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米株市場には楽観的な見方が増加。今こそ「バレンタイン・クラッシュ」に備えよ=江守哲

アメリカ市場はクリスマス・クラッシュから順調に株価が回復し、楽観的な見方が増えています。しかし、米中の経済指標は楽観できない変化が表れつつあるのです。(江守哲の「ニュースの哲人」〜日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ

本記事は『江守哲の「ニュースの哲人」〜日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』2019年1月11日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

米企業の第4四半期決算が好調で、目先の株価は戻り基調

米国株は主要指数15%で戻りいっぱいに

昨年の「クリスマス・クラッシュ」以降の戻りで、市場に楽観的な見方が増えてきたようです。主要株価指数もすでに15%の戻しており、指数の上昇率としてはかなり大きなものになっています。

また、先週から発表されている米企業の第4四半期決算の内容が、思った以上に好調なことも買い安心感につながっているようです。

すでに発表された主要大手行の決算は、そこそこの数字だったといえます。これが目先の株価上昇を後押ししています。

米金融大手6社の18年通期決算が出そろいましたが、米景気拡大で貸し出しが伸びたほか、トランプ政権による法人税減税が追い風となり、6社合計の純利益は前年比75.6%増の1,204億100万ドルと大きく伸びました。

前年は税制改革に伴う一時的な税金費用が発生しましたが、18年はシティグループが黒字転換したほか、純利益はゴールドマン・サックスが2.4倍、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)が54.4%増、モルガン・スタンレーが42.9%増と急増しました。

ただし、ウェルズ・ファーゴは預金口座の無断開設など不祥事の影響が尾を引き、収益が伸び悩びました。

金利収入はJPもルガン・チェースが10%増、バンカメが6%増と軒並み好調。貸出量の増加に加え、FRBの利上げ継続で融資業務の利ざや改善が寄与しました。

ただし、年後半の金融市場の混乱で、債券の取引収入はバンカメが8%減、シティは6%減と不振だった。19年は減税による利益押し上げ効果が一巡し、業績鈍化が見込まれます。

さらに世界景気の減速懸念が強まる中、経済環境の変動に備える必要があります。

このあたりの対応に失敗すると、業績が再び悪化することになります。

一方、注目された米動画配信サービス大手ネットフリックスの18年第4四半期決算は、人気スリラーの「バード・ボックス」など独自コンテンツをリリースしたものの、売上高は市場予想を下回りました。

発表当日の引け後の時間外取引で、ネットフリックスの株価は3%下落しました。その後も下げ基調が続いています。急激な戻りの反動が出ているようです。

総売上高は前年同期比27.4%増の41億9,000万ドルで。アナリスト予想は42億1,000万ドルでした。

純利益は1億3390万ドル(1株当たり0.30ドル)で、前年同期の1億8550万ドル(同0.41ドル)から減少しました。アナリストの1株利益予想は0.24ドルでした。

世界の有料契約者数は884万人増加しました。第1四半期は890万人の純増になるとの見通しを示しました。

アナリスト予想は第4四半期が918万人の純増、第1四半期が764万人増でしたが、アナリスト予想に無料体験者数が含まれていないかどうかは不明となっています。

Next: 年明けから、米株が買い戻しされた背景とは?



業績好調なハイテク株と銀行株が大きく寄与

さて、今回の米国株の戻りは、ハイテク株と銀行株が大きく寄与しています。

ハイテク株の戻りは顕著ですが、「クリスマス・クラッシュ」以降の戻りを見ると、最も戻しているのがネットフリックスで、一時50%を超える反発になっていました。

それに対して、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が保有するアップルは、戻りがわずか6%です。このように、銘柄ごとにかなりの差が出ています。

とはいえ、アマゾンやアルファベット、マイクロソフトなどは軒並み10%から20%の戻りとなっており、安値で購入できていれば、十分な収益が上がっている計算になります。

