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今でも融資が出やすい「戸建て」は買いか? 見逃しがちな5つのポイント=姫野秀喜

銀行融資の審査基準が厳しくなっていますが、今でも「戸建て」は比較的融資が出ています。今回は戸建てを購入する際のメリット・デメリットを詳しく解説します。(『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』姫野秀喜)

プロフィール:姫野秀喜(ひめの ひでき)
姫屋不動産コンサルティング(株)代表。1978年生まれ、福岡市出身。九州大学経済学部卒。アクセンチュア(株)で売上3,000億円超え企業の会計・経営計画策定などコンサルティングに従事。合間の不動産投資で資産1億円を達成し独立。年間100件以上行う現地調査の情報と高い問題解決力で、顧客ごとに戦略策定から実行までを一貫してサポートしている。

いい物件があればすぐ動け? メリット・デメリット各5点を解説

融資の審査基準が厳しくなっている

ここのところ不動産投資への融資が出にくくなってきて、なかなかフルローンは難しくなっています。

といっても、融資がまったく出ないわけではありません。しっかりとした物件を持ち込まなくてはならず、自己資金をきちんと投入しなくてはならないというように、ちょっと昔の基準に戻っただけです。

まぁ、これはこれで、審査が厳しくなることで、儲からない物件を不用意に購入できなくなるわけで、デフォルトのリスクが下がるため悪いことではありません。

今でも融資が出やすい「戸建て」

そんななか、今でも比較的融資が出ている物件というのがあります。それが「戸建て」です。

ここでいう「戸建て」は、いわゆる格安の戸建てです。たとえば、23区内でいえば1,000万円以内、千葉や埼玉や神奈川の東京寄りのエリアなら800万円以内くらいの小ぶりの金額の戸建てです。

これより高い金額では、投資としての利回りが悪くなるので、せいぜいこれくらいの金額までに絞り込みます。

このような小ぶりの戸建て投資について、メリットをまとめてみました。

戸建て投資の5つのメリット

<1.金額が小さいため気軽に投資できる>

金額を1,000万円以下に絞って戸建て投資を行えば、数千万円、数億円など大規模に借金を背負わなくてよいため、あまり借金のリスクを恐れずに済みます。23区内の戸建てであれば、最悪の場合でも、売却すればほとんど借金も残らないため、きわめてローリスクだと言えます。

<2.融資が出やすい・自己資金が少なくて済む>

23区内とその周辺に限れば、1,000万円以下の戸建ての多くは土地値です。つまり高積算な物件となります。また、家賃もそこそことれるため、必然的に高利回りにもなります。要するに、積算評価も収益還元評価も出やすく、金融機関からの融資が引きやすいのです。

また仮に、金融機関から融資額を1~2割ほど減額されたとしても、手出しの現金が100~200万円程度増えるだけなので、比較的購入できる人が多いです。

これが1億円規模のマンション一棟などになれば、1~2割減額で1,000万円~2,000万円の手出しとなりますので厳しいのですが、小規模戸建てであれば自己資金が少なくても大丈夫です。

<3.安く買える時がある>

マンションやアパートなどの共同住宅は、そもそもの目的がお金をかせぐためのものです。売主さんも当然、投資として考えています。よって、売買するときも、ある程度利益を見込んだ価格設定をしています。

しかし、戸建ての場合、売主の多くは投資家ではありません。つまり、投資目線での価格設定ではなく、ある程度、お金になればよいという「欲のない」価格設定になっていることがあるということです。

もちろん、だからといって指値が通りやすいというわけではありませんが、普通の投資家に対しての指値よりも、少しだけ指値が通りやすい印象があります。

<4.需要と供給に差がある>

マンションやアパートなどが多いエリアでも、戸建ての賃貸はなかなか見つけることができません。というのも、戸建ては基本的には自分たちで住むために建てるわけで、人に貸し出す前提で建てられていないからです。そして、小さいお子さんがいる母子家庭などは、戸建てに住むニーズがありますが、戸建て賃貸が少ないという状況です。

そういう意味で、23区内や都心の好立地なエリアにある格安戸建て賃貸には圧倒的な優位性があります。

<5.内見して購入することもできる>

マンション・アパートの場合、入居者が住んでいるため、基本的に内見をすることができません。それに対し、戸建ての場合、その多くは空室です。そのため、購入前に内見をすることができます。

内見をしておけば、壁紙や床、天井や風呂トイレなどの設備を事前に見ることができ、修繕にかかる金額を見積もることができます。そうして見積もった金額をもとに、指値交渉をすればよいのです。

