2024年前半には出生時から死亡までの戸籍謄本集めが楽になる、というニュースがありました。これが楽になると、どんなメリットがあるのかについてご紹介します。(『こころをつなぐ、相続のハナシ』池邉和美)
1986年愛知県稲沢市生まれ。行政書士、なごみ行政書士事務所所長。大学では心理学を学び、在学中に行政書士、ファイナンシャルプランナー、個人情報保護士等の資格を取得。名古屋市内のコンサルファームに入社し、相続手続の綜合コンサルに従事。その後事業承継コンサルタント・経営計画策定サポートの部署を経て、2014年愛知県一宮市にてなごみ行政書士事務所を開業。
2024年に、出生時からの戸籍謄本集めが楽になる
本籍地が遠方だったり移転していたりすると大変…
先日の日経新聞に、2024年前半にも出生時から死亡までの戸籍謄本集めが楽になるようだ、との記事が掲載されていました。
相続が起きた後の財産の名義変更には、原則として、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要になります。
これは、現在の仕組みでは、それぞれその時に本籍を置いていた市町村役場に請求をしなければなりません。
そのため、本籍地の変更(転籍)が多かった方や、遠方に本籍地を置いていた事のある方が亡くなった場合には、一苦労なわけです。
わざわざ出向かずとも郵送での請求もできるのですが、これも慣れていないと大変です。
今回のニュースは、こういった出生まで遡る戸籍や除籍が、近い将来、一か所の役場でまとめて請求できるようになりそうだ、という内容でした。
では、そもそもなぜ相続の手続きで出生まで遡る戸籍や除籍が必要になるのでしょうか。最後の戸籍謄本だけでは、なぜ手続きできないのでしょうか。
今回は、これについて解説をしていきます。
まず、相続が起きて、遺言書が無い場合には、相続人全員が話し合いをして「誰が、どの財産をもらおうか」を決めなければなりません。この話し合いを「遺産分割協議」といいます。
そして、この遺産分割協議は、法律上の相続人全員で行なう必要があり、一人でも欠けていれば、その協議は無効です。
この遺産分割協議の結果をまとめた書類を「遺産分割協議書」といい、遺産分割協議書には通常、「本当に全員納得していますよ」という証に相続人全員が実印を押し、印鑑証明書と一緒に使用します。
遺産分割協議は相続人全員が参加する必要がありますから、「相続人全員とは誰なのか」が、とても重要になるわけですね。
つまり、子どもが相続人である場合には、「子どもは本当に、ほかにいないのか」が、相続の場面においてはとても大切なのです。
ここで、「一番新しい戸籍謄本だけを見れば子どもは全員載っているのでは」、と思われるかも知れませんが、実は載っていないケースも多々あります。
Next: 戸籍謄本だけ見てもすべての相続人がわからない理由とは?
亡くなった方の戸籍を出生時までさかのぼって確認が必要
現在の戸籍のルールでは、子どもは結婚をすると親の戸籍からは抜けていきます。他にもさまざまな理由で、子は親の戸籍から抜けていくわけです。
戸籍から抜けてすぐは、「除籍」という表示とともに名前は残ります。(昔の戸籍では、「×」印がつけられました。)
しかし、その後転籍をしたり、戸籍のルールが変わったりして戸籍謄本が新しくなると、既に抜けた子供の名前は、新しい戸籍謄本には載ってこないのです。
そのため、一番新しい戸籍だけを見ても「子供が何人いたのか」ということは実はわかりません。
前述のように、相続では「誰が相続人なのか」はとても重要です。
そのため、亡くなった方の戸籍を生まれたときの分まで遡ることで、「本当に、ほかに子供はいないのか」を見ていくわけです。
これが、相続手続きで出生まで遡る戸籍や除籍が必要になる理由です。
子どもであれば、原則としてすべて相続人になります。
そのため、もちろん他家へ嫁いだ子も相続人であることに変わりありませんし、離婚した相手が親権をもち、自分とは何十年も会っていない子であっても相続人です。
現在の自分の戸籍謄本に載っていないからといって、そういった子を無視して相続の手続きを進めることはできません。
仮に隠していたとしても、書類を取得する中でわかってしまいます。
そのため、長年会っていない子がいるなどの懸念がある場合には、遺言書の作成は不可欠なのです。
なぜ出生まで遡る戸籍が必要なのかを正しく知って頂いたうえで、心配なことがある場合には、お元気なうちにきちんと対策をしておきましょう。
『こころをつなぐ、相続のハナシ』(2019年3月13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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