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世界市場のマクロに波乱が予見されるいま、ミクロに目を向けた5つの投資手法とは?=山崎和邦

アベノミクス始動以来、6年間で2.8倍になった日経平均株価は下がるのが当たり前。今年以降のマクロが波乱となるに決まっている。では、今年はどう対処すべきか。(山崎和邦)

※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2019年2月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

ミクロは下手でも、大勢に乗っていればある程度うまくいくが…

米運用大手、ようやく日本株を買うタイミング

日本民族の志向としてミクロが得意でマクロは不得意だという面があるように見える。この点については週を改めて来週のメルマガで詳述する。

本稿では、「大勢に逆らっては何事も難しい。大勢に乗ってさえいればミクロは多少下手でもある程度はいい線を行く」、という考え方が基調であって、故にミクロはほとんど述べないでマクロを中心に述べてきた。

ところで、今年以降はマクロは波乱に決まっている。アベノミクス始動以来6年間で2.8倍(リーマンショック後の09年3月から言えば9年半で3.5倍)になった日経平均株価は少しは下がるのが当たり前だ。

ところが、どんな下降トレンドでも必ず派手な中間反騰は何度も起こる。これも当たり前だ。

そのマクロの変動の中で銘柄別に大底を示現するものがたくさん出てくるので、今年はミクロ面にも目を配っているほうが買い場を逃さないで済むと思う。

米運用大手のファンドマネージャーが、年金基金などに力説しているのは「ようやく日本株を買うタイミングが来た」と言っているそうである(日経ヴェリタス紙1月27日号による)。

たしかにPER・PBRから見れば、極めて割安なレベルではある。PBRはアベノミクスの始動点(日経平均8,665円)に近いかそれよりもまだ下がる場合があるし、PBRのほうは平均して1倍になることがある。

たとえば昨年12月25日など。PBR1倍ということ自体が既に異常な安さではある。PBR1倍ということは、アベノミクス始動点と同じレベルであるし、16年2月と6月の「天与の1円違いのWボトム」と本稿が称した老年期相場への底値圏の株価レベルと同一である。

Next: ミクロの視点で行う、5つの投資手法とは?



ミクロに目を付けた投資手法、5例を紹介

ミクロ面に目を向ける見方としては、いくつかの流儀があると思う。たとえばの例を列挙しよう。

1:一つは景気に左右されない、したがって大勢の影響をあまり受けない、そういう銘柄である。たとえば、制癌剤の開発などはこの部類であるが、これは同業製薬会社が似たようなものを次々と出すから安心できない。また、厚労省が認可するかどうか判らないから収益に結び付くまでに時間がかかるから安心できない。分からない物には手を出さない。

景気に左右されないとは言ってもそういうものではなくて、介護用ロボットとか高齢化社会に伴って需要が増えるものとか構造的に日本の趨勢に沿うものを言う。私事にわたって恐縮だが、筆者はそういうものから介護用ロボットを選んで12月下旬の突っ込みを、わずかだけ買ってみたところ、この1ヶ月でちょうど7割上がった。

2:もう一つの見方は、逆に景気敏感株である。これは一般の株価よりも先に動く。これはLME(ロンドンの非鉄金属取引所)の動向で分かる銅の相場などで知る鉱山株である。

筆者は現職時代にLME相場を見ていて銅が高ければ同和鉱業・三井金属を顧客に勧め、大抵の場合は短期的に利益を得た。また丸棒という鉄筋コンクリートの芯棒にする細い鉄棒の相場を見ていてこれが高騰すると丸棒のメーカーである東海鋼業の株を土木業者の社長に勧めると彼ら職務柄それを熟知していて、すぐに反応してくれた。

結果的には短期的に少々、利益を出したし、また、土木業の社長を新規開拓した。この景気先行敏感株を使う方法は効率よかった。またバルチック海運指数というのがある。これは貨物船の運賃の相場である。これを見て船会社を顧客に買わせた。大抵の場合は的中し短期的に利益を得た。バルチック海運指数というのは激動する。そしてむしろ景気の先行指標である。

