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相続放棄しても貰える財産がある?知らないと損する相続財産のこと=小櫃麻衣

相続放棄を選択した場合、財産を一銭も受け取ることができないと思っていませんか?今回は、相続放棄を選択しても取得できる財産について解説します。(『FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』小櫃麻衣)

相続放棄をしたら、何も受け取れないと思っていませんでしたか?

みなし相続財産なら、相続放棄しても受け取ることが可能

死亡した方が抱えていた借金などの債務が資産を上回る場合に、相続放棄を選択する方が多いのですが、相続放棄を選択し、一切の相続権利を手放すことになったとしても、一銭も財産を受け取れないわけではありません

これには、その財産が持つ性質が大きく関係してくるのです。

すでにご存知の方も多いかとは思いますが、相続放棄を選択しても取得出来る財産の代表的なものは、生命保険会社から支払われる死亡保険金。死亡保険金は、みなし相続財産という括りで考えられるため、相続税の課税対象にはなります。

しかし、みなし相続財産の大きな特徴である民法上と税法上の解釈の違いが相続放棄と密接に関係してくるのです。

みなし相続財産は、民法上の解釈では受取人固有の財産とされていますが、税法上の解釈では相続税の課税対象にはなるとされています。

受け取る相続人固有の財産ということは、死亡保険金は“受取人となっている人だけのもの”ということ。

つまり、相続放棄を選択しなかったとしても、死亡保険金に関しては原則、遺産分割協議の対象とはならず、相続人の間で金額に開きがあったとしてもその差を埋める必要はないのです。ただしあまりにも金額の差が大きい場合には、特別受益の持戻し対象となる可能性がありますので、覚えておきましょう。

相続放棄して死亡保険金を受け取っても、非課税枠が存在

さて相続放棄を選択し、死亡保険金を受け取った場合に気になる点は、税金面だと思います。相続放棄を選択すれば、その方は当然、相続人ではなくなります。

従って、相続人が死亡保険金を受け取った場合には、“500万円×法定相続人の数”が非課税枠として認められるのですが、相続放棄を選択すれば、この非課税枠を使うことは出来ないのです。

そうなると、死亡保険金全額に対して、税金が課税されそうと思うかもしれないが、そうではありません。

相続放棄を選択し、死亡保険金を受け取る場合には、“3,000万円+600万円×相続放棄を選択した人数”が非課税枠として認められることになるのです。

例えば、相続人が配偶者と長男・長女のケースで、それぞれに1,000万円の保険金がかけられていたとします。そこで配偶者と長男が相続放棄を選択したとすると、3,000万円+600万円×二人分=4,200万円が非課税枠として使えるというわけです。

配偶者と長男が受け取った保険金の総額は2,000万円ですので、このケースでは相続税は発生しないということになります。

従って、今回のケースのように受け取る保険金が非課税枠に収まれば、無税で保険金を受け取ることができ、非課税枠を超えた部分に関してのみ相続税が課税されるということになるわけです。

Next: 死亡保険金以外にもある、みなし相続財産になる死亡退職金とは



死亡退職金が何に分類されるかは、所属会社の規定による

さて死亡保険金は、相続時にみなし相続財産との括りで考えられるわけですが、死亡保険金以外にもみなし相続財産と呼ばれるものが存在します。それは、“死亡退職金”

死亡退職金とは、被相続人が退職金を受け取る前に死亡した場合に、死亡した方の代わりに遺族が受け取る退職金のことを指します。

本来、会社に勤めていた本人が退職金を受け取る場合には、所得税の課税対象になるわけですが、死亡退職金として遺族が受け取る場合には、相続税の課税対象となるのです。

しかし、死亡退職金に関しては、死亡した方が勤めていた会社で退職金を受け取らずに死亡した場合の規定が定められていなければ、みなし相続財産ではなく、通常の相続財産と同様の扱いになってしまうという独自の性質があります。

従って、このような規定が存在しなければ、相続放棄を選択し、退職金を受け取ることは出来ません。

そうであるにも関わらず、死亡退職金を受け取ってしまえば、相続の大原則である“死亡した方の遺産に手を付けると、単純承認したとみなされる”に抵触してしまうことになりますので、後に相続放棄を選択することは出来なくなってしまいます。

