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2019年はアジアの均衡が崩れる年。消費増税に揺れる日本は生き残れるのか?=俣野成敏

【消費税の再延期はない?】

俣野:今の日本は内憂外患とも言えそうですが、国内事情はいかがでしょうか?

大前:最近の株価は、何とか2万円以上を維持している状態で、「これで本当に消費税の10%増税が行えるのか?」と疑問視する声も挙がっています。すでに2回、延期されているため、「今回も延期になるのではないか」と期待する人も多いと思います。確かに、今からでも増税撤回は不可能ではありませんが、すでにかなり難しい段階にまで進んできています。

俣野:これを覆すのは相当ハードだ、と。

大前:消費税を改正する際には、経過措置というものが適用されます。移行が完了するまでの間、一時的に起こる混乱や不利益を極力、避けるための特例措置のことです。通常、商取引では契約から商品受け渡し、決済の完了までにタイムラグが発生します。ですから、一連の取引が新消費税率の施行日を跨いでしまうことが普通に起こります。その時、新旧どちらの税率を適用すべきか?という判断を示したものです。

経過措置を受けるものの中には、工事の請負等で4月1日から新税率での契約が必要となるものがあります。消費税の延期には法改正が必要で、今から3月末までに、すべてを“増税なし”バージョンに戻すのは厳しいと思います。
※参考:国税庁 消費税等に関する経過措置の取り扱いQ&A

俣野:すでに消費税対策を大幅に盛り込んだ2019年度予算案が閣議決定されていますからね。当初予算初となる100兆円を突破し、101兆4564億円ですから…。とはいえ、円高株安のこのタイミングが、最良とは言えないのも事実です。安倍政権は、なぜ延期しなかったのでしょうか?

大前:経済が思わしくない中での増税ですから、決してリスクは低くないと思います。先日、GPIF(年金積立金管理運用独立法人)が2018年10〜12月期に14兆円規模の損失を出した、というニュースが流れていました。これが、仮に日経平均が2万4,000円台とかであれば、GPIFもこのような損失にはなかったでしょう。つまり今の日本には余裕がない。それは日銀も同じことで、増税後に落ち込んだ分を、日銀介入や金融緩和で埋められるのかというと難しいでしょう。

それでも、消費税増税に踏み切る主な理由は3つあります。

まず第1に、増大し続ける社会保障費を前に、これ以上、増税を先送りできない、という財政事情

第2に、予算案を見てもお分かりのように、できる限りの増税対策を講じたこと。キャッシュレスによるポイント還元や、飲食に軽減税率を適用するなど、一時的な税収減も覚悟した対策です。

第3に、東京オリンピックで外需を期待できることです。逆に、この機を逃すと、当分は難しいのではないでしょうか。

俣野:やりたくないけれど、やらざるを得ない、ということですね。

大前:はい、そうですね。海外的にも、以前から言われている「プライマリーバランス(※2)など財政の健全化」を、先送りではなく実際に実行していく、という姿勢が問われることになるでしょう。

《脚注》
※2…プライマリーバランスとは、国・地方などの基礎財政の収支バランスのこと。日本は2020年までにプライマリーバランスがプラスになることを目指していたが、2018年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2018」によって、2025年に延期された。

Next: 問われる安倍政権の真価。海外投資家が日本の市場から逃げ出している!?

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