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トランプが北朝鮮を黙らせたのは、イランに戦争を吹っかけるための布石にすぎない=高島康司

米国が核合意離脱を決めたことで、いよいよイラン戦争が始まりそうだ。さらに言えば、北朝鮮との和平が加速すればするほど、イラン攻撃が近くなると見てよい。(『未来を見る!ヤスの備忘録連動メルマガ』高島康司)

※本記事は、未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 2018年5月11日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

ついに「中東有事」勃発か。北朝鮮とイランの情勢は連動している

アメリカが「イラン核合意」から離脱

5月8日、トランプ大統領は公約通り、2015年にイギリス、フランス、ドイツ、そしてロシアも参加してイランと締結した核合意からの離脱を発表した。IAEA(国際原子力機関)による度重なる査察によって、イランの核兵器開発の事実がないことははっきりしていたが、イスラエルの言い分を鵜呑みにしたトランプ政権は、イランがいまだに核兵器開発を秘密裏に行っているとして、核合意から一方的に離脱した。そして、最大限の制裁をイランに課すとしている。

本来、これは5月12日には発表されるとしていたが、4日も前倒しで行われた。

イラン戦争は間近か?

この発表とまさにタイミングを合わせるように、イスラエルによる攻撃が一斉に始まった。まず、8日にシリアの首都、ダマスカス南部のキズワにあるイラン革命防衛隊も使っている基地が攻撃され、イラン人8名を含む15名が死亡した。兵器を輸送しているイラン革命防衛隊が標的にされたようだ。

また、シリア北西部の都市、イドリブ西部でも大きな爆発があったことが確認されている。そして、ダマスカス西部のアル・カスラでも攻撃があった。ダマスカス南部のジャバール・アルマネーでも同様の攻撃があった模様だ。

4月13日のトマホークによる攻撃を実質的に撃退したシリア政府軍やイラン革命防衛隊が攻撃されているのは、イスラエル空軍機がアメリカ軍機のトランスポンダーを偽造し、アメリカ軍機のように見せかけて攻撃しているからだと見られている。

いまシリアでは、反政府勢力を支援するアメリカ軍と、シリア政府軍を支援するロシア軍とは同じ空域を飛行している。

両軍は、それぞれの軍機を識別するトランスポンダーという信号を使い、両軍が戦闘状態になることを回避している。アメリカ軍機のトランスポンダーであれば、シリア政府軍もロシア軍も攻撃を控えている。

イスラエルは今回この取り決めを悪用し、アメリカ軍のトランスポンダーを偽造して飛行している。そのため、シリア政府軍やイラン革命防衛隊の防空システムが作動できないようにしているのだ。

Next: 加速する戦闘準備。前回4月13日のシリア攻撃よりも危険な状況に



加速する戦闘準備

また、レバノン上空では、アメリカ軍にエスコートされたイスラエル軍機によるシリアの偵察飛行が増加している。これは、イスラエルによるシリアの大規模な攻撃が近い可能性を示唆している。

そして、イスラエル軍が偵察しているレバノンの同じ空域では、ロシア軍の戦闘機がイスラエル軍機を牽制するかのようにジグザグに飛行しているのが記録されている。また、イスラエル軍のF15戦闘機に給油するための空中給油機も待機していることが確認された。

さらに、シリア南部のシリア領で、イスラエルが実行支配しているゴラン高原では、イスラエル軍の予備役召集が開始された。この命令はいまのところゴラン高原だけだが、イスラエル全土に拡大される可能性もある。

また、ゴラン高原の防空シェルターにいつでも住民が避難できるように、シェルターの扉の開放が指示された。そして、シリアと国境を接するイスラエル北部のすべての病院には、戦争警戒体制でもっとも水準の高い「レベルC」が発動された。

これらの動きは、イスラエルがイランによる報復を想定し、それに準備していることを示している。またイスラエルは、シリアではなく先頃選挙で圧勝したヒズボラが支配するレバノンを先に攻撃し、レバノンのヒズボラの拠点の壊滅を狙う可能性も指摘されている。

そして5月9日、シリア領でイスラエルが実行支配しているゴラン高原に、シリア側のイラン系武装勢力の基地から、20発のミサイルが打ち込まれた。イスラエルがこれに報復したものの、どちらの攻撃でも死傷者はいなかった模様だ。このためもあってか、戦闘は限定的なものに止まり、拡大する気配はいまのところないようだ。

4月13日時点よりも危険

このような状況は4月13日に行われたアメリカ、フランス、イギリスによるシリア攻撃のときよりももっと悪い状況ではないかとする見方も多い。

それというのも、4月13日の攻撃では、事前にロシアはアメリカに、シリア領内で攻撃してはならないロシア軍の軍事施設を事前に通知し、アメリカ軍がこれを攻撃しない限り自制する構えであった。

それに対し、イスラエルが主導する今回の攻撃では、そうした事前の取り決めがないので、ロシア軍が活発に動いていることである。最悪な状況では、ロシア軍機とイスラエル軍機、またはアメリカ軍機がシリアの空域で戦闘状態になる可能性もある。

いずれかの軍に死者が出た場合、これがもっと大きな戦争の引き金になる可能性は否定できない状況になるかもしれない。

Next: 所在非公開のアメリカ軍「4万名」がシリア周辺に配備されている?



