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富裕層がこぞって使う「税逃れ」の実態。これでは日本の貧富の差は埋まらない=大村大次郎

親族が亡くなって遺産を相続したとき、必ず支払わなければならない税金「相続税」。しかし、この相続税は抜け穴が多く、莫大な遺産を手にしている資産家に限って税金をきちんと納めていない、と指摘するのは元国税調査官の大村大次郎さん。大村さんは、自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、相続税が課税水準が引き下げられたにも関わらず税収が増えなかった理由について、ありとあらゆる「逃税」方法が野放しにされている現状を暴露しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2018年7月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

抜け穴だらけの「相続税」が、貧富の差をますます拡大させている

実は「抜け穴」だらけの相続税

平成27年2015)に、相続税の課税水準引き下げられました。

平成26年(2014)以前は、最低でも5800万円以上の遺産がないと、相続税はかかってきませんでしたが、平成27年以降は、最低3600万円以上の遺産があれば、相続税がかかってくる可能性が出てきました。

この課税水準の引き下げは、マスコミなどでも大きく取り上げられたので、ご存知の方も多いでしょう。課税水準の引き下げは、当然のことながら、税収を上げるためでした。

昨今の日本では、貧富の格差が深刻化し、それを埋めるためには、相続税を引き上げるべしということでした。そのために、課税水準の引き下げを行ったのです。この課税水準の引き下げにより、相続税の納税者は倍増しました。

しかし、しかし、です。

肝心の税収の方はほとんど増えていないのです。課税水準引き下げの前は、相続税の税収は1兆9千億円程度でした。しかし、引き下げ後の平成27年の税収は2兆円に達しなかったのです。

昨今の株価の上昇により、現在は2兆円をすこし超える程度の税収があります。が、これも、株価や地価の上昇が主な要因と見られ、課税水準の引き下げの影響はほとんどないのです。

これはよくよく検討すれば、当然のことでした。

Next: なぜ「相続税」の税収は増えなかったのか



なぜ「相続税」の税収は増えなかったのか

課税水準の引き下げ」ということは、「これまで相続税がかからなかった中間層にも相続税を課すということです。当然のことながら、それほど多くの資産を持っているわけではなく、納税者は増えても、納税額はそれほど増えなかったのです。相続税の問題はそこではなかったのです。

現在の日本の相続税の最大の問題は、抜け穴が多すぎて、払うべき人がきちんと払っていないことなのです。

毎年、死亡する人の「遺産」は、年間50兆円程度だと見られています。しかし、相続税の税収というのは、この20年ほどだいたい2兆円で推移しています。つまり、日本全体の遺産に対してたった4%しか相続税が納付されていないということなのです。遺産の96%は、そのまま遺族に引き継がれているのです。

今の相続税の最高税率は55%です(6億円超の遺産をもらった場合)。

税率55%というと、遺産の半分以上を取られるわけであり、可哀そうな気がしないでもありません。が、現実は、55%の最高税率を払っている人などはほとんどいないわけです。

何十億円、何百億円の遺産をもらっているのに、様々な方法を駆使して、ほとんど税金を払っていないような人も多々いるのです。だからこそ、貧富の格差は深刻化しているわけであり、税収も上がらないのです。

このメルマガでも何度かご紹介したように、相続税に関しては抜け穴がたくさんあります。社団法人を使った逃税術(2017年12月16日号)生命保険を使った逃税術(2016年10月15日号)など、金持ちが相続税を逃れる術は多々あるのです。

本当の金持ちがきちんと相続税を払っていない、だから、遺産に対してたったの4%の相続税しか徴収できていないのです。

せめて30%程度の相続税を徴収しないことには貧富の差は広がるばかりだと思われます。自分は何もしないで、何十億円、何百億円の遺産を手にするのだから、30%くらいの税金を払ってもバチは当たらないはずなのです。

