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2019年の相場は「価格破壊」、日経平均1万2,000円の超株安・1ドル90円の超円高に警戒を=長谷川雅一

2019年の相場のキーワードは「基準喪失」だと見ています。為替・株式・仮想通貨の3分野について、今年の見通しとトレードにあたっての注意をお伝えします。(『長谷川雅一のハッピーライフマガジン』)

プロフィール:長谷川雅一(はせがわ まさかず)
1959年、岐阜県生まれ。株式会社プレコオンライン(金融商品取引業)代表取締役社長。2000年より株式投資の研究を始め、日本で初めて「株の自動売買」という言葉を使った著書を出版。株式投資の世界では、「株の自動売買」ブームの火付け役として知られている。現在は、自動売買ソフトの開発、投資教室、メルマガの執筆など、多忙な日々を送っている。

もう「割安感」は機能しない。為替・株価・仮想通貨の見通しは?

「アップルショック」で幕を開けた2019年の相場

この原稿を書いているのは、2019年1月4日(金)、今年最初の取引終了後です。

2019年の相場が始まった直後の1月3日、早朝に、米ドル/円が一時、104円まで下落するフラッシュ・クラッシュ(瞬間的な急落)がありました。

日本時間3日夜のNYダウも約660ドルの下落となるなど、昨年末からの暴落が尾を引いており、相場の混乱が収まる気配はありません。今日1月4日(大発会)の日経平均株価も、年末比-453円の1万9,561円と大幅安で取引を終えています。

1月3日早朝の暴落(アップルショック)では、わずか5分間で、米ドル/円が4円以上も暴落しました。「寝ている間に強制ロスカットされて、多額の損失を被った」というトレーダーさんもいらっしゃることでしょう。

暴落の底である「104円スレスレ」の値段を付けたのは一瞬で、今日(4日)は108円台に値を戻していますので、強制ロスカットを食らった方は「憤懣やるかたなし」といったところではないでしょうか。

「荒れ相場」にした犯人は?

3日の急落は、年始で相場が閑散としているところへ、アップルの業績悪化のニュースをキッカケに、アルゴリズム取引と思われる大量の売り注文が出たことで発生したと言われています。

このところ、株、為替とも、相場が非常にボラタイルに(価格変動が荒く)なっており、トレードの難易度とリスクが増しています。

この「ひどい荒れ相場」にしたのは、いったい誰だ?と恨みたくもなります。

誰が悪いんだ?となれば、犯人は言わずと知れた「トランプ大統領」でしょう。また、何が悪いんだ?となれば、現在、取引の8割以上を占めていると言われる「アルゴリズム取引」でしょう。

相場を大混乱に陥れた「主犯」はアメリカ第一主義を唱え、貿易戦争を勃発させたトランプ大統領。そして、急騰急落で相場を荒らす「共犯者」はアルゴリズム取引。トランプ&アルゴリズム取引という「暴落コンビ」が、このところの「大混乱相場」を引き起こしていると考えます。

さて、我々トレーダーは、この大荒れ相場を、どう乗り切ったらいいのでしょうか?

本稿では、為替相場、株式相場、仮想通貨相場の3分野について、それぞれ、今年の見通しと、トレードにあたっての注意をお話ししたいと思います。

アップルショックで「基準」が壊れた

まずは為替(ドル円)相場の見通しから、お話ししましょう。

2018年末まで、為替相場(米ドル/円)は、比較的「大人しい」動きになっており、株式市場が大きく下げても、あまり反応しませんでした。ところが、昨年末から、為替相場でリスク回避の「売り」が目立つようになりました。

明けて1月2日の夕刻、ちょっと異様なまでに強い売りが観測されて警戒しましたが、やがて買いが優勢となり、米ドル/円は109円台前半まで反発。相場は、まずまず落ち着いていたのです。

ところが、その翌朝、不意打ちのように、米ドル/円が一時104円まで下落するという異常な急落(アップルショック)が発生しました。

この急落によって、米ドル/円の価格水準が「壊れて」しまいました。昨年のクリスマス前なら「米ドル/円の110円は安い(買ってもよい)」という感覚を持っていたトレーダーが多かったと思いますが、現段階で、米ドル/円の110円は「はるか上の高値」です。

今、米ドル/円のレートが「安い(買ってもよい)」と感じるレートは「1ドル=105円以下」といったところでしょうか。3日の急落によって、米ドル/円の「割安感」「割高感」といった「基準」が破壊されてしまったのです。