アメリカ軍の地上部隊にも動き

このような中、アメリカ軍の地上部隊も動いている。すでに4月から4000名のアメリカ軍がヨルダンのシリア国境付近に展開している。これはヨルダン軍との共同軍事演習のためだと説明されていたが、演習が終了しても撤退する気配はない。これは、これから始まるイランの報復に対応するための展開なのではないかともいわれている。

ところで、現在海外にいる4万4000名ほどのアメリカ軍部隊の所在が明らかにされていない。米国外に展開していることは間違いないようだが、具体的な場所は公表されていない。もしかしたら、やはりこれから始まる可能性のあるイランの反撃に備えるために、ヨルダンのシリア国境周辺に配備されている可能性もあると見られている。

イランの反撃を口実に一気に攻撃する

このように、いま非常に緊張した状態だ。レバノンやイスラエルのシリア国境付近で、いきなり大きな戦闘が始まる可能性が次第に高くなっている。

こうした動きを見ると、明らかにイスラエルはイランを挑発しており、イランによる報復を誘発しようとしている。イランがなんらかの報復攻撃に出ると、イスラエルはこれを口実に、一気にシリア領内のイラン関連軍事施設の全面的な壊滅を目指した大規模な攻撃に踏み切るはずだ。

また将来万が一でも、イランが核合意から離脱した場合、核兵器の開発の疑惑を口実に、イラン本土を標的にした攻撃さえも、イスラエルは辞さない可能性は高いと見られている。

このような動きは、前回の当メルマガで解説したイスラエルの基本政策である中東流動化計画が過激に遂行されており、それをネオコンと軍産複合体に完全に吸収されたトランプ政権のアメリカが全面的に支援している状況だ。

北朝鮮とイスラエルの関係

トランプ政権にとって、イスラエルの安全保障のための中東流動化計画の実現のほうが、北朝鮮の問題よりも優先順位がずっと高いと見てよい。

しかし、イランを弱体化させ、中東流動化計画を推進するためには、実は北朝鮮の非核化を推進し、アメリカが北朝鮮との敵対的な関係を終わらせることが前提条件になるのだ。

この意味で、北朝鮮とイランの情勢は深く連動している。北朝鮮との和平に向けた動きが加速すればするほど、イラン攻撃が近くなると見てよい。

このように北朝鮮とイランの情勢が連動している理由は、北朝鮮のイスラエルとイランとの関係を見ると明らかだ。

まず北朝鮮とイスラエルとの関係だが、歴史的に北朝鮮はイスラエルと敵対的な関係にあり、イスラエルを国家として承認していはいない。北朝鮮はイスラエルと対立するアラブ諸国側を長年支援してきた。そして、イスラエルと北朝鮮の戦闘機が激突した歴史まである。

1973年10月、エジプトやシリアなどのアラブ諸国が1967年の6日間戦争でイスラエルに占領された領土の奪還を目的に、イスラエルを攻撃した。第4次中東戦争の開始である。

このとき、北朝鮮はアラブ諸国を軍事的に支援し、20名のパイロットとともに、MIG21戦闘機の編隊をエジプト南部の基地に派遣した。この戦闘部隊はエジプト上空で、イスラエルのF4ファントム戦闘機と交戦している。

Next: 北朝鮮が「イランの核開発」を支援。その目的とは?



北朝鮮はイランの核開発を支援

第4次中東戦争はオイルショックを引き起こしながらも、エジプトとシリアは占領された領土の奪還に失敗し、イスラエルの実質的な勝利で終結した。

その後、1979年にはエジプトのサダト大統領がイスラエルとの歴史的な和平に応じたため、イスラエルが占領していたシナイ半島をエジプトに返還し、両国の敵対関係は終了した。

しかし、その後も北朝鮮のアラブ諸国支援は継続した――

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イランと北朝鮮との関係を切ることが重要

image by:Wikimedia Commons | Drop of Light / Shutterstock.com

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未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ」(2018年5月11日号)より一部抜粋・再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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