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市場リスクが押し下げる日経平均、理論株価は2万3,301円だ(8/30)=日暮昭

日経平均株価の今後を理論株価で読み解きます。ファンダメンタルズが堅調に推移している中、足元の相場動向は市場リスクの変動がカギを握ると言えそうです。(『資産運用のブティック街』日暮昭)

※「理論株価」についてはこちらをご覧ください。

プロフィール:日暮昭(ひぐらしあきら)
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を用いた客観的な投資判断のための市場・銘柄分析を得意とする。

8/24時点の理論株価は2万3301円。市場リスクの変動がカギを握る

長期的に株式相場を決定づけるファンダメンタルズ

下図は株式相場と相場を形成する基礎的条件、ファンダメンタルズの関係を2002年5月から2018年8月まで16年余りに渡って見たグラフです(2018年8月は24日終値)。ファンダメンタルズは業績を基本要件としますが、経済のグローバル化を背景に為替市場の影響が欠かせない要因になっていることから為替相場をファンダメンタルズの説明要因として加えます。

下図は、株式相場を日経平均、業績を日経平均ベースの予想1株当たり利益(以下、予想EPS)、為替相場は米ドルレートを代表選手して捉え、株式相場とファンダメンタルズの関係を示したグラフです。ここで、期初の2002年5月は予想EPSが連続して求められる最古期になります。

日経平均、予想EPS、米ドルレートの推移(月次終値)
2002.5~2018.8(2018年8月は24日終値)

紺色の線が日経平均、赤線が予想EPS、紫線が米ドルレートを示します。指標名の後の値は直近の8月24日の値です。

日経平均の動きは予想EPSと連動しており、株式相場は基本的に業績に主導されていると言えますが、リーマン・ショック後の相場低迷期は両者がかい離しています。

この間のかい離を埋めるのが米ドルレートです。図からは米ドルレートは予想EPSに比べ動きが小さく、相場の説明力は低いと見られ勝ちですが、業績が説明できない局面では存在感を発揮します。リーマン・ショック後の急激な円高・ドル安の局面はまさにこのケースに当たります。

当講座ではこうした状況の下、日経平均を日経平均ベースの予想EPSと米ドルレートで説明する統計式の値をファンダメンタルズに見合う日経平均の水準を示す「理論株価」として提供しています。理論株価の決定式は以下の通りです。

理論株価=−3926 + 75.6*【予想EPS】+ 103.8*【米ドルレート】

下図はこうして求めた理論株価と日経平均の推移を併せて示すグラフです。

日経平均と理論株価の推移(月次終値)
2002.5~2018.8(2018年8月は24日終値)

紺色の線が日経平均、赤線が理論株価を示します。指標名の後の値は8月24日の値です。ちなみに理論株価は日経平均の変動の89%を説明します。

株式相場とファンダメンタルズのかい離をもたらす市場リスク

さて、このように株式相場の長期的な動向はファンダメンタルズによって捉えることができますが、短期的にはファンダメンタルズで追い切れない場面があります。こうした局面の背後には市場のリスクの動きがあります。最近では米中間の貿易摩擦が本格的な貿易戦争に発展、世界的な貿易の縮小にまでつながるのか、市場はその行く末を注視し、楽観と悲観が交差する中で市場のリスクは振れています。本年4月以降の相場動向を市場リスクの変動と併せて見てみましょう。

下図は本年年4月2日から直近の8月24日までの日経平均と理論株価、日経平均の通常の変動範囲の下側を日次ベースで示したグラフです。

日経平均、理論株価と通常変動の下側(日次終値)
2018.4.2~2018.8.24

紺色の線が日経平均、赤線が理論株価、緑線が日経平均の通常の変動の下側を示します。指標名の後の値は8月24日の値です。

この間の日経平均は定常的に理論株価を下回っており、株式相場はファンダメンタルズに見合う水準から下押しする力が働いている、すなわち、市場リスクが高めに推移していることがうかがえます。ただ、日経平均は通常の変動範囲内にあり、相場が底割れするような状況にはないと言えます。

下図は、上図における理論株価と日経平均とのかい離と併せて当講座が算出する「市場リスク」の推移を示したグラフです(※市場リスクは、一定のモデルに基づいて投資家が株式投資によって負担するリスクに見合って要求する割り増し分のリターン「資本コスト」で示します)。

かい離と市場リスクおよびリスク変動の上側と上限の推移(日次終値)
2018.4.2~2018.8.24

紺色の線が日経平均と理論株価とのかい離、赤線が市場リスク、茶色の線が標準リスク、緑線がリスク変動の上側、薄赤線がリスク変動の上限を示します。

ここで、標準リスクは市場が株式投資によって得ようとするリターンに見合うリスクとして許容できる水準を示し、市場リスクの相対的な大きさを計る基準となります。リスク変動の上側とリスク変動上限はこの基準に基づいて決まる所定のリスクの限界値を示します。内容については下記を参照してください。指標名の後の値は8月24日の値です。

足元は市場リスクの動向に注目

市場リスクとかい離はきれいに逆相関の関係になっており、市場リスクが高まると日経平均はその分だけ理論株価から下押しされることが分かります。

4月初に市場リスクは上限を超えていますが、これは北朝鮮の核とミサイルによる挑発とそれに対するトランプ米大統領の強気対応によって世界的にリスクが高まった時期です。

その後、米朝対話に向けて市場リスクは低下しました。そして新たに生じたのが米中間の貿易問題です。市場リスクは一時、5月初めには安定領域にまで低下しましたがその後反発、やや高い位置で推移しています。

冒頭のグラフに見るように、為替が比較的安定しており、業績は好調に推移していることから、ファンダメンタルズが堅調に推移している中、足元の相場動向は市場リスクの変動がカギを握ると言えそうです。

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(※ご注意:投資判断はご自身で行ってくださるようお願いいたします。当講座は投資判断力を強化することを目的とした講座で投資推奨をするものではありません。当講座を基に行った投資の結果について筆者及びインテリジェント・インフォメーション・サービスは責任を負いません)

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資産運用のブティック街』(2017年8月28日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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