後述しますが、この規模の急落の影響は、数ヶ月から1年以上「尾を引く」ことが多いので要注意です。

Next: 今年のキーワードは「価格破壊」。アルゴ取引が相場の割安感を破壊する



アルゴリズム取引が相場の割安感を破壊する

僕は、今年(2019年)の相場のキーワードとして、「基準喪失」という言葉を挙げたいと思います。一般的な言葉で言い換えれば「価格破壊」です。

アルゴリズム取引を行うコンピュータが、年末年始のような、相場が閑散としているときに一気に大量の売り注文を出せば、5分で4円といった、とんでもない急落が起きます。こういう急落が発生すると、割安・割高という価格の基準が破壊され、無意味になってしまうのです。

アップルショックによって、米ドル/円の割安感のあるレートの水準が110円付近から105円付近まで、5円以上も下がってしまったように、今年(2019年)は「○○円なら安い」と考えていた相場の「割安感」が一瞬にして崩され、意味をなさなくなるような急落が、たびたび発生する可能性があると覚悟しておかなければなりません。

それは主に、アルゴリズム取引によって、もたらされるでしょう。アルゴリズム取引が、相場の基準(割安感)を破壊してしまう可能性があるのです。

1ドル=90円の「超円高」があり得る

3日のアップルショックのような急落があると、その後レートは一時的に反発することが多いのですが、この規模の急落は、数ヶ月から1年に渡って長く影響を及ぼし続ける場合があります。

2015年8月のチャイナショックから、1年以上に及ぶ株と為替の下落が始まったように、大規模な急落が相場に「後遺症」を残すことがあるのです。

2015年8月24日のチャイナショックと、2019年1月3日のアップルショックは、チャートがよく似ています。今回のアップルショックを起点に、長期間にわたる為替の下落トレンドが始まっても、おかしくないのです。

米ドル/円 週足(SBI証券提供)

2015年の「チャイナショック」の前、米ドル/円は122円付近で推移していました。

チャイナショックの直後、米ドル/円レートは、122円付近から116円付近まで、一気に6円下落したあと反発し、その後は長くもみあっていましたが、やがてチャイナショックの時に付けた最安値(116円)を下回ります。

そして、チャイナショックから1年後、米ドル/円レートは100円スレスレの水準まで22円近くも下がった(円高になった)のです。

今回のアップルショックの起点(米ドル/円)は、110円付近でした。チャイナショック後の値動きに当てはめれば、1年後(来年1月)の米ドル/円は、110円から20円下の、90円まで下がって(円高になって)いてもおかしくない、ということになります。

僕は、今年(2019年)の相場では、為替の1ドル=90円の「超円高」があるかもしれないと想定し、「105円なら安い」「100円なら安い」という、これまでの基準(割安感)を疑いつつトレードする必要があると考えています。

日本人は「逆バリ」のトレードが好きなので、為替が105円、100円という水準になれば、「買いたい」というトレーダーが増えるでしょうが、105円で買ったら90円まで下げてしまった、という「ワナ」にはまってしまうかもしれません

Next: 日経平均株価の「基準」も喪失へ。1万2,000円の「超株安」がありえる…



日経平均株価の「基準」も失われる

2019年(今年)の日経平均株価はどうでしょうか。これもやはり、「基準喪失(価格破壊)」を警戒すべきだと考えます。

昨年末からのNYダウは、すでに従来の「基準(割安感)」を失っています。

2018年10月初旬には2万7,000ドル付近だったNYダウは、12月26日に、一時、先物価格で2万1,500ドルを割り込むレベルまで下落しました。2万7,000ドルから2万3,000ドルまで、4,000ドル下げたところで、すでに十分な「割安感」があったハズなのに、下落が止まらなかったのです。

さすがに2万1,500ドル付近からは反発しましたが、その後もスッキリ上昇することはできず、上値の重い展開が続いています。要するに、米市場(NYダウ)には、いまだに「割安感」がないのです。

このところのNYダウは、1日、1,000ドルの上下変動が珍しくなくなりました。5分間で100ドル動くなどは、もう「当たり前」です。

これまで、トレーダーは「1,000ドルも下げれば反発するさ」という感覚を持っていましたが、今や「1,000ドル下げは当たり前」であり、4,000ドル下げても、5,000ドル下げても、「まだ下がるのでは」という不安感、恐怖感を払拭できません。

もしもこのあと、ある時期に、NYダウが毎日1,000ドルずつ、1週間下げ続けたとしましょう。NYダウが1週間で5,000ドル下落すれば、日経平均も1週間で、最低でも5,000円は下落することになります。

これは、ありえない話でしょうか?

