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米中貿易戦争で板挟みになる韓国経済、とばっちりで完全敗北へ

米中貿易戦争は韓国経済にどう影響するのだろうか。韓国の鉄鋼もトランプ関税の免除対象になったが、それにはある条件があった。結論を言うと韓国の完全敗北だ。(『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』)

※本記事は、『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』2018年4月1日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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中国と一蓮托生の韓国経済。米国との2国間交渉でひとり負けに…

韓国もトランプ関税を免れたが…

今回は米中貿易戦争が韓国経済にどう影響するかを特集する。

先月、トランプ大統領が世界中の国に対して鉄鋼とアルミニウム関税を課すと宣言したことで、世界経済は大きく揺れた。最終的にはカナダやメキシコなどが免除対象になったが、その中には米国における鉄鋼輸入先3位の「韓国」も含まれていた。

しかし、韓国はただで免除してもらったわけではない。結果から述べると、これは韓国の完全敗北である。

「ひとり負け」状態の韓国

韓国が「鉄鋼関税」を免除してもらった条件は、次の通りである。

  1. 「数量規制」で輸出量を30%減にすること
  2. 米韓FTA再交渉における自動車関税で大幅に譲歩すること

(1)でわかる通り、これでは関税が免除されても、数量枠が規制されて輸出量が30%も減少したのでは、単純に考えて利益も30%減少する。

韓国の米鉄鋼輸出は3兆ウォン(3000億円)。これの30%減なので、最大で9000億ウォン(900億円)が削減されることになる。2015年~17年の韓国の米鉄鋼輸出は平均383万トンであり、これの70%に当たる268万トンが上限となるのだ。

この時点でも敗北決定だが、さらに(2)もある。同時期に交渉していた米韓FTAでは、韓国製ピックアップトラックの関税を維持するという条件だ。

もっとも、この韓国製ピックアップトラックは輸出すらされていない。つまり、韓国は免税のために米国と2国間交渉を行ってしまい、韓国不利な条件で再契約させられたわけだ。トランプ大統領はこの成果をすぐさま発表し、まさに韓国だけが「ひとり負け」となったのだ。

Next: 韓国と同じ轍は踏まない日本。米国との2国間交渉は回避で正解だった



「TPP11」を優先した日本

このような米国の通商圧力に対して、麻生財務大臣は29日午前の参院財政金融委員会で「これをてこに2国間の個別交渉に引きずり込まれないようにするのが一番肝心なところだ。我々はこれだけは断固拒否する」と述べている。

つまり、日本は日米FTA交渉など、2国間の交渉は行わない。TPP11を優先するということ。完全敗北した韓国と同じ轍は踏まない。これもTPP11という巨大な枠組みがあってこそだ。

韓国の場合は、2国間で交渉可能なFTA政策を重視してきた。これは先月に逮捕された元明博元大統領から続く外交の流れだが、どちらが最終的に有利にことを運べるかは一目瞭然だろう。

確かにTPP11の交渉には5年以上も費やした。しかし、そのTPP11があるからこそ、日本は主導権を握れるわけだ。

私はかねてより、アメリカがTPPを抜けてくれたことを大歓迎している。TPP11を抜けたのはトランプ大統領の悪手だったと思う。

中国経済が衰退すると、韓国株がそのまま売られる

ここまで韓国が完全敗北した経緯を述べてきたが、実はまだ終わっていない。米国と中国による「米中貿易戦争」は始まったばかりなのだ。

これは、韓国経済にとってはかなりの痛手になる。中国経済が衰退すると、韓国株がそのまま売られる。この動きは数年前、中国市場の大混乱の時に起きたことだ。

交渉が中国有利に運ぶことはまずないので、何らかの貿易制限が課せられたら、それだけで韓国株は売られるだろう。

実際、今の韓国株は半導体株だけが急上昇していて、他はお通夜状態だと言っていい。サムスン電子を除く大企業のほとんどが利益をあげていない。現状維持が関の山である。

Next: サムスン電子が支える韓国株。しかしそれも米国の貿易規制次第…



サムスン電子の業績も「米国の貿易規制」次第

しかし、それで韓国市場が崩壊するかと考えると、それはないと見ている。

サムスン電子が好調なら韓国経済は安泰なわけだ。裏を返せばそれだけサムスン電子一極ということだ。

そして、それも米国の貿易規制にかかっている。韓国の専門家はこの貿易規制は韓国の主力分野である自動車部品、半導体などにも及んでくるのではないかと見ている。

さらに韓国は、例の為替相場操作国指定というのもある。つまり、サムスン電子がこの先も好調であるための条件がどこまで維持されるのか。それはまだまだわからない。トランプ大統領次第ということだ。

もっとも、半導体分野では中国が大規模な工場を建設中である。稼働は今年の秋から冬にかけてと言われている。


※本記事は、『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』2018年4月1日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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・米中貿易戦争で板挟みにされる韓国経済は両国に完全敗北!?(4/1)

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2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』(2018年4月1日号)より一部抜粋・再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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数年ごとに起きるデフォルト危機。世界経済が後退すれば、投資家が真っ先に資金を引き揚げていく新興国市場。輸出依存が96%という恐ろしい経済構造。ヘッジファンドに玩具にされる韓国市場。中国の属国化へと突き進む2014年。並行してスタグフに悩まされる現実。そして、1100兆ウォンを超え、雪だるま式に膨らむ家計債務の恐るべき実態。経済の問題点とは何なのか?なぜ、また、第四次経済危機が迫っているといえるのか。それは読めばわかる!投資、ビジネス、教養、雑談ネタにも最適な、最も韓国経済の実情を知ることが出来るメルマガ。

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