なので、空室であってもデメリットではなくメリットと考えることができるのです。

Next: いい物件があればすぐに動くべき? 戸建てのデメリットは



戸建て投資の5つのデメリット

次に、戸建て投資のデメリットについても解説します。

<1.金額が小さく、手間やコストが割高になる>

まず、1,000万円以下の戸建て投資は金額が小さいため、入ってくるキャッシュフローも小さくなります。

しかしながら、売買にかかる手間(時間と労力)は、5000万円や1億円のものを売買するのとほとんど変わらないため、手間のわりに儲からないなという気持ちになります。

また、売買時にかかる、登記費用は売買物件の金額に関わらずあまり変わらないため、必然的に手数料が割高となります。

<2.現金買いの人に負ける>

1,000万円以下の小ぶりな戸建てについては、高積算で高収益になるので融資が出やすいのは確かです。しかし、融資を使ってそういった物件を購入しようとしていると、しばしば現金の人に負けることがあります。

不動産投資の世界では1,000万円以下は、きわめて金額が小さいので、現金で購入できる人もたくさんいます。そのため、融資承認を待っている間に、現金買いの人が現れて、買い負けてしまうことがあるのです。

まぁ逆に言えば、現金買いができる人は、さくっと買ってしまうという戦略も取れます。

<3.不動産業者が嫌がる>

不動産業者も商売なので、あまり金額が小さすぎると、取り扱い自体を嫌がることがあります。

1,000万円以下の戸建てでも、1億円の物件でも、もらえる仲介手数料は3%なのに対し、かかる手間はほとんど変わりません。よって、あまり熱心に動いてもらえない、もしくは金額の大きなお客さんを優先し、小さな戸建てについては後回しにされるということがあります。また不動産の営業マンも、あまり小さなものには興味がないため、積極的に情報を教えてもらえないことも多いです。

それから、ポータルサイトにもあまり載せてもらえないことがあります。ポータルサイトの掲載は不動産業者が月々お金を支払って枠を確保しているものです。ですので、同じ金額を払って枠を使うのであれば、1,000万円以下のものではなく、5,000万円や1億円くらいの大きなものを優先するからです。

そういうわけで、業者があまり動かないため、必然的にライバルが少ないという意味ではメリットとも言えますが、逆に言えば、自分の為にちゃんと動いてくれる業者がいない人は買うことができないというデメリットにもなるのです。

<4.圧倒的に球数(売り物件の数)が少ない>

23区内、1,000万円以下、所有権、再建築ができる、建物がちゃんと使える。これらの条件を満たす、戸建てはなかなか出てきません。

私は毎日レインズで物件を見ていますが、23区内で1,000万円以下の戸建ては、毎日10~15個くらいしか登録・更新されておらず、そのほとんどは、再建築不可か借地です。

はっきりいって、めったに出ません。そして、出てきても速攻で消えます(売れてしまいます)。個人投資家もそうですが、建物を壊して新築を建てたい建築業者などが現金で速攻で買い付けるので、かなり動きが速いのです。

これが1~2億円の物件であれば、買える人も少ないですし、融資に時間がかかるので、そこそこレインズに残っているのですが、1,000万円以下だと、即日に現金で売買されることもあり、消えるのが早いのです。

<5.圧倒的に手間がかかる>

1,000万円以下の物件は動きが早いため、購入するにはライバル以上に早く動く必要があります。具体的には、物件を探す頻度を高くする、スピードを早めて動く必要があります。

物件を探す頻度を高くするというのは、週に1回以上が目安です。物件自体はいつでるかわからないため、たくさん打席に立つことが大事になります。

スピードを早めて動くとは、物件発見から買付までを素早く動くということです。夜8時に物件を発見したら、速攻で夜9時に見に行って、夜の10時に買付を入れるくらいのスピード感で、買付を入れて1番手を確保する必要があります。

口で言うのは簡単ですが、これを実行するのはかなり大変です。これができる人だけが、高積算・高利回りの小ぶりな戸建てを手に入れることができるのです。

Next: チャレンジする価値はある。業者・金融機関との連携がカギ



不動産業者・金融機関との連携がカギになる

投資家自身、不動産業者、金融機関が三位一体となって速攻で動かないと、1,000万円以下の小ぶりな優良物件は購入できないわけです。これまた、小さな金額だと不動産業者も金融機関も、嫌がることが多いのもネックです。

うちでは、基本的に1,000万円以下でも懇切丁寧に仕事をしていますが、大手ではできないだろうなと思います。

まぁそんなわけで、険しい道ではありますが、戸建て投資はまだまだ融資も出るし、良いことも多いのです。

メリット・デメリットを知ったうえで、ぜひチャレンジしてみてください。

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1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』(2018年7月5日, 6日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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