安倍首相が目指していると言われる放送事業の見直しは、放送法4条などの規制の撤廃です。モリカケの前にかすんでしまっていますが、これは大問題です。(『三宅雪子の「こわいものしらず」』三宅雪子)
※本記事は有料メルマガ『三宅雪子の「こわいものしらず」』2018年3月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
元衆議院議員。玉川学園女子短大、共立女子大学を卒業。テレビ局勤務を経て、2009年群馬4区で民主党から立候補し、比例復活当選。現在は、執筆やネット配信、福祉や介護のアドバイザーなどをしながら政治活動を行っている。
放送法4条「政治的公平」の撤廃を狙う安倍政権。成立すれば…
民間放送「解体」の危機にある
かねてから、安倍総理が自分に批判的なメディアが嫌いなことはよく知られています。先だっては、政治的公平さなどを求められない放送法の規制がないネットテレビ局に出演して、1時間にわたり持論をしゃべりまくりすっかり気をよくしたようです。
その安倍首相が目指していると言われる放送事業の見直しは、放送法4条などの規制の撤廃です。
今回の規制緩和は、「放送法の規制がかからないネットテレビ」(安倍総理談)などの放送事業への参入を促すものです。モリカケの前にかすんでしまっていますが、大問題です。
もし、政治的中立性の縛りをなくしてしまったら、特定の政党に偏った番組ばかりが放送される懸念があります。当然、お金がある与党寄りのものが多くなるでしょう。
ただでさえも、広告不況です。このうえネット事業者に放送事業の門戸を開けば、地上波キー局など既存の放送事業者は経営がそうとう苦しくなるでしょう。
この動きに、普段は安倍応援団が多い放送業界でさえ「民間放送が解体されてしまう」と警戒を強めています。
「政治的に公平」という決まりが気に入らない安倍政権
放送法4条とは
(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。2 放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送等の放送番組の編集に当たっては、静止し、または移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字または図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。
「政治的に公平である」。あたり前のことですが、これがお気に召さないのです。
やりたい放題のネット番組
一方、所轄の野田聖子総務大臣は20日の参院総務委員会で、放送法4条の撤廃を柱とする放送制度改革について「多様な意見を聞きながら、変えるべきところは変える、とどめておくべきところはとどめる、という流れがあると思う。私自身はまだ何も承知していないのでコメントは差し控えたい」と述べました。安倍総理からの指示はまだないということでした。
もともとネット番組及び配信に放送法の規制がかからないことには違和感がありました。業界団体もまだないため、まさにやりたい放題です。放送禁止用語もありませんから、無法地帯と言っていいかもしれません。
放送法見直しの前に、ネット配信のありかたを考えるほうが先ではないでしょうか?
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