昨年の日経平均は27年ぶりの高値となる2万4,000円台をつけた後、2万円を割り込んで終了する動きをみせました。この背景には、どんな要因があったのでしょう。(『資産運用のブティック街』日暮昭)
※「理論株価」についてはこちらをご覧ください。
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を用いた客観的な投資判断のための市場・銘柄分析を得意とする。
ファンダメタルズは前年比で大幅増益、相場変動の要因は別に…
上げ下げ荒っぽく動いた昨年の株価の裏にあるリスクとは?
昨年の株式相場は荒っぽい動きとなりました。日経平均は年明け早々に27年ぶりの高値となる2万4,000円台をつけましたが直後に下落、3月に底値を付けた後回復基調を辿り10月には再高値を付けました。しかし、その後相場は再び急落、一時2万円を割り込みました。
2018年の終値は2万14円で、年間では2,750円の値下がりとなりました。これはアベノミクス相場がスタートした2012年に前年比プラスになって以来2011年から7年ぶりの年間値下がりです。以下でこの荒れた相場とその裏にあるリスクの実態を見てみましょう。
株式相場の基本的条件である2018年のファンダメンタルズは業績面では前年比で大幅増益、また為替市場も比較的安定していたことで堅調に推移しました。したがって相場の大幅な変動をもたらした要因はファンダメンタルズ以外のもの、すなわち市場リスクということになります。
下図はファンダメンタルズを反映する日経平均の理論値である「理論株価」とそれに基づく日経平均の変動の上限と下限、および日経平均自体の推移を日次ベースで示したグラフです。
<日経平均、理論株価と変動の上限と下限の推移(2018.1.4~2018.12.28)>
紺色の線が日経平均、青線が理論株価、赤線が変動の上限と下限です。図の2つの赤枠は1月と10月の高値を、青枠は3月と12月の底値を示します。白枠は2018年の終値です。
青線の理論株価が堅調なファンダメンタルズを反映して穏やかな上昇基調を辿っているのに対し、日経平均は1月と12月に変動の上限と下限を超える激しい変動を示しています。
年間の荒い変動の締めとしての2018年末の各指標の値、および日経平均との差は以下の通りです。
年末の日経平均は理論株価を3,700円余り、変動の下限も1,100円余り下回っています。
このように相場がファンダメンタルズを大きく離れる状況を「リスクオン」また「リスクオフ」と呼びます。
「リスクオン」は市場で高値追及の強気が主流となってリスク資産(株式)の買いにこぞって走るリスク選好の結果、相場がファンダメンタルズを大幅に上回る状態、逆に「リスクオフ」は市場に弱気が広がってリスク回避の気風が勝りリスク資産(株式)の売りが重なって相場がファンダメンタルズを大幅に下回る状態を指します。
Next: 「市場リスク規準指数」で見る「リスクオン」「リスクオフ」の状態は?
今後の株価の行方は、リスク動向の見極めがポイントに
当メルマガではこの「リスクオン」、「リスクオフ」の状態を具体的に数値で示す指標を「市場リスク規準指数」として開発、提供します。下図は2018年の「市場リスク規準指数」の推移を示すグラフです。
<「市場リスク規準指数」(リスクオン・リスクオフ指標)の推移(2018.1.4~2018.12.28)>
この指標は市場リスクを“偏差値”という、平均を50点として平均からのかい離を一定の方式で規準化した点数で示します。具体的には、40点から60点の間を通常の変動領域、70点以上に高まった状態をリスクオフ、さらに80点以上を、めったに現われない状況ということで「極端なリスクオフ」として区別します。同様に30点以下を「リスクオン」、20点以下を「極端なリスクオン」とします。
図で通常の変動領域は緑線で挟んだ領域、リスクオンとリスクオフの境界は橙色の線で示し、「極端なリスクオフ」と「極端なリスクオン」の境界は赤線で示しています。また、日経平均の高値時の指標値を赤枠で、安値時の値を青枠で示しています。
図から、まず目につくのは12月25日の市場リスク規準指数が「極端なリスクオフ」の境界をさらに大幅に超えている点です。この指標は市場がリーマン・ショック後の混乱から回復した2013年5月から算出していますが、このリスクオフの状況は過去最も高いレベルとなります。
これまでの経験則から日経平均は理論株価から大きくかい離すると間もなく理論株価に向かって回帰することが示されていますが、足元で市場リスクがここまで高いレベルに達したことで、従来通り日経平均が理論株価の2万3,779円への回復軌道に乗るのか、そのタイミングはどうか、今後の展開を見極めるに当たってリスクの動向がカギを握ると言えそうです。
(※ご注意:投資判断はご自身で行ってくださるようお願いいたします。当講座は投資判断力を強化することを目的とした講座で投資推奨をするものではありません。当講座を基に行った投資の結果について筆者及びインテリジェント・インフォメーション・サービスは責任を負いません)
『資産運用のブティック街』(2019年1月4日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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