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ロシアが北方領土「交渉拒否」宣言、トランプとプーチンの裏切りで安倍三選に暗雲=斎藤満

プーチン大統領が突然「日ロ平和条約」締結に言及。一部のメディアは領土問題の「先送り」と書いていますが、これはロシアの「交渉拒否」表明にほかなりません。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2018年9月5日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

妙に日本に冷たかったプーチン。凍りついた安倍総理の対応は…

友達のはずのトランプとプーチンが「裏切り」か

自民党総裁選は、圧倒的に安倍総理優勢と見られ、問題はその勝ち方だとまで言われています。議員票405の8割以上を固め、地方票も前回石破氏がとった55%を上回る票を取ると豪語しています。

しかし、20日の投開票まであと少しというところで、風雲急を告げています。突然、海外からハリケーンが安倍総理を襲ってきました。

「外交の安倍」と言われて得点源としてきた外交で、安倍総理が「親しい関係」を強調する米国のトランプ大統領、ロシアのプーチン大統領から、「裏切り」ともとれる発言が相次いでいます。

トランプ、プーチン両大統領にモノが言えるのは安倍総理だけ、と信じてやまない自民党の安倍支持部隊が、これをどう捉えるでしょうか。

トランプ大統領の警告

まずは、トランプ大統領です。よりにもよって、総裁選告示の7日に、トランプ大統領自身の発言として、「通商問題で日本がしかるべき対応をしなければ、安倍総理との良好な関係も終わる」と脅してきました。

それまでも、ワシントンポスト紙がかつての日米首脳会談の席で、トランプ氏が「パールハーバーは忘れない」と発言し、通商問題にも厳しく当たると書いていました。しかし、これらは反トランプ勢力のメディアによるもので、必ずしもトランプ大統領の意図を反映したリークとは限りません。フェイク・ニュースかもしれません。

しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の論説は、トランプ大統領自身との電話で得た情報とされるので、フェイク・ニュースとは切り捨てできません。

21日から茂木大臣とライトハイザー通商代表部代表との2度目の交渉が始まります。

ここで日本の出方が試されます。対米黒字の圧倒的な部分を占める自動車の対応と、米国が求める農業分野での市場開放に大きな圧力がかかると見られます。

財界に支えられる安倍政権だけに、財界を立てるか、米国との良好な関係を取るか、厳しい決断が求められます。

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プーチン大統領の冷酷な仕打ち

そして極めつけが、12日にロシアのウラジオストックで行われた「東方経済フォーラム」での共同会見で、突然プーチン大統領が驚きの発言をして、安倍総理が凍り付いた事件です。

プーチン大統領は、私的な見解としながらも、今年末までに、前提条件なしの「日ロ平和条約」締結をしようと言い出したのです。10日の首脳会談では話題にならなかった問題を、突然公衆の面前で出してきました。

外交的には礼を失したものですが、会場から拍手が起こりました。しかし、平和条約締結の意味を考えれば、日本サイドはとても受け入れられません

平和条約締結ということは、その時点で両国の国境が確定することを前提としています。つまり、北方領土は第二次大戦でソ連の領土となったということを前提に条約を結ぶわけで、そうなると北方領土交渉はできなくなります

北方領土問題「交渉拒否」を表明

一部のメディアは、これを領土問題の先送りと書いていますが、先送りではなく、ロシアの「交渉拒否」表明にほかなりません。

実際、菅官房長官はすぐに会見し、「北方4島の帰属問題を解決したのちに平和条約となるべきもので、それなしの平和条約は日本としては受け入れられない」と述べています。当然です。

プーチン大統領との首脳会談は22回目になるそうですが、その割に安倍・プーチン両氏の友情は感じられず、10日の首脳会談でも安倍総理は2時間半も待たされた挙句、会談後にはプーチン大統領は握手もせずに背中を向けて立ち去りました。極東経済開発でも、日本企業が排除されるケースも少なくありません。

