相続が起きた後の不動産の名義変更が義務化されるという、閣議決定がされました。相続後にトラブルが起きないようにするには、どのような準備が必要でしょう。(『こころをつなぐ、相続のハナシ』山田和美)
1986年愛知県稲沢市生まれ。行政書士、なごみ行政書士事務所所長。大学では心理学を学び、在学中に行政書士、ファイナンシャルプランナー、個人情報保護士等の資格を取得。名古屋市内のコンサルファームに入社し、相続手続の綜合コンサルに従事。その後事業承継コンサルタント・経営計画策定サポートの部署を経て、2014年愛知県一宮市にてなごみ行政書士事務所を開業。
いらない土地の相続問題をどうするべきか
「所有者不明土地」が九州本土より大きな面積に
先日、日経新聞に下記の記事が掲載されました。今日は、これについて解説しようと思います。
※参照:不明土地対策2段階で 政府、新法案を閣議決定‐日経新聞(2月22日公開)
現在、相続が起きた後の不動産の名義変更は義務ではありません。たとえば、土地の持ち主が亡くなってから10年、20年と名義変更を放置していたとしても、特段罰則などはないのです。
とは言え、名義変更をしないと、自分の土地だと主張しづらいなど様々な問題がありますので、通常、自宅の敷地や貸している土地など価値のある土地については名義変更をすることがほとんどです。
一方で、行ったこともないような山林など、いわゆる「いらない」土地を持っている人は、実は少なくありません。
特に今すぐ使うわけでもないし、売れる見込みもないとなると、わざわざお金や手間をかけて名義変更をせずそのままにしてしまう、という気持ちもわかります。
こうしてどんどん年数が経ち、しかも評価額も高くなければ固定資産税の負担も無く、結果的に誰の土地なのか分からなくなってしまうのです。
このような結果、持ち主がわからなくなってしまった土地を「所有者不明土地」といいますが、これがいま、九州本土よりも大きな面積になっているそうです。
それだけの規模であるにも関わらず、誰のものかわからないので、勝手に使うわけにもいかず、大きな問題になっている、ということですね。
さて、ここで今回のニュースです。政府は、今後こういった所有者不明の土地を減らすために動いているようです。その内容は主にふたつ。
一つは、いま既にある所有者不明土地を減らすために、裁判所が選んだ管理者が所有者不明の土地を売れるようにする制度をつくること。
そしてもう一つは、新しく所有者不明土地を生んでしまわないために、相続が起きた後の名義変更を義務にすることと、いらない土地を放棄することができる制度をつくることです。
まだ閣議決定がされたのみで、これから国会に法案提出ですから、決定事項ではありませんが、これが成立すれば、相続においての選択肢が増えることになります。
Next: 「いらない土地」を持っていたら、どうしたらいい?
元気なうちに手放してしまうこともおすすめの対策
実際に、いらない土地を相続してしまって困っている、というご相談もよくお聞きします。
このような土地は放置すればするほど次世代に問題を先送りすることになりますし、一方で手放そうにも、買ってもらうことは困難で、貰い手さえ見つからないことも少なくありません。
こちらも、不動産屋さんをご紹介するなど手は尽くすのですが、やはりどうしようもないことがほとんどなのです。
とはいえ、記事にもありますが、土地の放棄制度は税金逃れに使われる可能性や放棄の条件など難しい問題も多いため、実現にはハードルが高いでしょう。
おそらく、土地を放棄する、という制度の成立は困難で、一方、相続の名義変更の義務化だけは成立する可能性が高いように思います。
ご自身やご両親がいわゆる「いらない」土地を持っている、という方は、今後の情報にも注意しておいてください。
まだまだこの辺りは不確定ですから、遺言書を作られたりする際には、こういった土地についてもしっかりと行き先を決めておきましょう。
そのうえで、後々トラブルにならないよう、その土地を渡そうとする相手を含めたご家族でよく話し合われることをおすすめします。
また、ご自身がお元気なうちに、その土地を買ってくれる人やもらってくれる人はいないかを探し、手放せるようなら手放してしまうことも将来に負担を残さないためにできる対策の一つです。
相続のトラブルは、「ほしい財産」についてだけでなく、「いらない財産」について勃発することもありますので、遺す立場として、きちんと対策をしておきましょう。
image by: PiercarloAbate / Shutterstock.com
『こころをつなぐ、相続のハナシ』(32019年2月14日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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