本の世帯所得、20年で20%減という異常事態はなぜ改善されないのか=吉田繁治

日本の平均所得はこの20年で20%も減っています。これは世界でも例を見ない異常事態ですが、失業率の改善などを理由に日本は好景気という判断がされています。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2018年3月21日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

景気判断に失業率は無意味?「好況の実感がない」が起こるワケ

観光地から今後の経済を読む

いま、アリゾナ州セドナのホテルで、この原稿を書いています。鉄分の多い赤い砂岩と土の、居住人口1万人のリゾートの町です。フェニックスから北へ約2時間で、観光客は年間400万人ときわめて多い。軽井沢のように、別荘が立ち並ぶ名所です。標高は1,200メートルと高く、昨日の昼間気温は25度くらいでした。

観光地に来た理由は、早ければこの2年、遅くとも4年で襲う可能性が高いと見ている米国の「ゼロ金利株価バブル(名称をつけました)」の感触を探るためです。

遠方からきて消費する大きな観光地は、世帯と企業の「期待所得(※)」の増減をもっともよく反映します。ここに観光に来るためには、4~7日の休暇を取らねばならず、自分の所得が増えるという見込みが必要です。
(※注)期待所得は、データのある過去ではなく、将来所得への予想です。現代経済学は期待の経済学になっていて、経済活動の全体で期待(予想)の機能を重視します。

観光と景気の関係を理解するには、日米の雇用文化と賃金体系の違いを知らねばなりません。

日米で異なる「リストラ」への考え方

不況期の米国で増えるリストラでは、長い休暇はできますが、所得の不安から観光に行くことはありません

日本では、出稼ぎの季節労働以外では、一時リストラがほとんどない雇用文化(共通の行動様式)なので、不況期に企業が雇用をカットし、好況に向かうと再雇用することのイメージがわきません。終身雇用という、明文化されていない暗黙の了解による労働契約ですから、会社からリストラの対象になると、ほぼ永久に復職することはない

このため日本では、リストラは容易には行われません。正社員から失業すれば、その会社にはほぼ復帰ができず、失業保険の期間中に他の会社を探す就職活動を意味します。

不況期は、4か月分ある賞与の1か月から4か月分の削減、賃金のゼロ%上昇や切り下げ、経費の削減などで一定期間を耐え忍びます。その結果、1990年のバブル崩壊のあとは、賃金が下がり始めた1995年から現在までのように、平均賃金の減少が長く続き、増加はごく一時的という現象が起こるのです。

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