賃金統計ほか我が国の基幹統計の半数近い23統計で誤りが発覚して問題になっていますが、総務省は2月1日、所管する「小売物価統計」で新たに不正調査があったと発表しました。これらが意図的であれば、アベノミクスへの忖度であり、官僚の犯罪です。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)
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官僚が日本をダメにする?厚労省ほか、不要な政府機関は多数ある
次々と発覚する基幹統計ミス
賃金統計をはじめとする、わが国の基幹統計の40%にあたる22で誤りがあったことが明らかになり、会期が始まった国会では政府が追及されています(編注:その後の追加調査で23統計にミスがあったと公表されていましたが、2月1日、総務省が新たに「小売物価統計」でも不正があったことを発表しています)。
行政の政策は、国家の統計に基づくものです。誤りが意図したものなら、官僚の犯罪です。
矢面の厚労省には「軽く済ませよう」という意図が見えます。しかし事実に基づかねばならない行政の統計不正と官僚の仕事ぶりは、見逃してはならないものでしょう。
「サンプリングの誤差」を使った官僚の犯罪か
40%の経済統計の数字を高く見せる誤りが、諸官庁で、同時に発生する確率は低い。証明はされなくても、サンプリングなどにおいて偽装があったことになるでしょう。
目的は、アベノミクスの成果への「忖度(そんたく)」でしょう。
GDPの統計においても、推計値の発表前には政府自民党の幹事長に対して、内閣府の幹部から内々の報告がある習慣であり、そのとき「鉛筆舐め」が行われていたのは、広く知られています。国民所得でもあるGDPの上昇率が高くなると、政権の支持が上がるからです。経済統計には、政治性が混じっています。
あらゆる統計には、標本を抽出するサンプリングにともなう誤差があります。サンプリング法では、ランダム抽出したデータから、母集団(全体)を推計します。そのとき推計の誤差が出るのです。
(注:政府統計で5300万世帯の全数が調査され、誤差がないのは、5年に1度の国勢調査だけです。調査員1人が50から100世帯を受け持つと、費用は、1回で650億円もかかるという。調査員の費用が大きいため、2010年からは、調査員に手渡しするか、郵送に変わっています。)
その誤差は、「{(回答比率 ×(1 – 回答比率)} ÷ サンプル数」の結果の平方根をとって2倍したのものです。
サンプルのYes・Noの比率が50%付近のときが、母集団(全体)との誤差は、もっとも大きくなります。
具体例を挙げて、その誤差がどれほどのものかを見てみましょう。
<事例>
ある商品に満足すると答えた人が50%の場合、サンプル数が500なら、母集団の満足度は、「50%±4.5%=45.5%〜54.5%」と推計されます(注:サンプル数が500の4倍の、2000のときの誤差は、その約半分の2.2%に縮小します。3000なら1.8%です)。
<サンプル数と誤差>
サンプル数500のときの統計結果には、母集団の全数調査とは、最大9ポイントの誤差の範囲が出ます。これが、統計の科学的な知見です。
厚労省が行っていた、東京都の、500人以上の会社の賃金統計では、全数調査するという規定があるのに、任意に(おそらくは選択して)1/3に絞っていたのが事実とすれば、このサンプリング誤差を利用したものになるでしょう。
英国の首相ディズレリーが言った、「世の中の嘘は3つある。嘘、大嘘、そして(サンプリングの)統計だ」ということになってしまっています。
今回発覚したことは、幹部官僚が、内閣からの高い人事評価を求めたことが原因である、みみっちい奸計(かんけい)に属することでしょう。
民間会社の賃金の上昇率が低く出たとすれば、何らかの「幹部による修正」が行われたはずだからです。そういった仕事は、「自分の妻や子どもには話せない」レベルの、醜悪なものです。
根源は、カルロス・ゴーンの報酬の、有価証券報告書への過小記載と同じ構造のものです。官僚に、同じ心理が忍び寄っているのでしょう。
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厚労省ほか、必要のない政府機関はたくさんある
中央銀行の通貨発行は、西欧と米国では、19世紀まで、民間銀行が行ってきたことなので、中央銀行という機関は、解消できます。
年金保険、医療保険、介護費、雇用保険などは、厚労省ではなくても、監視制度を作れば民間の保険会社が行うことができます。税収からの補填金を入れる制度を作ればいい。
政府の産業行政を統括している経産省も、必要がない組織です。
外交も、民間機関が行えます。わが国の近代化の過程では必要性があった文科省、農水省、国土交通省も今は必要がない。
政府機関で必要なのは、税をつかさどる財務省、国民を守る国防省、犯罪を取り締まる警察と裁判所です。
省庁・公務員・代議士を減らせば増税も要らない
年金、医療、雇用を政府保険にする福祉国家を言った頃から、政府機関と財政が肥大し、借金である国債を発行する赤字が増えたのです。
国家を名乗る省庁の解消、公務員、代議士の削減が、真の行政改革でしょう。税率では、1/3以下の減税になります。消費税の増税も要らない。
税と福祉では、政府は、毎回、税と福祉費用が高い北欧を参照しますが、民間からの監視制度(オンブズマン)が強力な北欧とは行政の根本が違います。
日本には、国民による行政、民主的な監視制度が欠落しています。民主制として、代議士を選べるだけです。政府が直接民主制にしなかったのは、官僚制度で、戦前の天皇制の事務官を続けたからです。
わが国は米国の占領下で、憲法を作り、戦後の福祉国家を言って、設計を誤ったまま、約70年来ています。国民の多数派の意思があれば、自然ではない国家の体制は、改編と変更ができます。人口減少時代に向かう今、必要なことでしょう(注:極端と見られる少数派の意見であることは承知しています)。
福祉国家の前提条件
50代以下の人から、65歳以上に所得移転を行う福祉国家は、「働く人が増加し、国民所得が増える」ことを前提にして、成立します。
働く人の平均賃金が上がらなくなり(税収が増えず)、働く人は減って福祉の受給者が増えると、構造的な財政赤字になるのが福祉国家です。
わが国の年金・医療費の基本部分は、中国のような高度成長の終わりの時期だった1970年代に設計されています。この中で、民間の平均の実質賃金が減る中で、統計的な手盛りと、天下りで賃金と年金をあげてきた政府官僚、そして政治家のコストが高くなっています。
Next: 肥大した財政負担。公務員の生涯報酬がどんどん高くなっている?
公務員の生涯報酬
GDP(国民所得)が増えなかった20年で、民間の平均に比較した公務員の生涯平均報酬は、高くなっています。
賃金を決める人事院勧告制度で、主に上場企業大手の賃金上昇率を参考にし、その上昇率に準じてきたからです。
年金や医療費の公務員共済保険は、もともと民間より厚い。80年代まで公務員報酬は低かったのです。
GDPが増えず、財政赤字だけが増えた90年代から、毎年、少しずつ変わってきました。1年ではわずかに見える1.5%違っても、30年では1.9倍になります。
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※太字はMONEY VOICE編集部による
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