マネーボイス メニュー

米経済は今がピーク。トランプの本音「ドル安が好き」に見る長期停滞論の現実味=藤井まり子

FRBが「秘密裏」に米国株式ブームの延命と拡大化を進めるなか、トランプは率直にそのまんま「ドル安が好き。低金利が好き」と、本音を言ってしまいました。(『資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ − 貞子ちゃんの連れ連れ日記』藤井まり子)

※本記事は有料メルマガ『資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ − 貞子ちゃんの連れ連れ日記』2018年7月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

現れた異変。AIブームも、現場では生産性がまるで上がっていない

4%成長をたどるアメリカ経済の「長期停滞論」

目先の話ではなく、中長期の話です。アメリカの第二四半期の実質経済成長率は、およそ4%前後になると見込まれています。

減税によって個人消費がすこぶる強くなっている。さらに、「米中貿易摩擦がエスカレートする」場合を見越して、米中間では「駆け込み輸出」「駆け込み輸入」が活発化しています。

この結果、アメリカの実質経済成長率は第二四半期:4%前後の高い水準にまで上昇しているようです。

さすがの米経済も「今が頂点」か

さすがのアメリカ経済も実質経済成長という点では、「今が頂点」かもしれません。

こんなに景気が良いのに、目下のところ、インフレ期待は2%ちょっとにとどまったまま。賃金上昇率(=賃金インフレ)も2.7%前後で、今後「急」上昇してくれるかどうか…心もとないところがあります。

年内「利上げ」せいぜいあと2回

賃金インフレが8月から上昇し始めれば、期待インフレも高まって、2018年のFRBは残り2回は利上げが可能になるかもしれません。それでも、せいぜい「年後半2回程度」しか利上げができないのです。

こんなに「ゆっくりした利上げ」「穏やか過ぎる利上げ」なんてものは、過去にはありませんでした。

サブプライム危機前やITバブル前は、FRBは政策金利をばかすか5%台まで引き上げることができました。

ところが、今のパウエルFRBは政策金利を引き上げるといっても、せいぜい「2019年末に2.9%あたり」までしか引き上げられそうもない…。アメリカ経済にはやはり「異変」が起きています。

Next: 人工知能ブームも、労働の現場では生産性がまるで上がっていない



人工知能ブームも、生産性はまるで上がっていない

アメリカ経済の異変とは、生産性(潜在成長率)がまるっきり上昇していないことです。ローレンスサマーズの唱える「長期停滞論」は本当の話だったのです。

世はこぞって「第三次人工知能ブーム」など、人工知能を持てはやしています。人工知能・ロボット・自動運転システム・ナノテクノロジー・ブームが始まって、世はこぞってこれらのブームをもてはやしています。

しかしながら、これら「ハイテク分野での革命」はまだ始まったばかりで、その実用化は「はるかかたなの水平線」にぼんやりと見えるだけ、そのほとんどは実用化されているわけではありません。

(金融の世界では、すでに「PCに毛の生えたような自動売買システム」を「人間のファンドマネージャーにとって代わる人工知能」と名付けていますが、これは「ただのはったり」です。その実態は、まだまだ「ただの従来通りの自動売買システム」に「ちょっとだけ毛が生えたもの」に留まっています。)

これらのハイテク分野は、アップルのiPhoneなどが象徴的ですが、人々が「(オンラインゲームなどで)より楽しい余暇の時間を過ごすのには大変優れモノ」です。しかし、アップルのiPhoneは、実際に労働の現場で「生産性を上げている」わけではないです。

電気自動車はガソリン車よりも「都市部の大気を汚染しませ」んが、電気自動車は労働の現場で生産性を上げているわけではありません。

かくして、今現在の産業分野では、どんなにハイテクブームがもてはやされているとしても、肝心の農業や製造業の現場では、「飛躍的な生産性の上昇」はほとんど起きていないのです。

生産性の伸びが低ければ、賃金上昇率の伸びもサブプライム危機「前」よりも低くなってしまうのは、致し方ないことです。インフレ上昇率が危機「前」よりも低くなってしまうのも、致し方ないのです。

米経済の延命に「舞台裏で」心血を注ぐパウエルFRB議長

だからこそ、パウエルFRB議長は、中期的に

・「近いうちに利上げを打ち止めて『インフレ放置政策』へと切り替えてゆく」方針で行くのか?