このプーチン大統領、表向きは米国と対立しているふりを見せますが、裏ではキッシンジャー元国務長官を軸にトランプ氏と連携していると見られています。

もしトランプ、プーチン両名が結託して反安倍に動いているとすれば、安倍総理にとってこれはかなりの、恐らくハリケーン級の逆風となります。

Next: 自民党総裁選に暗雲。中国だけは歩み寄りを見せるが…



中国だけは歩み寄りを見せるが…

今回のウラジオストック訪問では、唯一中国の習近平主席と会談が持てたことは成果です。

米国との厳しい貿易戦争で追い詰められた中国としては、何とか日本に歩み寄って、日本の協力を仰ぎたい事情にあり、日本優位の立場にありました。このため、李克強首相の来日など、中国のほうから日本に接近してきています。

その中国も、ロシアと一緒になって極東での大規模な軍事演習を行うと言っています。これは日本や韓国への脅威となります。

中国も苦しい時だけ日本に近づいてきますが、日中間での信頼関係が構築されていないので、中国の危機が収まれば、また日本には敵対的に変わるリスクもあります。

日中関係をもって安倍外交の成果というには、米・ロの裏切りにも似た言動のダメージが大きすぎます。

自民党総裁選に暗雲

安倍政権は、国内に反対勢力がいても、財界と保守グループ、米国トランプ政権の支持を背景に、自民党の過半数が支持する構図になっています。

しかし、このところトランプ、プーチン両首脳からネガティブな姿勢を見せつけられると、財界も与党自民党も不安になるのではないかと思います。

ロシアから帰国して安倍総理は再び総裁選に臨みますが、プーチン発言の意味を考えれば、安倍総理のショックも大きいはずです。

そしてこの情勢変化をキーパーソンの小泉進次郎議員がどう受け止めるか、どちらの支持に出るのか。投票は無記名のため、もし小泉氏が石破支持を打ち出せば、これに追随する自民党議員も少なくないと言います。

仮に小泉氏が安倍支持を表明しても、米・ロとの関係悪化の中で安倍政権が回ってゆくのか、先行き不安が出てきます。

政治の世界では一寸先は闇と言います。総裁選までの5日間は、安倍総理の表情、健康状態と小泉進次郎氏の動静に注目したいと思います。

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・自民党総裁選前に風雲急(9/14)
・何かおかしな日ロ首脳会談(9/12)
・追い詰められた日銀の本音と建て前(9/10)
・安倍・トランプ連合の危機(9/7)
・強まる労働分配率への関心(9/5)
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※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2018年9月5日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

