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消費増税、3月までに中止発表か。統計不正を払拭する「ダブル選挙」解散の大義に使われる=斎藤満

安倍総理は夏の参議院選挙を単独で行えば過半数割れの危機と認識し、衆参ダブル選挙に持ち込む意向と言います。解散の大義として、消費税引き上げの延期を利用すると見られています。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2019年2月8日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

モリカケ問題と同様に、選挙で勝てば統計不正もうやむやになる?

選挙が免罪符

安倍総理らしいと言えばそれまでですが、困ったお方です。

信頼できる永田町筋によれば、安倍総理は夏の参議院選挙を単独で行えば、過半数割れの危機と認識し、これをダブル選挙に持ち込む意向と言います。

そのために、すでに準備を進めている消費税の引き上げを延期、ないし取りやめる意向と言います。これは安倍総理なりの「危機感」の表れと言います。

危機感と言っても、消費税の引き上げどころではない日本経済の危機ではなく、安倍政権への風当たりが強まり、選挙で負けそうだとの危機感です。

かつての「消えた年金」を連想させるような「毎月勤労統計」問題が政権への批判を強めているためです。これを打ち消すほどの外交成果も上がっておらず、今回も「もり・かけ」問題を乗り切った手法を使おうとしていると言います。

つまり、あれだけ嘘八百を並べ挙げ、財務省を中心にデータの改ざん・情報隠蔽をして批判の的となったのですが、選挙で勝ったことで「国民の支持を得た」として、すべてこれが許されたと信じています。国民も約8割が政府の説明に納得しないと言いながら、選挙では自公政権に投票して支持する形となったため、政府には大きな「免罪符」となりました。

今回の厚生労働省を中心とした政治危機も、最後は選挙で勝てば「放免」と考えています。

ところが、前回の選挙に比べ、今回は政府への逆風が強いと感じ、野党が体制を整えられずに与党に有利な「ダブル選挙」で乗り切ろうとしています。

解散の大義として、消費税引き上げの延期を利用すると見られています。総理は「リーマン危機」並みの危機とならない限り、消費税を引き上げると説明していましたが、選挙の道具にしようとしています。

期限は3月末

実際、産業界には政府への不信感があり、消費税についても「どうせ最後には延期というに違いない」とみて、消費税引き上げへの準備をしていない企業も少なくないと言います。

しかし、それでも消費税を引き上げるなら、相応のシステム対応が必要で、10月間際になって「中止」と言われても現場は対応できません。

その点、システム上の混乱を回避するためには、中止であれ、延期であれ、この3月末までに決めなければならないと言います。

中小小売店の中には、コスト高でも渋々キャッシュレス化への対応をすべく、機械の導入・システム対応を進めているところも少なくありません。実施しても、延期しても誰かは負担を負うことになります。

いずれにしてもあと2月以内に決断する必要があります。

Next: 消費税増税を延期するため、リーマン級の危機を演出?/財政赤字は青天井に



リーマン危機の演出?

延期する場合、どんな理由によるのか、説明が必要で、特に「リーマン危機」並みの危機の説明が求められます。

昨年暮れから、米国発の株価急落があり、これが日本にも広く不安を広げるようなら、「リーマン危機」並みの材料にする余地はあったのですが、幸か不幸か、米国株も日本株も反発して危機を脱しました

心配のタネと言える中国については、政府日銀が楽観的にみているので、これを理由にはしにくくなっています。

目下のところ視界には「リーマン危機」並みのショックは見えません。米中貿易摩擦も、米国が妥協の姿勢を見せそうで、3月1日の対中国製品への関税引き上げは回避される見込みとなっています。

そして2回目の米朝首脳会談が今月27日・28日にベトナムで開催となれば、これも祝祭ムードを高め、株式市場には追い風となります。

だからと言って、消費税引き上げを取りやめるために、人為的に危機を演出するなどということは、米国なら時々見られますが、本末転倒で、決して許されることではありません。

選挙で勝つためには手段を選ばないとの暴挙ですが、これを許すのも野党の力が弱く、ダブル選挙への対応ができないことと、何よりも小選挙区の弊害を利用して少ない得票でも過半の議席をとれる制度のせいです。

いずれにしても、この異常な選挙制度を利用し、選挙で勝てばすべて悪事が許されたと解釈することは、民主主義の冒涜にほかなりません。

財政赤字は青天井に

国民の血税を国民のために再配分するのではなく、政府の都合で一部の「お友達」の利益になるように配分するようなら、消費税引き上げの中止は歓迎します。

しかし、今回の消費税引き上げ決断の裏には、安倍政権に対してトランプ政権が防衛費の拡大、米国の兵器購入増を強く求めてきたことがありました。現にイージス・アショアやF35戦闘機の購入増などが決められています。

