マネーボイス メニュー

360b / Shutterstock.com

小泉、野田、安倍――内閣支持率のピークアウトと株式相場の関係を考える=山崎和邦

報道各社の世論調査で厳しい数字が出ている安倍内閣の支持率。この夏には、さらなる支持率低下に繋がりかねないイベントが待ち構えているとあって、過去の内閣支持率と株式相場の関係が気になるところです。投資歴54年、BS12『マーケット・アナライズ』でお馴染みの山崎和邦氏が解説します。

【関連】米国株を買い支える「暴落阻止チーム = PPT」に異変発生

内閣支持率と株式相場の関係

安倍内閣の支持率が2012年12月発足以来の支持率・不支持率逆転となり、その差がますます開いている。30%台に入って黄色信号レベルに陥った。

一方で野党・無党派層が低迷し、野党が政権批判の勢力になっていないのも現在の特徴であろう。

支持率ガタ落ちとはいえ35%の政権党と11%の民主党との差は依然大きい。

日経新聞で行う支持率調査は乱数表を使った無作為の1,400軒から900人以上の回答だから、統計学上の信用は置いてよかろう。街頭で採った物では信用おけないが。

以前にも述べたように、外国投資家は国内投資家よりも内閣支持率を重視する。この例は過去にいくつもあった。

民主党内閣の時代に政治不作為と本稿は言ったが、海外から見れば支持率の恒常的低位があった。

その前、郵政改革相場の前、小泉首相が、外務大臣として機能しなかった田中真紀子を2002年にクビにした時も一挙に支持率を落とし株価を下げた。

そこで小泉首相は北朝鮮に飛んで拉致問題を引きだしてきて支持率を上げ、2003年春には不良債権のハードランディング方針を転換して「りそな銀行2.2兆円公的資金注入」でケリを付けた。さらに郵政解散選挙で支持率が上がって、「日本は変わるぞ」と海外投資家が一挙に買ってきて新高値を更新した。

安倍内閣発足以来、初めて支持率・不支持率の逆転を起こし、その差は拡大している。この現象から安倍ブームはピークアウトしたと言える。

TOPIX 月足(SBI証券提供)

安倍内閣発足直後、本メルマガで憲法問題に触れた際、「唐突感がある」と読者から言われた。確かにその当時としては唐突感があったろうが、改憲が難しいと悟った安倍さんは解釈改憲という屁理屈でゴリ押しして今日の不祥事に至った。

こういう事態を筆者は気にしていたのだ。とにかく改憲は1955年の自民党結党以来の60年間の宿願だったからだ。まずは「経済を取り戻す」を標榜して株高・円安で実績を上げれば必然的に支持率が上がる、それを武器として「55年体制の宿願だった改憲」に挑む、これが安倍一族のDNAである。その危険をこの内閣は最初から孕んでいたことを筆者は言っていたのだ。

この段階に来てカンシンするのは参謀スガさんの知恵である。支持率低下をむしろ奇貨として「国民の安全を守るために為すべきことは支持率を落としてまでも為す、これが我が党の昔からの良心の伝統だ」と詭弁を弄した。これには屁理屈を言い慣れてきた筆者も舌を巻いた。

Next: 内閣支持率のピークアウトが意味するもの


初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

山崎和邦 週報『投機の流儀』

[月額1,500円(税込) 毎週日曜日(年末年始を除く)]
大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

内閣支持率のピークアウトが意味するもの

わが国では日経平均株価が2倍半になる大相場では必ず愛称がついた。

1972年は週足14本の連続陽線をつけて株価は1,981円から5,359円へと2年で2倍半になった。これを「列島改造相場」と言った。

1987年のブラックマンデーから2年で、株価は20,000円から38,915円へと約2倍になった、これを「平成バブル相場」と言った。

また2003年の7,607円から2年半で18,261円まで2倍半になった、これを「郵政改革相場」と言った。

経済白書が夏のベストセラーだった時代に、白書は景気循環に愛称をつけたが、すべて事後にである。同様に、株価の大相場も事後に自然に愛称がついた。

しかし今回は最盛時から「アベノミクス相場」と言われ、株価は経済政策と共に進んだ。戦後、今の内閣ほど株価に気を配った内閣はない

今回ほど政策と密に直結した相場も珍しい。過去の相場において、財政出動を好感し一時的に6割上昇したことが、「失われた13年(90年1月の大暴落から03年「りそな救済」で方向転換するまでの、不良債権山積時代)」で3回あったが、その最盛時から愛称で呼ばれたことはなかった。

今回は株価上昇の初期からアベノミクス相場と言われていた。それだけに「安倍内閣の支持率」は「株価の支持率」と同義である。

その安倍内閣の支持率がピークアウトしたということはアベノミクス相場がピークアウトしたということになる恐れがある。

これから老年期相場があるとすれば、それは“夢よもう一度”の相場だから、最高値を抜くくらいのことはあり得て不思議はないが、老年期相場の「老いらくの恋」は青春期相場とは勢いも内容も違ってくる。

そして、それが実現するためには1日売買代金3兆円超が続かねばならない。

相場という生き物は一人の権力者の思惑だけで動くものではない。しかるべき政策を伴ってこそ動くものだ、これを安倍さんは忘れてはならない。

こうした状況は2013年の参議院選挙や14年の消費増税を控えた20122年夏とまったく同じ状況だと思う。当時の野田政権も支持率低迷に喘いでいた。

いまの安倍政権は女性活躍推進や地方再生という看板政策が支持率にまったく効いていない。支持層が男性に多く、関東関西の都市部に多いのがその証左であると謙虚に受け止めるべきだ。看板政策を案出しなければ現在の黄信号はより強まる恐れがある。

山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2015年8月2日号)より一部抜粋
※太字とチャート画像はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

山崎和邦 週報『投機の流儀』

[月額1,500円(税込) 毎週日曜日(年末年始を除く)]
大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。