・「長期金利の上昇を抑えるために、『バランスシート縮小計画』をも放棄する」方針で行くのか?

について、議会とすり合わせているところでした。

すなわち、「どうやって長期金利の上昇を抑えて、ドル安を巻き起こして、アメリカ株式ブームをより息の長い、より大型なものにしてゆくのか?」について、パウエルFRBと共和党議会は、多くのすり合わせをしながら、こそこそと「秘密袖」で話し合っていたわけです。

繰り返しますが、要するに「ヘリコプターマネー」について、パウエルFRBと議会は、「秘密袖」に話し合っていたわけです。

言ってしまえば、「物価水準目標」という新手の金融政策だって、その神髄は「ヘリコプターマネー政策」なのです。「物価目標水準」だって、聞こえはなんか「正しいこと」をしているみたいなんですが、一皮むけば「ただのドル安低金利」政策です。

パウエルFRBもアメリカ議会も、「アメリカの、いや世界の超富裕層の方々の命令」の元で、いま現在の株式ブームを少しでも「息の長い大型のもの」に変えてゆく「密命」を帯びているわけです。それが資本主義というものです。

そのためには、「ヘリマネ出動もやむなし」と考えているわけです。「格差」なんてものは「拡大したって平気」なんです。

Next: 「国民のため」を標榜しながら密命を遂行する役人。それをトランプは…



「世の中のため」を標榜しながら、密命を遂行する役人たち

大変都合の良いことに、世はまさしく「長期停滞中」で「インフレ圧力そのものはそれほど驚異ではない」状態。

アメリカのインフレ率を3~4%まで上昇させることを容認すれば、なんちゅうことはない、アメリカの株式ブームはより大型になってより息の長いものになりそうなのです。

それを実行に移さない手はないのです。

しかし、この「使命」「密命」は、目下のところは「赤裸々に世間にバレバレ」になってはいけない。目下のところ、株式ブームの大型化と長期化という「密命」には、広く世のため人のためといった「正義」を演出する必要があるのです。

FRBは、世のため人のために金融政策を遂行しているのだという「正義」を、嘘でも演出しなければならないのです。

「利上げは嫌い。ドル安が好き」と本音を隠さないトランプ

ところが、ところが、FRBと議会が「正義を演出する」ために苦心惨憺(さんたん)している時に、「正義なんてどうでもいい」トランプ大統領が、数々の手続きをすっ飛ばして、本当のことをしゃべってしまいました。

7月20日、トランプ大統領は率直にそのまんま「ドル安が好き。低金利が好き」と、本当のことをしゃべってしまいました。

ほんと、びっくりですね!トランプって本当に、官僚主義が嫌いなんですね。せっかちなので、秋まで待てなかったのでしょうか。

要するに、トランプ大統領は「ヘリコプターマネーが好き」「ドル安になってもいいから、低金利のお金を、さらなる減税やインフラ投資でばらまき続けたい」と、率直に、本当のことをしゃべってしまったわけです。

これでは、官僚主義的に「正義」を追及していたパウエルFRB議長の顔に、泥を塗ったようなものです…。

しかしながら、こんなことでパウエルFRB議長もめげたりはしないでしょう。パウエル議長の「正義ねつ造のための苦心惨憺」は続くことでしょう。

中間選挙が終われば、トランプは本格的にばらまき続けることになります――

続きはご購読ください。初月無料です<残約5,000文字>

7月のサマーラリーは、なぜ始まったのか?

7月のゴルディロックス相場は「たまたま」か?

パウエルFRB議長の議会証言~向こう数年間の強気見通し~

あの中国も、人民元安・金融緩和策・財政刺激策へ乗り出した!

今後の日銀の政策決定はどうなるか?

※この項目は有料メルマガ購読者限定コンテンツです →いますぐ初月無料購読!