これらは消費税の引き上げを止めたから取り消しとはいきません

また災害対策ならびに関連して国土強靭化に向けた事業の拡大など、支出拡大は進行しています。税収の確保なしに、歳出の拡大は着実に進んでいます。

裏を返せば、それだけ財政赤字の拡大が進み、財政の基礎的バランス(プライマリー・バランス)の黒字化は半永久的に実現しなくなります。

Next: 政府の暴挙に歯止めをかけられるのは「国民」だけ



暴挙に歯止めをかけられるのは国民だけ

今の安倍政権に「経世済民」を説いても「何のことか」と理解されないのがオチ。

社会の困難を治め、困った人々を救済するのが「経世済民」で略して経済です。その本質を理解せず、むしろ国民のナイーブさを悪用して政治の悪行をすべて「選挙で民意を得た」と方便しようとしています。

都合の悪いことは国民に知らしめないのが政府の基本姿勢で、事情を知らない国民の多くが面倒を避け、野党の無力さもあって現状追認の選挙になりがちです。

「もり・かけ」での成功事例を頼みに、安倍政権はまたまた選挙を「免罪符」にしようとしています。このままでは政府に選挙を乗っ取られたままで、政府の暴挙に歯止めをかけられません。

これを止められるのは国民の声だけです。国民の利益よりも自身の長期政権達成を優先し、国益を考えない政権には厳しい「チェック」が必要で、今こそ国民のチェック能力が問われています

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2019年2月配信分
  • 問われる国民のチェック能力(2/8)
  • 行き過ぎた米金利低下期待(2/6)
  • 米中通商交渉の行方と波紋(2/4)
  • 物価は統計以上に上がっている(2/1)

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2019年1月配信分
  • 為替を左右する中銀と市場のギャップ(1/30)
  • 超多忙なトランプ日程は日本に吉か凶か(1/28)
  • 物価目標への拘りは有害無益(1/25)
  • 改めて中国リスクへの対処が求められる(1/23)
  • 日本を敵に回した韓国の勝算は(1/21)
  • FRBの真の支配者は(1/18)
  • 戦後最長、戦後最弱の景気拡大(1/16)
  • 今年は短期円安長期円高か(1/11)
  • 身動きがとれなくなった日銀(1/9)
  • 新年日本の課題(2)(1/7)
  • 新年日本の課題(1)(1/4)

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2018年12月配信分
  • 政治リスクの強い新年の日本経済(12/28)
  • 新年の「トランプリスク」をどう読むか(12/26)
  • 苦境に立たされたFRB(12/21)
  • 不気味な「理由なき株下げ」(12/19)
  • セキュリティ対策が先(12/17)
  • 米中通商交渉を巡る複雑な事情(12/14)
  • いつまで続く不安相場(12/12)
  • トランプ対反トランプの国際紛争激化(12/10)
  • 米金利にダブル・リスク(12/7)
  • 米中新冷戦は長期化する(12/5)
  • 消費税対策は徒労に終わる?(12/3)

