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TPP大筋合意で「亡国」へ進む日本。現状を変えるために必要な2つのこと=三橋貴明

10月5日、米アトランタで行われていたTPP交渉が大筋合意に達しました。作家の三橋貴明さんは、この合意について「日本は、国民が自らの主権に基づき政治的な話を決定できなくなる『亡国への道』を進み出した」として、我が国をおしまいにしないために、今からやるべき2つの対策を提案しています。

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015年10月6日 号外より
※本記事のタイトル・リード文・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

日本国民が本質を知らぬ間に大筋合意に至ったTPP交渉

「要」が議論されぬまま進んだ農協改革とTPP交渉は似ている

農協改革が国会で議論されていた頃、新聞で報じられるのは「全中(全国農業協同組合中央会)の社団法人化」ばかりで、肝心要の、

などなど、農協改革の「本質」は一切、報じられることはありませんでした。全農の株式会社化については、ネットメディアではわずかに報じられていましたが、農地法と農業委員会法については報道ゼロでございました。

農協改革で(彼らにとって)重要なのは、全中ではなく全農や准組合制度、農地法、農業委員会法なのですが、国会の審議中ですらマスコミは報道しませんでしたので、国民の多くは知らないままでしょう(だからこそ、「亡国の農協改革 ――日本の食料安保の解体を許すな」を書いたのですが)。

今回のTPP大筋合意を受け、いよいよ「中身」がオープンになるでしょうか。そうはならないと思います。

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する日米を含む12カ国は5日、米ジョージア州アトランタで開いていた閣僚会合で大筋合意に達した。12カ国は為替など幅広い経済問題で協力していくと表明、世界経済の40%を占める巨大な自由貿易圏の誕生に向け前進した。

 米国は、日本製自動車部品の80%超で関税を撤廃することで合意。また日本製自動車に課す2.5%の関税を25年かけて撤廃することでも合意した。

 日本は、豚肉、牛肉の関税引き下げや、バター、米、小麦の輸入拡大で合意した。
 焦点となっていたバイオ医薬品の開発データの保護期間をめぐってはこれまで、米国が12年を求める一方、豪、ニュージーランドなどは薬剤費の増大につながるとして5年を主張してきたが、結局、最低5年に別の手続き期間として3年を加え「実質最低8年」することで各国が妥協した。

 TPP参加国は為替政策の原則について協議することでも合意。米国の製造業者の間で日本が自国の自動車産業などに有利になるように円安に誘導しているとの懸念が出ていることを一部反映したものと見られる。

 このほか今回の合意には労働者の権利や環境保護をめぐる最低基準も盛り込まれている。
 大筋合意を受け12カ国は今後、議会での批准手続きに入る。(後略)
出典:TPP大筋合意、巨大自由貿易圏誕生へ前進 為替政策でも協力(Reuters)

TPP交渉が「秘密交渉」だった理由とは

TPP交渉のポイントは、「秘密交渉」だった点です。日本国民は今も、TPPの中身について知らないままです。

「そんな、中身も知らないのに、反対していたのか」と、言われそうですが、中身がよく分からないからこそ、反対していたのです。保険契約や金融商品の購入に際し、中身が分からないまま「買う!」「加入する!」などと言う人がいますか?中身が分からないなら、「中身がきちんとわからないから、やめておくよ」が普通の対応だと思うわけです。

というか、なぜTPP交渉が「秘密交渉」なのか、理由を考えてみれば誰でもわかるでしょう。国民に知られたくないからこそ、秘密交渉だったのです。(そうでないというならば、オープンに議論すれば済む話です)

今後、TPPの中身は「肝心要の部分」は伏せられたまま、批准までの手続きが進むことになるでしょう。特に、ISDやラチェットなど、「後戻りできない仕掛け」については、国会で議論はされるかもしれませんが、マスコミは報じないと思います。

しかも、中身が国民に知られ、世論が「TPP批准反対」に流れたとしても「そんな、すでに12カ国で大筋合意したTPPを、今更『批准しない』など、許されるはずがない」といったレトリックがマスコミでガンガン流され、最終的に国会議員たちも「よくわからないけど、とりあえず批准」という結果になるでしょう。農協改革は、実際にそうでした。

さて、これで我が国は「亡国への道」で大きく足を踏み出したわけですが、別に、「だからもう、日本はおしまいだあ~っ!」などという話にはなりません。と言いますか、日本が終わりだとして、どうするのですか?我が国から逃亡しますか。そうしたければ、どうぞそうして下さい。

わたくしは嫌です。だから、日本に残り、これからも足掻き続けますし、そもそも「日本はおしまいだ~っ!」などとは思っていません。わたくしにしても、我が国の主人公の一人なのです。

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日本をおしまいにしないためにすべき2つのこと

先日、チャンネル桜の討論番組で、「今後、考えるべきことは2つです。1つは、亡国をいかに防ぐか。2つ目は、亡国に至った後にどうするか」と、発言しました。ここで言う亡国とは、国民が自らの主権に基づき、政治的な話を決定できなくなる、という意味になります。TPPを批准した時点で、日本国民は多くの主権を失います。国際協定は、国内法に優先するのです。

さらに、ISDやラチェットが含まれていた場合(含まれているでしょう)、「未来永劫、戻せない」という話になってしまうわけでございます。

とりあえず、具体的にやるべきことは2つ。

1つ目は、TPPの中身について「正しく理解」し、様々な国民に知らせていくことです。特に、国会議員に。「国会議員にレクチャーしても無駄だよ……」と、思われた方が多いかも知れませんが、我が国は議会制民主主義国家なのです。国政を変える資格を持つのは、国民の主権の束を背負う国会議員しかいません。

2つ目は、TPPにより様々な影響が日本国民に生じたとき、「なぜ、こんなことになったのか」について、やはり「正しく理解」し、周知することです。TPPの影響は、批准直後から生じるわけではありません。何年も、十何年もかけ、少しずつTPPに合わせて法律が変えられていき、我が国は「今と違う日本」にいつの間にか姿を変えていることになります。

いかなる「今と違う日本」なのか。わかりやすい例を出せば、現在のアメリカ型社会であり、あるいは「顔のない独裁者」の世界です。

日本が実際に「顔のない独裁者」そのままの社会になったとき、国民の多くが「なぜ、こんなことになったのか」を正しく理解していれば、亡国の道を引き返せるかも知れません。「本当に、そんなことができるのか?」などと言われても、わたくしに保証ができるはずがありません。それでも、わたくしは日本の主人公の一人として、我が国が亡国の道を突き進む現状を変えるべく、できることを全てやるつもりなのでございます。

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三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015/10/6号外より

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