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債券ファンド大手ピムコが警鐘「3年後に米経済はリセッション入り」の現実味=矢口新

世界最大級の債券ファンド・ピムコは、3~5年後に米経済がリセッション入りし、さらに危険度も高いと予想。これには私も同感だ。その根拠について解説する。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』2018年6月4日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

今後は戻り売りが優位?「底が浅く、期間が長い景気後退になる」

世界最大の債券ファンドが警告

世界最大の債券ファンドの1つ「ピムコ(PIMCO)」が、向こう3~5年に米経済がリセッション入りする可能性が高いと予想した。まずはブルームバーグの報道(5月31日付)を紹介する。

PIMCO幹部のヨアヒム・フェルズ、アンドルー・ボールズ、ダニエル・アイバシンの3氏は同リポートで、向こう3~5年に米経済がリセッション入りする可能性は高いと予想。「短期間のV字型というよりも、中華鍋や皿のような形で底が比較的浅く、期間が長めの景気後退になる見通しに傾いている」と述べた。

米国のリセッションが浅めになる理由として、企業や住宅の過剰投資や行き過ぎた消費の兆候がない点に言及。ただ、低金利や多額の財政赤字で政策対応の余地が限られるため、期間は長めになると予測した。

出典:「押し目買い」は過去の遺物か、社債保有リスク抑制を-PIMCO – Bloomberg(2018年5月31日配信)

PIMCOは「2008年の危機以来、経済の悪いニュースは通常、政策当局者が迅速に対応してきただけに、金融資産にとっては良いニュースと解釈されてきた。しかし、この『押し目買い』心理は持続しない可能性がある」と指摘した。

出典:同上

PIMCOは、中央銀行が「市場にあまり優しくない」姿勢を取る(「押し目買い」が機能しない)可能性があるとして、社債保有リスクを減らし、ユーロ圏周辺国に対するエクスポージャーを抑制するよう顧客に勧めた。一方で新興国市場投資については依然として長期的な恩恵を予想した。<中略>

PIMCOによると、インフレ期待が極めて低く、ユーロ圏の構造的な弱さもある上に、富の再配分や没収を目指すポピュリストの反撃といったリスクもあるため、次の景気後退は危険度が高くなる可能性もあるという。

出典:同上

なぜ米経済は景気拡大が続いているのか?

景気拡大のサイクルから見れば、米経済がいつリセッション入りしてもおかしくはない

それでも景気拡大が続いているのは、

  1. 利上げを続けているとはいえ、まだノーマルと見なせる水準からは緩和的である
  2. 量的緩和を終了し、資金を引き上げ始めたとはいえ、米連銀は未だに2008年以前の5~6倍ものバランスシートを維持している
  3. トランプ減税などの財政刺激策を取っている

ためである。

つまり、2007年後半から始まった米政府の空前の景気拡大政策は継続中なのだ。

Next: 次の景気後退は危険? 3~5年後の米経済はどうなっているか



次の景気後退局面は危ない

では、3~5年後にはどうなるか?

  1. ノーマルを超えるレベルまで政策金利が高くなっている可能性が高い
  2. バランスシートは、対インフレ率での自然増レベルにまで縮小する可能性が高い
  3. 財政収支の改善なしには、これ以上の刺激策が取れなくなる可能性がある

ここに景気拡大のサイクルを加味すれば、ピムコの見方に無理がないことが分かる。

この見方が外れるとすれば、3~5年後ではなく、3年以前にリセッション入りする方向だと見ていていい。また、こうした環境で迎えるリセッションは「危険度が高くなる可能性」を否定できない。

大型ファンドにある足枷

ファンドには長期投資を専門とするミューチュアルファンドと、短中期投資のヘッジファンドとがある。ピムコは前者で、しかも大型だ。

このことがわかれば、「押し目買い」の意味が正しく理解できる。

ヘッジファンドの名前の由来は、現物保有資産を先物売りでヘッジする「売りヘッジ」だ。つまり、上がると見なせば買い、下がると見なせば売れる。成否を決めるのは、売買のタイミングだ。

高値から下げている時に行う「押し目買い」は、利益確定、あるいは利益確定後の新規買いでない限り、利が乗ったポジションを膨らませる「買い乗せ」か、損失ポジションのコストを引き下げる「ナンピン買い」となる。

これは、より多くのリスクを取ることを意味するので、新規買いに増して特にタイミングが命だ。そうしたタイミングを計るのに、3~5年の見通しを用いるのは、的外れだと言える。

「買い乗せ」や「ナンピン買い」は、買った直後からでも下げ続ければ、命取りになりかねないからだ。

一方、資産を長期にわたって保有し、空売りを行わない長期投資には、そこまでのタイミングは必要ない。加えて、ファンドに資金が入り続けていれば、タイミングなどは言っていられず、何らかの形で買い続ける必要があるし、資金の純減が続いていれば、見通しとは関係なしに売らねばならない。

また、ピムコのように大型になると、一気に動けば自らの行動で高値掴み、安値売りとなるので、少しずつ買い進めたり、売り続けることになる。

その基本的な手法が、「押し目買い」と「戻り売り」だ。人が売っている時にしか、十分な量が買えず、人が買っている時にしか、必要量が売れないのだ。

Next: 社債やユーロ周辺国を中心に、今後は「戻り売り」が機能する展開へ



今後は「戻り売り」が機能する展開へ

2007年後半に金融緩和が始まって以降、特に2008年末の量的緩和以降は、中央銀行が支える相場だった。

中央銀行が供給する資金は、市場にも入り続けてきたので、売られたところを買う「押し目買い」が基本的には機能してきた。

それが今後は、前述の見通しの理由から、社債やユーロ周辺国を中心に「戻り売り」が機能する展開になっていく。

これがピムコの言っていることで、私も同感だ。

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image by:Andrey Bayda / Shutterstock.com

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相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』(2018年6月4日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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