<初月無料購読ですぐ読める! 7月配信済みバックナンバー>

※いま初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

・利上げは嫌い、ドル安が好き、ヘリマネが好きと、本当のことをしゃべってしまったトランプ(7/23)
・サマーラリーが始まった!(2)「賃金インフレ」には要注意(7/17)
・サマーラリーが始まった!インフレなき経済成長がまた戻ってきた!(7/10)
・(7/)
・米中貿易戦争の落としどころは、上海株式市場の弱気相場入り?(7/3)
→いますぐ初月無料購読!

image by:Evan El-Amin / Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ − 貞子ちゃんの連れ連れ日記』2018年7月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。本記事で割愛した内容や当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込1,080円)。

6月配信分
・本気じゃないトランプと、徹底抗戦しない習近平~米中貿易戦争の行方(6/26)
・本格的に火を噴き始めた通商問題!~慢心していたマーケットが動揺を始める時(6/19)
・はったりトランプ、シンガポールへ行く!~NT倍率の上昇にはご用心(6/12)
・アメリカ経済で起きている「大きな地殻変動」(6/5)
2018年6月のバックナンバーを購入する

5月配信分
・6月のマーケットは雨模様(5/29)
・じりじりじりじり上昇し始めたアメリカの長期金利(5/22)
・戻ってきたゴルディロックス相場? アメリカの「イラン核合意」離脱で追い詰められる金正恩委員長(5/15)
・トランプの「イラン核合意」破棄には、ご用心!(5/8)
・「試練に立つアメリカ株式市場」の助っ人となる「物価水準目標」(5/1)
2018年5月のバックナンバーを購入する

4月配信分
・アメリカの長期金利の上昇と日本株式市場~日米首脳会談は成功へ(4/24)
・日米首脳会談と米朝首脳会談~東アジアに久しぶりに平和が訪れる(4/17)
・日本株式市場に戻ってきた「しばしのリスクオンの流れ」(4/10)
・「朝鮮半島の非核化」と「新しい時代の幕開け」~4月17日から日米首脳会談へ(4/3)
2018年4月のバックナンバーを購入する

3月配信分
・海外に「市場開放」や「内需拡大」を強要するトランプ大統領~北朝鮮は「非核化か?さもなくば軍事侵攻か?」(3/27)
・「天下分け目の一週間」が始める?!~安倍政権が倒れるのか?それとも財務省が解体・消費増税が凍結?~(3/20)
・「森友学園・公文書書き換え事件」で、日本株は買いか?売りか?(3/13)
・日本経済を「駄目にしたい人々」VS「復活させたい人々」(3/6)
2018年3月のバックナンバーを購入する

2月配信分
・アベノミックス相場はこれから「絶頂期」へ!(2/27)
・「大型の息の長い景気拡張」が始まった!?(その2)(2/20)
・「大型の息の長い景気拡張」が始まった!? 円高は本田副総裁登場を求める督促状(2/13)
・「トランプ減税の効果」はどこまで剥落(はくらく)するのか?~「21世紀版ブラックマンデー」到来!(2/6)
2018年2月のバックナンバーを購入する

【関連】日本円での貯金はもはや自殺行為。必ず来るインフレが「老人の国」日本を殺す=鈴木傾城

【関連】日本の地価崩壊はもう始まっている。東京五輪が「経済災害」になる日

【関連】「貯金をしなさい」はもうやめよう。学校では教えてくれない子どもの金銭教育=午堂登紀雄

資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ − 貞子ちゃんの連れ連れ日記』(2018年7月23日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

有料メルマガ好評配信中

資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ − 貞子ちゃんの連れ連れ日記

[月額1,100円(税込)/月 毎月第1火曜日・第2火曜日・第3火曜日・第4火曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
10年20年後も、物心ともに豊かに暮らすための「正しい地道な資産形成」について、なるべく専門用語を使わないで話し言葉で解説。一般には敬遠されがちな国際分散投資やマクロ金融の基礎知識が、自然に無理なく身に付きます。ハッピーリタイアを目指すビジネスパーソン、年金生活者やその予備軍の方々のほか、意外や意外、金融のプロの方々にも大変好評です。「沈みゆくタイタニック号・日本経済」の復活は、まずはあなた自身がフィナンシャルフィフリーを手に入れることから始まります。メールでの質問・相談も受けつています。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。