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2019年はアジアの均衡が崩れる年。消費増税に揺れる日本は生き残れるのか?=俣野成敏

現在、アジア経済が世界を牽引する原動力の1つになっているのは、ご存じの通りです。繁栄と治安は密接に関わっていますが、今年はどこかで、一触即発の事態となるかもしれません。

今回は、「2019年予測」の後編をお送りいたします。前回の特集では、2019年に予想されるアメリカ・中国・EU・投資環境などについてお話ししました。この特集では、今年日本で予定されている動きや、現在の金融事情などについて、見ていくことにしましょう。(俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編

※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2019年2月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:俣野成敏(またのなるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、マネープランの実現にコミットしたマネースクールを共催。自らの経験を書にした『プロフェッショナルサラリーマン』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが10万部超えに。著作累計は44万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を3年連続で受賞している。

本当に消費税は上がるのか?今回、政府が延期できない事情とは

過去、消費税増税に関わった政権は退陣している

1989年に、日本で初めて消費税が導入された時の税率は3%でした。あれから30年が過ぎ、その間、税率は3%→5%→8%へと上がっています。初導入された直後には、ベルリンの壁崩壊やソビエト連邦の崩壊、日本でのバブル崩壊など、それまでの秩序が崩れ、世界的にも新たな体制の構築を迫られる時代の節目となりました。

2019年に入り、再び日本で消費税の増税が予定されています。過去、消費税の増税に関わった政権の多くが退陣を余儀なくされました。現在、安倍政権は戦後最長といわれる好景気を実現し、政権自体が記録的な長さとなっています。いよいよ税率10%の実現が近づく中で、当政権は命脈を保つことができるのでしょうか?

さて。今回は、「2019年予測」の後編をお送りいたします。前回の特集では、2019年に予想されるアメリカ・中国・EU・投資環境などについてお話ししました。この特集では、今年日本で予定されている動きや、現在の金融事情などについて、見ていくことにしましょう。

【関連】2019年も堅調なアメリカ経済が世界をリードする~米中対立、欧州情勢ほか専門家の見方=俣野成敏

本特集では、前回に引き続き、シンガポールにてOMAE CAPITAL MANAGEMENT PTE LTDのCEOを務め、為替の専門家・アドバイザーとしてご活躍の大前雅夫(おおまえまさお)さんからお話をお伺いしていきます。金融の専門家がどこに着目し、今の社会をどのように捉えているのか、ぜひ参考にしていただければと思います(以下、本文中について、名前が出てこない限り同一話者、敬称略)。

1. 2019年は日本にとってどのような年になるのか

最初は「日本を取り巻く環境について」です。現在、アジア経済が、世界を牽引する原動力の1つになっているのは、ご存じの通りです。繁栄と治安は密接に関わっていますが、今年はどこかで、一触即発の事態となるかもしれません。

【今年はアジアの均衡が崩れる?!】

俣野:それでは大前さん、今回もよろしくお願いいたします。まずは日本の2019年の動きについてお伺いできますでしょうか?

大前:今年の日本は、重要なイベントが目白押しです。特に安倍政権にとって、この1年は正念場になるのではないでしょうか。ダークホース的なところで言うと、今年の5月に行われる年号の変更があります。実は、私が就職した年というのが、幻と言われる昭和64年(1989年)でした。

俣野:昭和天皇がお亡くなりになられて(崩御あらせられて)、平成元年に切り替わった年ですよね。

大前:はい。年号が変わると、意外に世の中の空気がガラッと変わります。当時は私も、ぼんやりと感じていただけですが。30年前は、年号が変わった直後に、ソビエト連邦の崩壊や、東西ドイツ統合と続き、冷戦が終結しました。そしてそれを境に、世界にとって、日本はそれほど重要な国ではなくなりました。まさに“失われた30年”の始まりが、年号の改正だったわけです。

俣野:また同じことが、このアジアで起ころうとしている、と?

大前:これまで私は香港や中国に駐在したり、現在もシンガポールに住んでかれこれ7年になりますので、アジアでの大きな変化は、実際に肌で体感してきました。その経験から今、日本を取り巻く環境は緊迫度を増しているように感じています。今年は、アジアのパワーバランスが大きく変わる年になるかもしれません。

まず、朝鮮半島問題です。2016〜2017年にかけて、北朝鮮は活発にミサイル実験を繰り返し、同年の8月と9月には、北朝鮮が発射したミサイルが日本の北海道上空を通過し、緊張が高まりました。しかし2018年に入ると、一転して融和路線を打ち出し、同年4月には韓国との間で板門店宣言に署名しています。最近の動向を見ていると、明らかにトランプ政権のアメリカは、北朝鮮と何らかのディール(取引)をまとめ、彼らの成果としてアピールしたい、という思惑を感じます。

そうは言っても、実のところ韓国と北朝鮮が統一するとなると、困る人が大勢いますから、いきなり統一にはならないと思います。けれど今後、双方の関係が緊密になってくれば、38度線に代わって、対馬(つしま:長崎県対馬市)あたりが38度線のようになるのではないか、と予想しています。

そうなってくれば、日本は韓国、北朝鮮連合の政治的挑発にも対応していかなくてはなりません。その際、アメリカが日米安保条約のもとで日本を守ってくれるのかなど、デリケートなトピックの議論が活発になると思われます。

次に、南シナ海について。各国の領有権争いのタネとなっているこの地で今、実効支配を進めているのが中国です。フィリピンのアキノ前大統領の時に、同国が中国を国際仲裁裁判所に提訴しましたが、ドゥテルテ大統領の時代になって以降、両国は協力関係にあります。現在、この地域では定期的に米・英・仏軍による「航行の自由」作戦(※1)が行われており、万一この地で軍事衝突でも起ころうものなら、その影響で日経株価が一時的に一気に2,000、3,000円くらい落ちる可能性もないとは言えません。

俣野:戦争になることはなくても、1度の衝突で、大きく下げる局面も想定しておくべきだ、ということですね。

大前:はい。それから目下、脅威が迫っているのが台湾問題です。1月2日、中国の習近平主席が「台湾同胞に告げる書」の40周年記念式典中、脅しとも取れるような口調で、「台湾との間には『1つの中国の原則』しかありえない」と発言しました。当然ながら、台湾側はこれに激しく反発。中国側は「武力行使は放棄していない」と言及するなど、緊張が高まっています。

当国が台湾を力づくで併合することはないにしても、日本の目と鼻の先でのできごとだけに、今後の動きには注意が必要です。
※参考:米海軍艦船2隻が台湾海峡で「航行の自由」作戦 中国への牽制が狙いか – 朝日新聞

《脚注》
※1…「航行の自由」作戦とは、米・英・仏が国際法に基づき、「すべての国が自由に海・空域を使える」ことを証明するために艦船や航空機を派遣すること。アメリカは2016年に中国・インド・イランなど22の国と地域に派遣した。

Next: 本当に消費税は上がるのか?今回、政府が延期できない事情とは

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