この相続税の抜け穴問題が解決しない限り、日本の格差問題は深刻化するばかりと思われます。

Next: ちょっと気の毒なEXILE事務所の課税漏れ



ちょっと気の毒なEXILE事務所の課税漏れ

最近、EXILEの所属事務所の課税漏れがニュースで報じられました。

このニュースについて、解説したいと思います。まずは以下の産経新聞の記事を読んでください。

人気ダンス&ボーカルグループ「EXILE」が所属する芸能事務所「LDH JAPAN」(東京都目黒区)が、昨年3月期までの4年間で総額約3億円の申告漏れを東京国税局から指摘されていたことが5日、関係者への取材で分かった。同社はすでに修正申告を行い、追徴課税された過少申告加算税を含む法人税約6千万円をすでに納付しているという。

出典:「EXILE」所属事務所が3億申告漏れ 「意図的行為一切ない」 – 産経新聞(2018年7月5日配信)

著者による解説

このEXILE事務所である「LDH JAPAN」は、週刊誌などでパワハラ疑惑などが報じられたこともあり、今回の課税漏れを見て、「やっぱり、LDHはブラックなのか」と思われた方も多いと思われます。

が、この課税漏れの件を見る限りでは、「ごく普通の課税漏れ」という感じです。というより、若干、気の毒な部分さえあります。

今回のニュースでは、「仮装隠蔽」などがあったとは報じられていません。課税漏れニュースの場合、仮装隠蔽があったかどうかが重要なカギになります。仮装隠蔽というのは、「架空の経費を計上したり、「売上の一部を隠す」ようなことをすることです。

つまりは、税逃れのための工作をするということです。この仮装隠蔽があれば、重加算税が課せられます。そして、その額が大きければ、脱税として起訴されることになります。

今回は、重加算税も課せられていませんので、仮装隠蔽はなかったと思われます。つまりは、不正ではなく、経理処理の誤りだったということです。

また今回のニュースでは、「飲食費や業務委託費が経費には当たらなかった」という言い方をされています。この「経費には当たらない」という言い方は、一般の人には、少しわかりにくいと思われます。

会社の税金の計算の上では、経費として支出したものでも、税法上経費にできないものがあります。

たとえば、接待交際費です。

現在、接待交際費は、原則として50%しか経費に計上できません。もし、1億円の接待交際費を使っていたとしても、5千万円しか経費に計上できないのです。では、経費に計上できなかった残りの5千万円は、どうするのでしょうか? 会社の利益に上乗せするのです。接待交際費を1億円出しているのに、経費にできるのは5千万円だけであり、残りの5千万円は、会社の利益に加算しなければならないのです。実際は接待交際費として会社の外に出ているわけであり、会社の利益にはなっていないのに、です。

おそらく、LDHは、取引先などとの飲食費を「会議費」などの名目で経費にしていたものと思われます。また業務委託費も同様のものと思われます。海外関連会社の人に対して、飲食などの接待をし、それが業務委託費の一部として計上していたのでしょう。それを国税側が「それは、接待交際費なので経費にできません」と指摘したものと思われます。

EXILEのような、ライブ・パフォーマンスを主としている芸能人は、ライブが多数あるわけで、当然、打ち上げのようなことも頻繁に行われているはずです。打ち上げの費用は、会社が持つことが多いはずですが、この費用は半分しか経費にできないわけです。

これは少々気の毒と言えなくもありません。打ち上げの費用は、会社から出て行っているわけですからね。それを利益に加算するのは、ちょっと酷かなと。

そもそも、以前の法人税法では、接待交際費は経費にできていたのです。ですが、バブル期に、景気のいい会社があまりに派手に接待交際をしまくったので、世間の批判を浴びました。それを見た税務当局は、接待交際費は会社の経費にできず、利益に加算することにしたのです。

この「接待交際費を経費にできなくしたこと」が、バブル崩壊後の日本経済低迷の原因の一つとも言われています。企業の財布のひもが固くなりましたからね。いずれにしろ、会社の業務として支出しているにもかかわらず、それを全額、経費にできないというのは、いびつな税制ではないか、と筆者は思います。

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大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』(2018年7月15日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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元国税調査官で著書60冊以上の大村大次郎が、ギリギリまで節税する方法を伝授。「正しい税務調査の受け方」や「最新の税金情報」なども掲載。主の著書「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)

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