アルゴリズム取引が市場で跋扈(ばっこ)する今、NYダウが1週間で5,000ドル下落といった極端な値動きが現実となっても、おかしくありません。

日経平均12,000円の「超株安」がありえる

では具体的に、今年の日経平均株価がどうなるか予想します。

2015年8月、チャイナショック前の日経平均株価は、2万0,500円付近で推移していました。翌2016年6月24日、日経平均株価は1万5,000円を割り込みます。チャイナショック以降、日経平均は10ヵ月はどで、約5,500円下落したのです。

このあと、これと同じことが起きると仮定しましょう。現在の日経平均株価は1万9,500円付近にありますので(※編注:原稿執筆時点2019年1月4日)、1年後の日経平均は、5,500円下の1万4,000円になっている可能性があると言えます。

ただこれは、やや「甘い予想」です。政府の大量買い支えの限界が見え始めることなどもあって、僕は、さらに、2,000円ほど下ブレしてもおかしくないと考えています。つまり、1年後の日経平均株価が、1万2,000円まで下がっていたとしても何ら不思議はないというのが僕の予想です。

トランプ大統領という「連続悪材料製造装置」が稼働し、アルゴリズム取引という「暴落誘発装置」が彼の相棒を務める今、株価は基準を喪失して、どこまで下げるかわからない。それが僕の相場見通しです。

為替(ドル円)と同様、株についても、今年は、日経平均1万2,000円といった「超株安」がありえると警戒すべきです。株のトレードにあたっては、これまでの「割安感」は捨てて、慎重に投資した方がいいでしょう。日経平均が安くなったからと言って、安易に買うべきではない、ということです。

Next: 仮想通貨は「氷河期」を迎え低迷する/投資家は「超円高」と「超株安」に備えよ



仮想通貨は「氷河期」を迎え低迷する

最後に、ビットコイン価格(仮想通貨相場)の見通しを簡単に述べておきます。

僕は、2019年の仮想通貨相場は「氷河期」を迎えると予想しています。氷に閉ざされたように価格が低迷して上昇しないというイメージです。

僕は今年、ビットコイン価格は、40万円±20万円程度で推移すると考えており、2019年中には、2017年末に付けた、ビットコイン価格の最安値35万円付近を、さらに割り込む場面があると予想しています。

僕は、ビットコインなどの仮想通貨価格は、2020年頃から再浮上すると予想していますので、もしもビットコイン価格が20万円以下になる場面があれば、そこは「絶好の買い場である」とも考えていますが、そうなったとき、多くの人は「もうビットコインはダメだ。二度と上がらないだろう」と考えて買わないのではないか、と思います。

僕は、「もうダメだ」という時にビットコインを買い、長くホールドした人が勝つだろう、と考えています。

ただ、ビットコインを始めとする仮想通貨の価格予想は、株や為替とは別次元の難しさがありますし、仮想通貨の価格は様々な材料に敏感に反応するため、僕の予想と現実の値動きが大きく乖離する可能性があることを申し添えておきたいと思います。

「超円高」と「超株安」に備えよ

僕は毎日、会員制の投資情報誌を書いており、自動売買の運用も担当しています。加えて、自分のトレードもあるため、昨年のクリスマス以降の「荒れ相場」の分析と対策に必死で、なかなか十分な睡眠時間が取れない状況が続いています。

終息のメドが立たない荒れ相場を観察しながら、「今年は、とんでもない下げ相場になるかもしれない」という嫌な予感ばかりが募る日々を過ごしているわけです。

そんな中、「○○サテライト」といった経済番組をチェックすると、証券会社系のアナリストの方々が、「日経平均2万円台キープは当たり前。年末は2万8,000円だ」といった楽観的な年間予想を、ニコニコ顔で語っておられる様子を目にするのですが、僕は、何とも言えない違和感を覚えます。

もちろん相手は相場ですから何が起きるかわかりませんが、僕はこれまで述べてきたように、今年は、

があるかもしれないと想定しつつ、慎重にトレードすべきであると考えていますので、その落差に戸惑うのです。僕の予想が大きく外れ、ニコニコ顔の証券アナリストの方々の予想が当たって、「ああ、よかった」という1年になるといいのですが…。

少し極端な相場見通しだったかもしれませんが、皆様のお役に立てば幸いです。今年1年、皆様の投資成績が良好なものとなりますよう、お祈り申し上げます。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2019年1月8日)
※記事タイトル・太字はMONEY VOICE編集部による

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