この先も給料は増えない…。絶望する日本人をさらに泣かせる「労働分配率の低下」=斎藤満

安倍政権の間に「労働分配率」が大きく低下していますが、最近この問題が関心を集めています。企業は儲かっているのに、給料が上がらない…という問題です。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2018年9月5日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

利益を上げる企業、それを受け取れない国民。この溝が日本を壊す

「労働分配率」に関心が集まっている

安倍政権の5年余りの間に労働分配率が大きく低下していますが、ここへきてこの問題への関心が高まりつつあります。

企業業績が良くても、個人消費などを中心に国内市場が弱く、物価が上がらない1つの要素になっている、との認識も広がりつつあるのです。

日銀の物価に関する特別リポートでも、賃金や年金が増えないための将来不安に関心が寄せられています。

好調な企業業績と、それを実感できない消費者

各種アンケートの結果を見ると、個人や家計に景気回復の実感が乏しく、日銀の生活実感を問うアンケートでも「暮らし向きが苦しくなる」との回答が多くなっています。

また内閣府の景気ウォッチャー調査でも、家計関連の弱さが目立っています。実際、GDP(国内総生産)は増えても、個人消費は低迷が続いています。

その反面、日銀短観など、企業調査では景況の改善が最近では頭打ちとなりつつも、プラスの水準はバブル期以来の高さ。

企業の景況好調と、家計の回復の実感のなさが対照的で、両者の間に大きなギャップが見られます。

業績が上がっても給料が増えない…

そして、その大きな要因となっているのが「労働分配率の低下」です。

財務省が3日に発表した4-6月期の「法人企業統計」を見ても、企業の当期の経常利益が前年比17.9%増となったのに対し、企業の人件費支払額は前年比3.8%増にとどまっています。

両者の伸びに大きなギャップが見られます。

これは今期に限ったものではありません。安倍政権となった初期の2013年4-6月期、つまり今から5年前の同期と比べてみると、企業の経常利益は5年前の15兆6千億円から今年は26兆4千億円に69%も増えたのに対し、人件費は5年前の41.2兆円から44.7兆円に8.5%増えたにすぎません。

この結果、経常利益額に対する人件費の割合は、5年前の2.6倍から足元では1.7倍に大きく低下しています。

また企業の売り上げから売上原価を引いた簡便な「付加価値」を計算し、これに対する人件費の割合を労働分配率として計算すると、5年前の57.7%から足元では54.1%に低下しています。

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