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「ケータイ料金値下げ」で夫婦ゲンカ中?安倍首相と黒田日銀総裁

安倍首相が高市総務相に指示した「ケータイ料金の引き下げ」検討。単なる人気取りとの批判はあるものの、本当に料金が値下げされるなら利用者にとっては嬉しい話ですよね。でも日銀はこの提案におかんむりかも。なぜならアベノミクス「3本の矢」のひとつ、日銀の大胆な金融緩和政策に矛盾するからです。40年近いエコノミスト歴を持つ「マン」さんが分析します。

安倍首相と日銀総裁のすれちがいで、アベノミクスが大ピンチ

いつまで強気を維持できる?黒田総裁の「苦しい答弁」

15日の日銀決定会合では、市場の一部に追加緩和期待があり、為替はやや円安に動いていました。結果は現状維持でしたが、それでも10月には追加緩和があるのでは、という理由から黒田総裁会見の内容が注目されました。

ところが、追加緩和を示唆する発言や記者からの質問はなく、ドル円は119円台といくぶん円高が進みました。

この会合の前に開かれた政府の経済財政諮問会議では、中国や新興国の景気減速が認識され、円安でも輸出の期待がはげ落ちたことや物価の上昇を政府は悪者扱いし、安倍総理からは携帯料金を引き下げよ、との発言まで飛び出しました

それだけに、日銀と政府との間に齟齬(そご)をきたしたのでは、との質問も飛び出しました。

その点、黒田総裁は「齟齬はない」とし、携帯料金の引き下げは、個人の実質所得を高め、長い目で見ればインフレを高める要素になる、と苦しい答弁をしていました。

また、中国、新興国の減速は認めたものの、中国のサービス部門は堅調で政策手段も豊富であるから6-7%成長は可能で、しかも先進国が回復基調なので、新興国の減速をカバーする、と強気を維持しました。

このため、輸出の弱さは一時的で、また輸出は回復し、それに伴って生産も回復すると、諮問会議よりやや強気の姿勢を見せました。さらに企業収益が既往最高となり、設備投資や賃金増の前向きな循環が維持されているので、景気全体では回復を続け、7-9月のGDPもプラスと予想、物価上昇の基調は維持されるとしました。

ケータイ料金値下げで日銀が困る理由

この強気論の背景には、「円安につながる追加緩和はノー」との政治的な力がワシントン・永田町からきているため、現在は追加緩和を必要としないしっかりした景気であり物価環境であると説明する必要がありました。

それでも官邸にはインフレ悪者論が横行し、携帯料金の引き下げ圧力まで出てきている始末で、黒田総裁の苦しい立場も垣間見られました。

その点については、諮問会議の内閣府資料にも、通信費の消費に占める割合が、10年前より2割も高まっているとの資料があり、これが家計を圧迫しているとの認識があります。実際、日本の携帯市場は寡占的で、通信料金は世界的に見ても割高なのは事実です。その分、通信各社の利益を支えていました。

そこへ政治的に携帯料金が引き下げられると、関連企業の利益縮小、株価下落のほか、消費者物価の引き下げ、インフレ目標の後退となり、日銀の2%のインフレ目標自体が達成困難になります

現在、通信料金は消費者物価の中で約4%のシェアとなっていますが、これが例えば20%引き下げられると、消費者物価は0.8%低下します。さらに物価指数が15年基準になると、携帯料金のウェイトがさらに高くなるので、物価上昇率をさらに大きく下げる力となります。

実際の景気が日銀の見方より下振れし(その可能性大です)、インフレ目標への到達が困難となれば、日銀は追加緩和に「躊躇なく」動かねばなりません。にもかかわらず、政府も米国もこれを期待していないのです。

黒田総裁の本音は「追加緩和を正当化する市場の混乱が欲しい」かも?

しかし、それでは日銀はアベノミクスの中で「不要」となり、アベノミクスも「3本の矢」の柱を失います。これは政府日銀双方にとってまずいこと。日銀としては、何が何でも金融政策の有効性、必要性を主張し、必要に応じて緩和策の維持・追加をしなければなりません。

その際、米国や政府から受け入れられやすい方策、つまり円安も悪い物価上昇も連想させない緩和策に転換する必要があります。それは恐らく、国債の買い入れ額などを前面に出す量的緩和ではなく、直接長期金利も含めた金利のターゲットを示すようなものになる可能性があります。

これなら円安誘導ではないと抗弁でき、悪い物価上昇でもないと主張できます。

いずれにしても、日銀は その存在意義を問われる危機に瀕しています。アベノミクスの一端を引き続き担うのであれば、近い将来、何らかのアクションを起こす必要があります。

日銀の本音は、追加緩和を正当化するだけの景気下振れか市場の混乱が起きて、日銀の出番が正当化される形になることではないかと思います。

【関連】安倍首相は歴史を変えられるのか?「GDP600兆円」後の経済シナリオ

マンさんの経済あらかると』(2015年9月16日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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