3:または国際優良株の中でも月足で見て10年来の最安値に近いようなものである。これは業績の問題があるから安いのであって、10年来の安値で且つ業績に問題がないなどという贅沢な株は世の中にない。

4:また、創業オーナー社長が予想に反して大幅減益を発表したり、一挙に膿を出し切る決算を発表したりして急落した株価も狙い目であろう。サラリーマン経営者ならばそういうことはしない。傷口は穏やかな弥縫策をとるであろう。

創業オーナー社長は一挙にやる場合が多い。数年前日本電産の永守重信氏が大幅減益を発表したので株価は急落したらばそれは買いだと思っていたところ、取引開始後すぐに急騰してしまった。

筆者のような考え方の人が多かったのであろう。今回も日本電産が史上最高の利益予測に反して減益を発表した。これは即買い場だとは言わないが、たとえばの話しでそういうものも見ていく必要はある。

5:事件ものである。こういうとヘンなボロ株の物色と聞こえようが、そうではない。現場はしっかりしていて技術は優秀な筈だが一部の幹部が粉飾をしたので暴落したとか、改竄をしたが製品に関係はない名門企業である。

前者の代表例はオリンパスである。粉飾騒ぎで2,000円台の株が400円台まで下がった。内視鏡では世界一である。そのブランドは生きているし技術は生きている。上場廃止になっても実体価値を重視して再上場を果たすはずだ。幹事証券と株主が放置しない。そう考えて400円台を買ったら早期に3倍になったから、すかさず利食いしてしまったが長期に持てば10倍になった。

古い例では、10年前の西武鉄道の上場廃止だ。株主構成を長年ウソを発表していたので証取が怒って上場廃止したが事業そのものは健全だった、そこで上昇廃止前に買っておけば再上場で3倍になった。但し10年近くかかった。
10年で3倍なら良しとした。

最近の例ではKYB(萱場工業)、油圧機の名門である。油圧機なければ自動車はない。それのデータ改竄騒ぎの際に、突っ込みの2410円で少々だが買った。それから日経平均で5,000円下がったが買値を割ったことはなく常に1~2割は上に居た。やはり、それが大底だったのだ。

6:またたとえば、株主構成やビジネスモデルから見て絶対に破綻はさせないが破綻価格にある銘柄(昔で言えば額面割れ)。ジョン・テンプルトンは104銘柄一挙に買ったという実話の例で言えば1ドル以下の株価のものは長期的に買えばいつか2倍にはなる。ジョン・テンプルトンは銘柄発掘の名人と言われて「ストック・ピッカー」と言われたが、発想は単純なところにあった。

その銘柄の見つけ方は、有利子負債が年間売り上げよりも多いようなものはダメだ。有利子負債が年間売り上げに比べて極めて少ないが赤字ではない、赤字ならば利益剰余金が減っていくから避ける、もう一つは利益剰余金の金額である。

こういう観点から月足を見ていて、超長期的に安値であるものを見つけていく。今年からはマクロ一点張りではなく時にはミクロに目を向けていかねばならないと思う。

Next: マクロをにらんでミクロでしのぎつつ、今年の戦略は?



今年も含めて、仕込みのチャンスは近い

筆者は三井の会社で常務取締役を務めているころ、土曜日にゴルフをやめて(日曜日に回して)産業能率大学の社会人講座で経済学を講じていた期間が7年間あった。引退後に大学教授になる準備であった。

その時に大学が指定する教科書があって「原則としてこれに沿って進めて下さい」と言われていたが、A4版で約250ページある教科書のうちの前半がマクロ経済学で後半がミクロ経済学だったのに、筆者はミクロは一切やらずにマクロのみに重点を置いた

マクロを見間違えばミクロをいくら微細に研究しても意味はないからだと言って、河の流れに沿って泳げば泳ぎは下手でもイイ線を行く、逆に、河の流れに抗して泳いだら、いくら水泳がうまくてもうまく行かない、と言って納得してもらって、これはなかなかの好評で7年間続いた。今でもその時代の聴講者が集まって食事会をすることがある。色々と世の中のことが聞けて楽しい。

以上、例示したような基本をわきまえていれば、今年を含めて今から「仕込みの好機」は近いであろう。

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山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2019年2月3日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

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