さて、問題はここからです。買い戻しの背景には、業績の堅調さに加え、米中貿易戦争の終結に向けた期待感があったといえます。

たしかに、これらの材料が株価を押し上げたのでしょう。しかし、そうれば心理的に押し上げられただけで、実態を伴っているとは言えないでしょう。

今後の業績も伸びは確実に鈍化していくでしょうから、株価の割安感は徐々に低下していきます。

そもそも、昨年の「クリスマス・クラッシュ」が行き過ぎだったとの判断が正しいかどうかも怪しいでしょう。

今後起きることは、何度も解説しているように、「バリュエーション調整」です。これが根本にありますので、株価が戻すのは難しいわけです。

以前から解説しているように、サイクル面でもかなり明確な天井確認ができています。

まずは景気指標です。もっともたしからしい、OECD景気先行指数は17年12月にピークを付けています。つまり、世界景気は1年以上前にピークアウトしていることが確認できています。

次は株価と原油の関係です。今回のMSCI世界株価指数の高値は18年1月で、原油価格は18年10月です。この9カ月のタイムラグは、過去と同じパターンです。

また、米国債とMSCI世界株価指数のピークのタイムラグは、今回は2年です。ハイテクバブル当時も2年でした。

このように、マクロ指標で見れば、株価のピークアウトと調整継続がほぼ確定しているといってよい状況です。

このような中で、株価が高値をすぐに更新するとの前提で株式投資を行うことには、かなり無理があることがわかるでしょう。まして、18年の高値を超えるようなことがあれば、むしろ相当驚きなわけです。過去の経験則が全く通じないことになります。

その可能性を100%否定するつもりはありません。トランプ政権が尋常ではない政策を持ち出し、株価対策を行えば、株価が反転して高値を超える可能性はゼロではないでしょう。

しかし、投資判断とは、そのような不確かなものを前提に行うことはあり得ません。あくまで過去の経験則と現状分析を行ったうえで、判断すべきものでしょう。

まずはセオリーに乗ることが肝要です。そうであれば、いまは長期的な投資は見送りとの判断になるはずです。しかし、それでは何も生まれません。だからこそ、今年は「トレーディングの年」となるわけです。

「Buy and Hold」、つまり買持ちして長期間持ち続けるのは、今年は通用しないとの考え方です。したがって、今回のような安値からの急激な戻りで上手く買うことができていれば、早めに利益確定することが肝要です。

そして、空売りを行うことが重要です。今年から来年は、空売りやショートなどができないと、収益機会は半減するでしょう。

Next: 前回のバリュエーション調整で、株価はどのような動きをしていたか?



5%を超える調整を25回繰り返し、大底まで78.4%下落

さて、今回の株価調整はハイテクバブル当時と同じとの解説を繰り返してきました。

ハイテクバブル当時には、どのような株価推移だったのでしょうか。これを振り返っておくことは、今後起きるであろう株価推移を想定するために、必要不可欠であると考えられます。

この点を解説している市場関係者はどなたもいらっしゃらないので、私がしっかりと行っておきたいと思います。

ハイテクバブル当時のナスダック指数の動きを見てみると、2000年3月の高値から2002年10月の大底確認まで、78.4%下落しました。

この間、5%を超える調整と戻りをなんと25回も繰り返しています。25回です。すごい回数です。それだけ大きな上下の変動を繰り返しながら、下げ相場が形成されていったわけです。

したがって、直近安値から10%から15%程度の戻りがあっても、何も不思議ではありません。まさに今回の戻りも子の反中です。

つまり、今回のような戻り局面を確認しただけで、下げ相場が終わったなどを考えるのは、あまりに早計と言わざるを得ないわけです。

ちなみに、ハイテクバブル当時のナスダック指数は、25回もの上下動を繰り返し、それぞれの平均は下落率が18.97%、上昇率が18.13%です。平均の下落期間は22日、上昇期間は16日です。

