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相続税がゼロ円でも、遺産を受け取るにはお金が必要?準備不足で苦労する2つのケース=牧野寿和

また、相続はうちには関係ないと思っている方もいるでしょう。しかし実は、相続税の納付は必要なくても、多くの家庭では考えておいた方が良い場合があります。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)

プロフィール:牧野寿和(まきの ひさかず)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。

遺産分割をするためには、資金が必要な場合も

相続と相続税は違う

「相続をする」と一口で言っても、
・その家の家族構成
・相続資産の内容
・家業
などその家庭の様々な事情によって内容も変わってきます。

相続する資産はないから、相続は関係ないと思う方もいるでしょう。たしかに相続税は、夫婦と2人の子供がいる家庭で、この夫婦は長男の家族と同居をして、長女は嫁いで家を出ているとします。

この家族の夫が亡くなられたのであれば、基礎控除として、
3,000万円+妻(600万円)+子ども(600万円×2人)=4,800万円
つまり相続資産が4,800万円までであれば、相続税を納付することはありません

だからと言って、相続が終了した訳ではありません。

むしろ家庭裁判所に持ち込まれる相続に関する調停の多くは、相続税がかからない事案が多い、といった話しも聞いたことがあります。

たとえ相続税を納付しなくても、遺産の分割をすることまたその準備は夫が亡くなる前、つまり生前から必要です。

なお、今回は詳しくは触れませんが、相続税の基礎控除のほかにも、個人で相続をした場合、事業主として相続をした場合など、様々な相続税額を節税できる施策もありますので、該当すると思われる方や家族の方は、相続が発生する前から調べておくことが必要です。

相続税はかからないがお金はいる

お話を戻します。ここからは、相続税を納付するほどの相続財産はないけれど、相続をするためにお金がいる場合をお話しいたします。

上記の家族で、お父さんの資産が自宅の土地と建物と貯金とでの相続資産の総額が基礎控除の範囲内の額を残されて、亡くなった場合に、土地建物はお母さんが相続して、貯金を子どもふたりで分けても相続税は通常かかりません。しかし、他に費用はかかります。

この話はこの後、長男がこの家を相続したところでお話をいたします。

その後、お母さんも亡くなりました。子どもふたりで相続する財産は、お母さんと長男家族が住んでいた家と土地のみで相続税納付の必要はありません。

このような場合でも、次のふたつのお金を用意しておくことが必要な場合があります。

Next: 相続税がかからないのにお金が必要な場合とは?



(1)家と土地の相続登記費用

具体的には、お母さん名義の土地と建物の名義を長男に変える「相続登記」が必要です。この相続登記は、現在義務化されてはいませんが、空き家問題などで、今後義務化されるようです。

また、ご自身の資産を守るためにも登記は必要です。

相続登記をするには、長男が管轄の法務局にいってそこで、相談をしながらご自身で申請する方法とすべての手続きを司法書士にお願いする方法があります。

司法書士にお願いすれば、ほとんどの手続きを委ねることができますが、司法書士に報酬を支払うことになります。

一般的に相続登記に必要な書類を書き出してみました。

<当事者が準備する>
・遺産分割協議書(登記申請添付)
・遺言書がある場合は遺言書

<住んでいる市区町村の役所発行してもらう書類(発行手数料が必要)>
・固定資産税評価証明書
・被相続人(お母さん)の出生時から
死亡時までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本など(お母さんが結婚する前や結婚後に転勤など住所が変わっている場合はその役場ごとに依頼して取り寄せる必要があります、郵送代も必要)
・相続人全員(長男、長女)の戸籍謄本と印鑑証明書
・相続人全員の住民票の写し

<法務局に納める印紙代>
・登録免許税
例えば、評価額が3,000万円の土地があり、その土地について相続登記申請するなら、3,000万円×0.4%をかけて登録免許税は12万円になります。

<相続登記の司法書士報酬>
相場は、案件や司法省によって様々ですが、1案件に5万円は以上と言われています。

(2)相続資産を分割するために現金が必要になる場合

長男は、土地建物にかかる固定資産税や都市計画税の納付が必要になります。現行の民法では、子ども(この場合は長男と長女)は相続資産を均等に分けることになっています。

そこで、お母さんからの相続資産が土地建物だけであって、長男がすべて相続するのであれば、長男が相続した土地建物の「現在価値」具体的には、現在その土地建物を売却した場合2,000万円(ここでの価値額は、上述の「固定資産税評価証明書」の記載額とは異なります)であれば、長男は長女に現金などで1,000万円支払うことが必要になるかもしれません。

長男が1,000万円すぐに払えればいいのですが、難しい場合もあります。

また、お母さんやお父さんからすでに長女にそれ相当の金品を生前に贈与を受けていた場合やまた書式に則った遺言書が残ってる場合は、また、書面はなくても親子兄弟で相続について取り決めていれば、ここで、長男が長女に支払う額は変わってくるかもしれません。

お母さんが亡くなったあと、長男と長女で遺産分割を協議するのでなく、両親が生きている時に親が方針を決めておくべきだとも思います。

相続はその家庭によって違う

今回は、典型的な例を検討しました。このように相続は、各家庭に起こることです。

また、このように相続税の納付はなくても相続資産があれば、それなりのまとまったお金がいるのです。

<「人生の添乗員(R)」からのワンポイントメッセージ>

相続税の納付のいらない相続をしてもお金がいることがあります。

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【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(32019年2月13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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