【関連】この先も給料は増えない…。絶望する日本人をさらに泣かせる「労働分配率の低下」=斎藤満

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8月配信分
・米地区連銀が景気後退の可能性を示唆(8/31)
・異常気象が財政規律を破壊する(8/29)
・サウジIPO中止に見るパワーポリティクス(8/24)
・透けて見えるトランプの中国戦略の本音(8/22)
・貿易を救えない日米蜜月(8/17)
・FRBの利上げが新興国通貨不安に(8/15)
・好調米国株の死角(8/13)
・日本経済、単発エンジンの限界(8/10)
・日本の消費を圧迫する恒常所得仮説の重し(8/8)
・円安期待ははげ落ちるリスク大(8/6)
・中央銀行を揺さぶる新しい勢力(8/3)
・物価目標未達でも日銀は政策修正(8/1)
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7月配信分
・物価下振れ下の日銀政策微修正とは(7/30)
・中国経済の実態は苦しい?(7/27)
・「トランプ」プラス「日銀」は円高(7/25)
・トランプの金利高、ドル高けん制発言が示唆するもの(7/23)
・トランプ外交の見えない部分(7/20)
・中国カードにもなるFRBの利上げ(7/18)
・見えてきた価格戦略の勝敗(7/13)
・列島豪雨、多くの死を無駄にしないために(7/11)
・トランプ「米国第一」の功罪(7/9)
・日銀の物価見直しとリスク(7/6)
・トランプの影響、相場にもくっきり(7/4)
・原油高に見る各国の思惑(7/2)
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6月配信分
・所得分配をゆがめる日銀の金利調節(6/29)
・ドル高、終わりの始まり?(6/27)
・貿易戦争に隠されたトランプの狙い(6/25)
・景気の陰りが広がった(6/22)
・なぜ日本で消費者物価が上がらないのか(6/20)
・無視できない米イールドカーブのフラット化(6/18)
・綱渡りのパウエルFRB(6/15)
・歴史的米朝会談と日本の困惑(6/13)
・日銀は物価見通しの引き下げ準備(6/11)
・日銀は密かに金利高め誘導か(6/8)
・個人消費の弱さは重症(6/6)
・FOMC前後の為替の動きに要注意(6/4)
・日銀に追い打ちをかけた弱い鉱工業生産(6/1)
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5月配信分
・収まらない米中貿易戦争(5/30)
・FRBが直面するジレンマ(5/28)
・市場から見た米朝会談破談リスク(5/25)
・景気の減速は本当に一時的か(5/23)
・「ミニ石油ショック」でも油断は禁物(5/21)
・米朝会談までは新興国不安回避要請?(5/18)
・インフレ目標事実上のギブアップ(5/16)
・米長期金利はすでに上昇トレンドに(5/14)
・新興国にイラン不安の追い打ち(5/11)
・トランプ貿易戦争のインフレ性(5/9)
・FRBの姿勢変化に注目(5/7)
・トランプ大統領ノーベル賞を意識(5/2)
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4月配信分
・窮地の安倍政権、解散か総辞職か(4/27)
・物価目標2019年度も黄色信号(4/25)
・米長期金利再上昇の重み(4/23)
・日米首脳会談も安倍延命にはならず(4/20)
・無視できない政治混乱の影響(4/18)
・無理筋な日銀の物価目標(4/16)
・米為替報告書に注目(4/13)
・米はシリアで多国間軍事対応を検討(4/11)
・安倍政権維持への3つのハードル(4/9)
・物価上昇の内容が変わる(4/6)
・FRBはどこまで利上げできるか(4/4)
・キーパーソンはH.キッシンジャー氏(4/2)
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3月配信分
・ハイテク株にもトランプ・リスク(3/30)
・見えてきた点と線(3/28)
・見えてきたドル円の100円割れ(3/26)
・姿を現したパウエルFED(3/23)
・自動車業界と流通業界とのコラボ(3/19)
・日銀の金融政策も政権如何(3/16)
・安倍政権に春の嵐(3/14)
・雇用絶好調でなぜ賃金が上がらない(3/12)
・金利差円安論はすでに破たん(3/9)
・二転三転する黒田発言の真意は(3/7)
・トランプならではの貿易戦争リスク(3/5)
・エネルギー株に3つのリスク(3/2)
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2月配信分
・親子バトルが銀行株を圧迫(2/28)
・裁量労働制論議で露呈した日本の問題(2/26)
・中央銀行の支配者(2/23)
・半島融和の裏で中東に火種(2/21)
・(金利差・ドル円・株の関係が崩れる2/19)
・米国債のバブル性(2/16)
・トランプ予算教書に2つの危険性(2/14)
・日銀人事の裏側(2/13)