このような騰落率と期間を繰り返して、最終的に底値を付けたわけです。これだけでも十分驚きでしょう。

また、当時の累積下落率はなんと474%に達します。これは、それぞれの押し目の安値で買い、放置を繰り返すと、資産が5回無くなっていることを意味します。

つまり、戻りをよほど上手く売ってトレートしない限り、資産はあっという間になくなってしまうわけです。

それだけ、下落相場の中での押し目買いにはリスクがあるわけです。

一方、今回も同じように調整と戻りを計測していますが、徐々に似たようなパターンになってきているように見えます。

今回はすでに15%も戻していますので、一定の戻りを完了したと考えてもよさそうなところにきています。

戻してもあと3%ぐらいでしょうか。それくらいで見ておけば、ちょうどよさそうです。

また、主要株価指数の20日移動平均線からの乖離率も、すでに5%を超えています。明確な過熱圏に入ってきました。

すでにピーク圏に来ていることは理解しておく必要がありそうです。

繰り返すように、これから激しい上下動を繰り返して、底値を付けに行くでしょう。まだ何も始まってないといってもよいかもしれません。これからが本番でしょう。

間違っても、「底値確認から高値更新を目指す」などといった、万年強気派の声に騙されないことです。

Next: アメリカの投資家たちは、現状をどう見ているのか



完全な景気後退ではなく「恒常的な停滞」との見方

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)が公表した1月の機関投資家調査によると、企業債務が09年以降で初めて最も懸念される要素として挙げられたことも判明しました。

ネット48%の投資家が、企業は借入比率が高過ぎると答えたというのです。金利上昇が借り換えコストに響くことから、投資家は借金が多い企業へ資金を振り向けるのをためらっているようです。

ネット52%の投資家は、今後1年の世界全体の企業利益が減少するとの見方を示し、企業収益見通しは08年以来最も悲観的となったようです。

また、世界経済が今後1年で悪化すると予想したのはネット60%に上り、やはり08年7月以来の弱気ムードとなりました。

ただし、完全な景気後退ではなく、「恒常的な停滞」が訪れるとの見方がコンセンサスとなっているようです。

そのため、今年中に世界がリセッションに突入すると見込んだのは14%にとどまっています。

投資家が最も取引が集中した対象とみなしたのは、2カ月連続でドルでした。

ドルは02年から一番過大評価されている通貨と考えられてきましたが、18年も世界的に最高の値動きをした資産の1つに数えられています。

また、最大のテールリスクのリストには、8カ月連続で米中貿易摩擦が含まれました。投資家はやはり、両国の通商交渉の動向に高い関心を寄せているようです。

さらに、投資家は将来の世界景気が企業業績にすでに警戒的になっています。しかし、株価は上昇しています。この矛盾がいずれ悪い方に出るような気がします。

いずれにしても、いまはバリュエーションが高いという客観データを基に、ハイテクバブル当時との類似性に注目すべきと考えています。

決してリーマンショックや16年前半のような状況と比べないことが肝要です。

重要なことは、過去に何が起きていたかを知り、これから何が起きそうかを想像して、何がリスクになるのかを発想することです。

関連情報を広く集め、状況の全体像を描き、多彩なオプションを発想するわけです。

そうすることで、様々なリスクを回避しながら、最大の結果を得る機会を得ることができるわけです。

そのうえで、間違っていると判断すれば、すぐに切り替えることが大事です。それまでの見方に縛られることなく、柔軟に考え、対応することが肝要です。

Next: アメリカの経済指標はいま、どんな状況を示している?



米中貿易戦争の影響が出始めている

さて、リフィニティブのプロプライエタリー・リサーチによると、S&P500採用企業の18年第4四半期決算は前年同期比14.5%の増益となる見通しです。昨年10月時点の増益率予想は20.1%でしたので、大幅な下方修正になります。

また、S&P500企業の今後4四半期(19年第1四半期─19年第4四半期)の予想PERは15.1倍です。

PERベースでの割高感は払しょくされましたが、バフェット指数はまだ130%を超えています。株価の調整余地はきわめて大きいことだけは、明確に申し上げておきたいと思います。

また、注目しておきたいのは、中国経済が徐々に悪化してきている点です。

製造業PMIは節目の50を割り込みましたが、貿易面も米中貿易戦争の影響が出始めているようです。

中国の12月の貿易統計では、輸出が2年ぶりの大幅な落ち込みを記録し、輸入も減少しました。中国経済が19年に一段と減速し、世界的な需要が低下する可能性を示す内容といえます。

