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「年金が買うから上がり続ける」がデータで否定された日本株=米CFA協会認定証券アナリスト・馬渕治好

この夏の株安を的中させ読者急増中のメルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』。最新号のコラムに「年金が日本株を買うから、日本株は上がり続ける」という説は事実と異なるとの興味深い分析がありました。東証の投資部門別売買状況や日銀の資金循環統計と実際の株価を照らし合わせることで見えてくる意外な事実とは?

「年金が日本株を買うから、日本株は上がり続ける」のミスリード

やはり間違っていたクジラ説

公的年金などの巨額資金をクジラにたとえ、「クジラがどんどん日本株を買うから、日本株は上がり続ける」といったような説を唱える人がいます。

こうした説は、きちんとデータを踏まえると、大間違いだと言えます。

たとえば、東京証券取引所が、毎週投資家別売買動向を発表しています。公的年金などは、信託銀行経由で売り買いが行われますので、クジラの動きは、信託銀行の売買という形で統計上表れます。

投資部門別売買状況

そこで、東証1部における毎週の信託銀行の売り越し、買い越しを調べ、それぞれの週の日経平均株価の騰落と突き合わせます。本当にクジラが株価を左右しているのであれば、信託銀行が買いの週は日経平均が上昇、売りの週は日経平均が下落するはずです。

このように、買いと上昇、売りと下落が一致した場合を「勝ち」とします。一致しなかった場合を「負け」とします。すると信託銀行の売買と株価の関係は、1月第1週から9月第2週(9/11金に終わる週)までの36週間で、17勝19敗です

五分五分ということは、サイコロの丁半やコインの裏表で決めているのとほとんど同じ、つまりまったく何の関係も見いだせない、クジラ説は間違いだ、ということになります。

ちなみに、海外投資家について同様のデータの照合を行なうと30勝6敗です。つまり、海外投資家が株価をほぼ左右している、と言えます

日経平均株価 週足(SBI証券)

日経平均株価 週足(SBI証券)

四半期ベースで見ても「クジラ買い」は関係なし

いやいや、そんな毎週のことで判断すべきではなく、クジラは長期投資家で、長い期間をかけて株を買い上げていくのだ、もっと長い目で見れば、クジラの買いで株価が押し上がっているはずだ、と考える人もいるでしょう。

そうした考え方について、実は面白い報道がありました。それは、9/17(木)付のブルームバーグ報道(GPIFや3共済:国債9577億円、日本株4068億円売り越し・4~6月)です。

えっ、日本株は「買い越し」の間違いではないの?と思った方が多いことでしょう。この記事は、同日に日本銀行が発表した4~6月の資金循環統計によるもので、この統計によれば、公的年金は6四半期ぶりに日本株を売り越した、となっています(ただし、売らずに保有したままの分の株式の時価が上がったため、時価換算の株式保有額は増えています)。

資金循環 – 日本銀行

日経平均株価は、3月末は19206.99円、6月末は20235.73円で、クジラの売り越しにもかかわらず株価は上昇していますから、週間どころか四半期ベースで見ても、クジラ説は間違いでした。

「単一要因説」をとなえる専門家を警戒せよ

「単一要因説」というのは、世間で広く使われている言い方ではありませんが、筆者としては、何かの経済的な現象(景気の動きや、株価・為替相場などの動向)を、主にひとつの要因だけで説明しよう、という説を指しています。

例としては、「クジラが買うので株価が上がり続ける」「東京オリンピックまでは株価も地価も上昇、オリンピックが終わると下落」「日銀がお金を撒くのでバブルになる」などです。

日本についてだけ言われているわけではなく、サッカーワールドカップが行われる国の通貨が上がる、などもよく唱えられます。

こうした単一要因説は、たいがい有害です。経済現象(市場動向を含む)は複雑で、たったひとつの要因ですべて説明できることはほとんどありえません

ところが、単一の要因で説明するのは、説明する側も説明を聞く側も楽なので、そちらに流れがちです。このため、思考停止に陥り、経済現象を引き起こしている他の多くの要因(しばしば、そうした要因の中に、真にその経済現象をもたらしているものがあります)から目がそれてしまいます。結果として、先行きの経済現象の予測を間違え続けます。

単一の要因で、ズバリ先行きを説明しましょう、という専門家が現れたら、その説は、ゴミ箱にぽいっと捨てるのが良いと思います。

【関連】なぜ株価は大暴落したのか?やっと反省された「3つの勘違い」大底は近い=馬渕治好

馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2015年9月20日号)より一部抜粋
※太字とチャート画像はMONEY VOICE編集部による

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