仮に、勤務先の規定で“被相続人が退職金を受け取らずに死亡した場合には、配偶者、配偶者がいなければ子供…、に支給する”といったような規定がなされていれば、死亡保険金と同様、みなし相続財産に含まれますので、相続放棄を選択しても受け取ることが出来ます。

相続放棄をしても、死亡退職金は全額が相続税の課税対象に

ただし、退職金に関する明確な規定がなかったとしても、“相続財産に含まれないと判断出来る場合”には、前述の通り、相続放棄を選択しても受け取ることが出来ますので、詳しくは専門家や勤務先に問い合わせてみたほうが良いでしょう。

一方、死亡した方が公務員であった場合には、死亡退職金については“国家公務員退職手当法”で規定されており、遺族の固有の権利によって受け取ることが出来ると定められているので、問題ないでしょう。

しかし相続放棄を選択したものの、無事に死亡退職金を受け取れることになった場合の税金面に関しては、死亡保険金にように非課税枠は設けられていませんので、全額が相続税の課税対象になってしまいます。

さて、相続放棄を選択しても受け取れる財産の代表格は、みなし相続財産であるということはこれまでに説明した通りですが、それ以外でも受け取れるものにはどんなものがあるのでしょうか。

みなし相続財産以外にも取得出来る財産はいくつかあり、取得出来る・出来ないでは、遺族の今後の生活を大きく左右する可能性がありますので、覚えておくと相続時に慌てなくて済むでしょう。

Next: みなし相続財産以外にも、相続放棄しても受け取れるものとは



相続放棄した場合も受け取れる、遺族年金と未支給年金

さて、相続放棄を選択しても取得出来る財産の代表格は死亡保険金、そして同じくみなし相続財産である死亡退職金があるわけですが、その他にもいくつか取得出来る財産があります。

それは、“遺族年金”“未支給年金”

遺族年金とは、国民年金や厚生年金の被保険者であった方が死亡した際に、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることが出来る年金のことを指します。遺族年金は、遺族がその固有の権利に基づいて受給するものであるため、相続財産に含まれることはありません。

従って、相続放棄を選択したケースでも、問題なく遺族年金を受け取ることが出来るというわけです。

ただし、遺族年金を受け取る方の年収によっては受給出来ない可能性があるうえ、未成年者の子供がいるかどうかによっても受給金額が変化しますので、一度、年金事務所に問い合わせてみた方が良いでしょう。

未支給年金とは、聞き慣れない言葉ではあると思いますが、簡単にいうと、年金受給者である死亡した方に対して支給されなかった年金のことを指します。どういうことかというと、年金受給者には偶数月に年金が支払われることになっています。

例えば平成30年1月15日に死亡した年金受給者は、10月分と11月分の年金を12月に受け取ってはいますが、12月分と死亡した1月分の年金については、2月に支給されることになりますので、本人が受け取ることは出来ないですよね。

相続放棄をするならば、もらえる財産の確認も忘れずに

本来もらえるはずであった年金が無駄になることがないよう、年金受給者に対して支給されなかった年金については、遺族に支給されることになっているのです。

未支給年金は、死亡した方の代わりに遺族が受け取ることになるので、相続財産とみなされるのではと思うかもしれませんが、年金法では、“相続に関係なく、独自の立場で未支給年金を支給する。”と定義されており、最高裁判決でも“未支給年金は相続財産ではない”との判決が下されているので、安心して未支給年金を請求ことが出来ます。

さて、相続放棄を選択する方は、“多額の債務を引き継ぐのであれば、いっそのことプラスの財産も手放すしかない”といった判断によって、泣く泣く、財産を手放す方が多いです。

こうなると、自分は一銭の財産も手に入れずに、ただ悲しみに打ちひしがれるだけ、と思いがちですが、相続放棄を選択しても貰える可能性のある財産はこれだけ存在します。

貰える資格があったのに、その財産の性質を理解していなかったがためにもらわなかった”というのは、非常にもったいないですよね。

相続放棄を選択するのであれば、“相続放棄を選択してももらえる財産”を早急に調べ、損をすることがないようにしましょう。

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FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』(2018年11月7・9・12日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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