12月の輸出は前年同月比4.4%減で、主要市場のほとんどで需要が鈍化しました。輸入は前年比7.6%減と16年7月以降で最大の落ち込みとなりました。

世界経済が鈍化し、米関税による影響が強まるなか、輸出の伸びは予想以上に落ち込みました。輸入も内需の冷え込みを受けて大幅に減少しました。

今後数四半期も輸出、輸入ともに弱い状況が続くでしょう。

政策の緩和で中国国内の経済活動が今年下半期までに底を打つ可能性は低いとみられており、輸入の伸びは引き続き抑制されるでしょう。

中国が米国製品に課した報復関税は、中国の輸入の伸びに打撃を与えています。18年通年の米国からの大豆輸入は11年以降で初めて減少しました。

米中が今回の通商協議で合意に達したとしても、減速する中国経済への特効薬にはならないとの声が多くなってきています。

また、中国の米国向けの輸出から輸入を差し引いた対米貿易黒字は前年比17.2%増の3,233億ドルでした。黒字幅は過去最大だった17年を上回り、記録を更新しました。

トランプ政権は中国の巨額の対米黒字に強い不満があります。米中貿易協議の交渉期限を3月1日に控え、米国側の改善要求が一段と強まる可能性が高いでしょう。

対米輸出は11.3%増、米国からの輸入は0.7%増でした。米国の関税率引き上げの可能性をにらみ、米企業による駆け込み需要が膨らんだことが輸出増の要因とみられています。

一方、18年12月の黒字額は299億ドルと、単月で過去最大だった11月の356億ドルを下回りました。駆け込み需要が一服し、今後は反動で減少が続くことも予想されています。

中国は既に総額1兆2,000億ドルの米国産品の輸入拡大方針を示しており、米国は今月上旬の次官級協議で、中国が農産物や工業製品、エネルギー資源を「相当量」購入することを約束したとしています。

ただし、駆け引きが続くとみられる中、中国が早期に実行に移すかどうかは不透明な情勢です。

トランプ政権が問題視する貿易収支の不均衡について、中国政府が対米黒字を「24年までに解消する」案を示したと報じられています。

ただし、トランプ政権からは中国に目標の前倒しを求める意見が出ており、3月1日を期限とした貿易協議で一致点を見いだせるかは依然として不透明な状況です。

報道によれば、今月7-9日に北京で開いた次官級の貿易協議で、中国は対米黒字を今後6年間で解消する行程表を提示したもようです。

米国から1兆ドル超の輸入を増やすことを検討していようですが、これに対して米国は難色を示し、「今後2年間での是正」を要求したといいます。

米国にとって中国は最大の貿易赤字国ですが、中国側の発表した18年の貿易統計によると、中国の対米黒字は3,233億ドルと過去最大を更新しました。

米国は昨年5月の貿易協議で、20年までに2,000億ドル削減するよう中国に迫りましたが、折り合えませんでした。

次官級協議では、貿易不均衡是正のため中国が米国産品の輸入を大幅に拡大する方向性で一致したとみられますが、対米黒字をゼロにする時期に関しては隔たりが大きかったもようです。

中国による知的財産権の侵害問題など難題も残っており、今月30・31日に米国で予定する閣僚級の協議は厳しい折衝が予想されます。

18年の中国の貿易総額は12.6%増の4兆6,230億ドルでした。輸出は9.9%増、輸入は15.8%増でしたが、貿易黒字は16.2%減の3,518億ドルでした。

Next: 米中貿易戦争は、中国経済にどんな影響を与えるのか?



中国は四半期としてはリーマン・ショック後と並ぶ低成長

このような状況もあり、中国政府は19年のGDP伸び率目標を6-6.5%に引き下げるとみられています。

18年の目標は6.5%前後でしたが、21日発表された18年のGDPは、物価変動の影響を除いた実質ベースで前年比6.6%増となりました。米中貿易摩擦が響き、17年を0.2ポイント下回りました。