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2018年11月配信分
・金利差円安の終焉(11/30)
・日産を舞台にした米仏代理戦争(11/28)
・原油価格下落の功罪(11/26)
・成熟した債権国入りはまだ早い(11/21)
・人手不足、低賃金の原因は生産性にあり(11/19)
・大博打の日ロ平和条約交渉(11/16)
・何でもありの消費税対策に混乱も(11/14)
・米国株に2つの逆風(11/12)
・国内景気に変調のシグナル(11/9)
・為替条項と副作用で日銀は出口策前倒し(11/7)
・一旦始めると止められない刺激策の麻薬性(11/5)
・強気通しを下振れリスクでヘッジする日銀の狙い(11/2)
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2018年10月配信分
・米中険悪化の中での安倍外交を危惧(10/31)
・米中間選挙が株の重しに(10/29)
・株価下落にトランプの負の側面(10/26)
・ドル円短期変動の主役は金利からリスクへ(10/24)
・債務依存の景気拡大も曲がり角(10/22)
・輸出が景気の足かせに(10/19)
・歯車が狂い始めた安倍政権(10/17)
・FRBはクレイジー発言でFRBはどうする(10/15)
・対中国戦略も米株に負担(10/12)
・新しい局面に入った米国の金利上昇(10/10)
・日本の景気を脅かす「内憂外患」(10/5)
・日米通商交渉、表の顔と裏の顔(10/3)
・日銀金融緩和の虚と実(10/1)
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2018年9月配信分
・人件費抑制がもたらす経済のゆがみ(9/28)
・3選果たした安倍総理に大きな試練(9/26)
・注目度が高まったFOMCでの「ドット・チャート」(9/21)
・日ソ共同宣言と日米安保(9/19)
・自民党総裁選前に風雲急(9/14)
・何かおかしな日ロ首脳会談(9/12)
・追い詰められた日銀の本音と建て前(9/10)
・安倍・トランプ連合の危機(9/7)
・強まる労働分配率への関心(9/5)
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2018年8月配信分
・米地区連銀が景気後退の可能性を示唆(8/31)
・異常気象が財政規律を破壊する(8/29)
・サウジIPO中止に見るパワーポリティクス(8/24)
・透けて見えるトランプの中国戦略の本音(8/22)
・貿易を救えない日米蜜月(8/17)
・FRBの利上げが新興国通貨不安に(8/15)
・好調米国株の死角(8/13)
・日本経済、単発エンジンの限界(8/10)
・日本の消費を圧迫する恒常所得仮説の重し(8/8)
・円安期待ははげ落ちるリスク大(8/6)
・中央銀行を揺さぶる新しい勢力(8/3)
・物価目標未達でも日銀は政策修正(8/1)
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2018年7月配信分
・物価下振れ下の日銀政策微修正とは(7/30)
・中国経済の実態は苦しい?(7/27)
・「トランプ」プラス「日銀」は円高(7/25)
・トランプの金利高、ドル高けん制発言が示唆するもの(7/23)
・トランプ外交の見えない部分(7/20)
・中国カードにもなるFRBの利上げ(7/18)
・見えてきた価格戦略の勝敗(7/13)
・列島豪雨、多くの死を無駄にしないために(7/11)
・トランプ「米国第一」の功罪(7/9)
・日銀の物価見直しとリスク(7/6)
・トランプの影響、相場にもくっきり(7/4)
・原油高に見る各国の思惑(7/2)
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2018年6月配信分
・所得分配をゆがめる日銀の金利調節(6/29)
・ドル高、終わりの始まり?(6/27)
・貿易戦争に隠されたトランプの狙い(6/25)
・景気の陰りが広がった(6/22)
・なぜ日本で消費者物価が上がらないのか(6/20)
・無視できない米イールドカーブのフラット化(6/18)
・綱渡りのパウエルFRB(6/15)
・歴史的米朝会談と日本の困惑(6/13)
・日銀は物価見通しの引き下げ準備(6/11)
・日銀は密かに金利高め誘導か(6/8)
・個人消費の弱さは重症(6/6)
・FOMC前後の為替の動きに要注意(6/4)
・日銀に追い打ちをかけた弱い鉱工業生産(6/1)
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2018年5月配信分
・収まらない米中貿易戦争(5/30)
・FRBが直面するジレンマ(5/28)
・市場から見た米朝会談破談リスク(5/25)
・景気の減速は本当に一時的か(5/23)
・「ミニ石油ショック」でも油断は禁物(5/21)
・米朝会談までは新興国不安回避要請?(5/18)
・インフレ目標事実上のギブアップ(5/16)
・米長期金利はすでに上昇トレンドに(5/14)
・新興国にイラン不安の追い打ち(5/11)
・トランプ貿易戦争のインフレ性(5/9)
・FRBの姿勢変化に注目(5/7)
・トランプ大統領ノーベル賞を意識(5/2)
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2018年4月配信分
・窮地の安倍政権、解散か総辞職か(4/27)
・物価目標2019年度も黄色信号(4/25)
・米長期金利再上昇の重み(4/23)
・日米首脳会談も安倍延命にはならず(4/20)
・無視できない政治混乱の影響(4/18)
・無理筋な日銀の物価目標(4/16)
・米為替報告書に注目(4/13)
・米はシリアで多国間軍事対応を検討(4/11)
・安倍政権維持への3つのハードル(4/9)
・物価上昇の内容が変わる(4/6)
・FRBはどこまで利上げできるか(4/4)
・キーパーソンはH.キッシンジャー氏(4/2)
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2018年3月配信分
・ハイテク株にもトランプ・リスク(3/30)
・見えてきた点と線(3/28)
・見えてきたドル円の100円割れ(3/26)
・姿を現したパウエルFED(3/23)
・自動車業界と流通業界とのコラボ(3/19)
・日銀の金融政策も政権如何(3/16)
・安倍政権に春の嵐(3/14)
・雇用絶好調でなぜ賃金が上がらない(3/12)
・金利差円安論はすでに破たん(3/9)
・二転三転する黒田発言の真意は(3/7)
・トランプならではの貿易戦争リスク(3/5)
・エネルギー株に3つのリスク(3/2)
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2018年2月配信分
・親子バトルが銀行株を圧迫(2/28)
・裁量労働制論議で露呈した日本の問題(2/26)
・中央銀行の支配者(2/23)
・半島融和の裏で中東に火種(2/21)
・(金利差・ドル円・株の関係が崩れる2/19)
・米国債のバブル性(2/16)
・トランプ予算教書に2つの危険性(2/14)
・日銀人事の裏側(2/13)
・市場不安定化が3月利上げの負担に(2/9)
・適温経済と適温相場は別(2/7)
・米金利とドル円の関係、ここに注意(2/5)
・米金利高が日本の投資家を襲う(2/2)
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2018年1月配信分
・個人消費の低迷に歯止めがかからず(1/31)
・物価本位主義見直しの時(1/29)
・安倍総理の密かな戦略を探る(1/26)
・規律を失い惰性に走る財政金融政策(1/24)
・米長期金利上昇は「吉」か「凶」か(1/22)
・強まる中国への風当たり(1/19)
・地政学リスクとビジネス・チャンス(1/17)
・粉砕される円安期待(1/)
・デフレ脱却宣言を拒む実質賃金の低迷(1/12)
・北朝鮮問題に新展開か(1/10)
・インフレ如何で変わる米国リスク(1/5)
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マンさんの経済あらかると』(2019年2月8日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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