・市場不安定化が3月利上げの負担に(2/9)
・適温経済と適温相場は別(2/7)
・米金利とドル円の関係、ここに注意(2/5)
・米金利高が日本の投資家を襲う(2/2)
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1月配信分
・個人消費の低迷に歯止めがかからず(1/31)
・物価本位主義見直しの時(1/29)
・安倍総理の密かな戦略を探る(1/26)
・規律を失い惰性に走る財政金融政策(1/24)
・米長期金利上昇は「吉」か「凶」か(1/22)
・強まる中国への風当たり(1/19)
・地政学リスクとビジネス・チャンス(1/17)
・粉砕される円安期待(1/)
・デフレ脱却宣言を拒む実質賃金の低迷(1/12)
・北朝鮮問題に新展開か(1/10)
・インフレ如何で変わる米国リスク(1/5)
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12月配信分
・新年に注意すべきブラック・スワン(12/29)
・新年経済は波乱含み(12/27)
・日銀の過ちを安倍政権が救済の皮肉(12/25)
・金利差と為替の感応度が低下(12/22)
・インフレ追及の危険性(12/20)
・日銀が動くなら最後のチャンス(12/18)
・不可思議の裏に潜むもの(12/15)
・制約強まるFOMC(12/13)
・生産性革命、人材投資政策パッケージを発表(12/11)
・米国に新たな低インフレ圧力(12/8)
・政府と市場の知恵比べ(12/6)
・長短金利差縮小がFRBの利上げにどう影響するか(12/4)
・原田日銀委員の「緩和に副作用なし」発言が示唆するもの(12/1)
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11月配信分
・中国リスクを警戒する時期に(11/29)
・会計検査院報告をフォローせよ(11/27)
・改めて地政学リスク(11/24)
・低金利で行き詰まった金融資本(11/22)
・内部留保活用に乗り出す政府与党(11/20)
・日銀の大規模緩和に圧力がかかった可能性(11/17)
・リスク無頓着相場に修正の動き(11/15)
・トランプ大統領のアジア歴訪の裏で(11/13)
・異次元緩和の金融圧迫が露呈(11/10)
・戦争リスクと異常に低いVIXのかい離(11/8)
・変わる景気変動パターン(11/6)
・日本的経営の再評価(11/1)
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10月配信分
・日本の株価の2面性(10/30)
・FRBの資産圧縮が米株価を圧迫か(10/27)
・リセット機会を失った日銀(10/25)
・低インフレバブルと中銀の責任(10/23)
・フェイク・ニュースはトランプ氏の専売特許ではない(10/20)
・金利相場の虚と実(10/18)
・米イラン対立の深刻度(10/16)
・自公大勝予想が示唆するもの(10/13)
・中国経済に立ちはだかる3つの壁(10/11)
・自民党の選挙公約は大きなハンデ(10/6)
・当面の市場リスク要因(10/4)
・景気に良い話、悪い話(10/2)
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9月配信分
・アベノミクスの反省を生かす(9/29)
・高まった安倍総理退陣の可能性(9/27)
・日銀も米国に取り込まれた(9/25)
・安倍総理の早期解散に計算違いはないか(9/22)
・日銀は物価点検でどうする(9/20)
・中国経済は嵐の前の静けさか(9/15)
・トランプ政権はドル安志向を強める(9/13)
・気になる米国の核戦略(9/11)
・日銀の政策矛盾が露呈しやすくなった(9/8)
・ハリケーン「ハービー」の思わぬ効果(9/6)
・北朝鮮核実験の落とし前(9/4)
・内閣府は信頼回復が急務(9/1)
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8月配信分
・個人消費の回復に疑問符(8/30)
・あらためて秋以降の中国リスクに警戒(8/28)
・米債務上限引き上げかデフォルトか(8/25)
・利用される「北朝鮮脅威」(8/23)
・バノン氏解任でトランプ政権は結束できるか(8/21)
・日銀の「ステルス・テーパー」も円安を抑制(8/18)
・中国習近平長期政権の前途多難(8/16)
・北朝鮮の行動を左右する周辺国の事情(8/14)
・経常黒字20兆円強のデフレ圧力(8/9)
・日銀の物価目標が最も現実離れ(8/7)
・内閣改造効果に過大な期待は禁物(8/4)
・ユーロ悲観論が後退、なお先高観(8/2)
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マンさんの経済あらかると』(2018年9月5日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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