政府が目標とした「6.5%前後」の経済成長は確保しましたが、天安門事件で急ブレーキがかかった90年以来、28年ぶりの低い伸びにとどまりました。

18年10-12月期のGDPは前年同期比6.4%増でした。四半期としては、リーマン・ショック後の09年1-3月期と並ぶ低成長でした。

中国の成長鈍化を受けて、世界経済の先行きに対する不透明感が強まることになるでしょう。

米国は昨年7月以降、中国による知的財産権侵害を理由にした追加関税を相次いで発動してきました。これを受けて、中国の景気減速が一段と鮮明になりました。

中国共産党・政府は昨年12月の中央経済工作会議で、減税規模の拡大やインフラ投資の促進などを通じて景気のてこ入れに取り組む方針を決めました。

ただし、米中貿易摩擦の影響などで、さらに成長が緩やかになる可能性もあります。

3月の全国人民代表大会(全人代)で公表する19年の成長率目標は「6.0-6.5%」に引き下げられる見通しです。

いずれにしても、今年は6.5%を上回る成長は非常に難しいでしょう。また、成長率が6%を下回れば、問題になる可能性があります。

中国指導部は雇用の水準を注視しているもようで、サービス業は相対的に底堅いものの、米国との貿易戦争を背景に製造業で人員が削減される可能性が指摘されています。

共産党は20年までの10年間でGDPと所得を倍増させる長期目標を掲げています。目標達成には今後2年の経済成長率を6.2%前後とする必要があります。

そのため、無理やり数値を作る可能性もありそうです。

一方、19年の消費者物価指数(CPI)上昇率の目標は3%で維持する見通しです。昨年12月のCPI上昇率は1.9%で、中国政府には需要を刺激する余地があるとみられています。

中国人民銀行(中央銀行)は、預金準備率をさらに引き下げ、小規模企業や民間企業への信用供与を拡大する可能性があります。

当局は引き続き利下げには消極的とみられています。中国の短期金利は米国の短期金利を下回っており、資本流出のリスクを懸念しているもようです。

中国政府は財政刺激策を強化する見通しで、減税の拡大で企業を支援し、インフラ支出も増やす方針とみられています。

このような状況から、中国経済は今年、かなり厳しくなると考えています。共産党の人為的な政策にも限界が出てくるでしょう。

家計と企業の金融資産の膨張はいずれ破裂するでしょう。そのときには、日本の資産バブルを超える悲惨な状況になるはずです。

それがいつになるかはわかりませんが、中国政府が支え続ければ続けるほど、崩壊は悲惨な規模になるだけでしょう。この点については、あまり希望を持たないほうが良いと思われます。

中国政府が中国国民の不満を抑制し続けることができるのか、非常に不透明といえます。

Next: 気になる、中国の経済指標の状況は?



自動車販売は低迷する一方、新築住宅価格は底堅く推移

また、中国の18年の新車販売台数は前年比2.8%減の2,808万台となったことも、ショッキングなニュースです。

前年実績を割り込んだのは1990年以来28年ぶりです。米中貿易摩擦を背景に購買意欲が減退したといえます。

自動車販売の低迷で、中国経済の下押し圧力がさらに強まる可能性があるでしょう。

乗用車の販売台数は4.1%減の2,371万台、商用車は5.1%増の437万台でした。一方、中国政府が普及を後押ししている電気自動車(EV)などの「新エネルギー車」は61.7%増の126万台と、好調を維持しました。

販売台数の落ち込みの背景には、17年末の小型車減税打ち切りに加え、経済成長の減速や米中摩擦が消費者心理に影響を与えたことがあるようです。これらの短期的な圧力は続く見通しです。

ちなみに、12月の全体の新車販売台数は前年同月比13.0%減の266万台で、6カ月連続で前年を割り込みました。

ただし、中国の世帯当たり自動車普及率は都市部でも4割にとどまっており、長期的にはまだ成長が見込まれています。

中国政府は今年、自動車メーカーに一定割合の新エネ車の生産・販売を義務付けました。日系を含む各社は新たな主戦場として新車種の投入を急いでいます。

今後の中国国内の自動車販売の状況もしっかりとみておくべきでしょう。

一方で、中国の新築住宅価格は昨年12月も底堅く推移しました。政府が不動産価格の抑制策を導入しているものの、大都市で住宅価格が値上がりしました。

中国当局は預金準備率の引き下げなど、相次いで景気下支え策を打ち出しているが、これが不動産価格を下支えしている可能性があります。

12月の中国主要70都市の新築住宅価格は平均で前月比0.8%上昇し、11月の0.9%上昇から若干鈍化しました。前月比ベースでは44カ月連続の上昇です。

70都市の大半では、前月比で新築住宅価格が上昇しました。ただし、価格が上昇した都市は11月の63都市から59都市に減少しており、伸びが鈍化する兆しも出ています。

前年比では9.7%上昇し、伸び率は11月の9.3%を上回りました。17年12月の5.4%上昇を大幅に上回っています。

12月は中小都市との比較で、北京、上海、深セン、広州といった大都市の価格上昇が目立ちました。大都市の住宅価格は前月比1.3%上昇で、11月は0.3%上昇でした。

最も値上がりしたのは広州で、前月比3%上昇でした。2級都市と3級都市はともに前月比0.7%上昇でした。

住宅セクターの長期見通しについては、依然として強気の見方が多いようですが、当局者によるバブル警戒や米中貿易摩擦による経済へのリスクを背景に投資家の意欲は後退しているもようです。

一方、18年の新規不動産融資は6兆4,500億元で、新規融資全体の39.9%を占めたもようです。17年の41.1%からはやや低下しています。

Next: これらの方向性も踏まえ、アメリカ市場の今後の行方は?



アメリカ市場の今後の行方は

さて、米中貿易戦争の行方も気になりますが、問題はやはりバリュエーション調整です。これが終わらないと、次のステージに向かうことはできないでしょう。

その際には、目先の材料ではなく、より大局的な動きを見ていくことが肝要です。その答えはすでに申し上げたつもりです。

FRBが何かしらの手立てをしても、それは目先の話です。方向性は決まっています。そう考えています。

ダウ平均で1万5,000ドル程度まで調整すれば、安心して買うことができると考えています。少なくとも、1万8,000ドル以下になるまで、いまの市場をじっくりと見ていきたいと思います。

今後はボラティリティがきわめて高い状態が続きます。その中で戻り売り戦略を継続します。ボラティリティが高くなりますので、19年はトレーディングを上手くやることが肝要です。

19年は「トレーダーの年」になります。「BUY AND HOLD」などの長期投資は報われないと考えています。「QUICK IN AND QUICK OUT」でトレードすることが肝要です。

間違ったら、すぐに手仕舞いし、次に備えることです。そして、大半を現金にし、余裕資金だけでトレードすることです。

このルールを守ることが、19年の市場ではきわめて重要です。長期投資を再開するのはまだまだ先でしょう。20年までのチャンスを待ちたいと思います。

「株価は割安」と判断できる水準になるには、ダウ平均は1万5,000ドル、S&P500は1,500ポイント、ナスダック指数は4,000ポイントです。相当下の水準です。

【ダウ平均株価:2019年の想定レンジ】
弱気シナリオ2万483~2万3,675ドル、年末2万2,296ドル

【ダウ平均株価:1月の想定レンジ】
弱気シナリオ2万1,951~2万3,675ドル

【S&P500:2018年の想定レンジ】
弱気シナリオ2,183~2,561ポイント、年末2,336ポイント

【ダウ平均株価:1月の想定レンジ】
弱気シナリオ2,373~2,561ポイント

【ナスダック指数:2018年の想定レンジ】
弱気シナリオ4,794~6,871ポイント、年末5,224ポイント

【ナスダック指数:6月の想定レンジ】
弱気シナリオ6,064~6,871ポイント

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株式市場:日本株は米国株に比べて戻りが鈍い

為替市場:ドル円は円高基調が継続

コモディティ市場:金は上昇継続、原油は戻りを試す局面

今週の「ポジショントーク」~戻り売り基調継続

今ヘッジファンド投資戦略~「ヘッジファンドは生き残れるのか」

ベースボール・パーク~「週末は大阪セミナー」

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2019年1月22日号の目次

★新年のご挨拶
◎まぐまぐ大賞2018の受賞御礼
◎メルマガ「江守 哲の「ニュースの哲人」~日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ」のお知らせ
☆トレード用インジケーターのご紹介
*「EMORI CLUB」の会員募集のお知らせ
*「EMORI CLUB」新年会のお知らせ
◆マーケット・ヴューポイント~「バレンタイン・クラッシュ」に備える
*株式市場~米国株は戻りいっぱいに、日本株は米国株に比べて戻りが鈍い
*為替市場~ドル円は円高基調が継続
*コモディティ市場~金は上昇継続、原油は戻りを試す局面
◎今週の「ポジショントーク」~戻り売り基調継続
○ヘッジファンド投資戦略~「ヘッジファンドは生き残れるのか」-投資戦略構築のポイント
◇ベースボール・パーク~「週末は大阪セミナー」
■セミナー・メディア出演のお知らせ

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