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保険を使った節税効果が得られない…4月10日の改定案のポイントを解説=奥田雅也

4月10日の拡大税制研究会で、国税庁から生保協会へ法人契約の生命保険に関する経理処理ルールの案が提示されました。どんな変化が起こるのか見ていきましょう。(『奥田雅也の「無料メルマガでは書けない法人保険営業ネタ」』奥田雅也)

※本記事は有料メルマガ『奥田雅也の「無料メルマガでは書けない法人保険営業ネタ」』2019年4月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:奥田雅也(おくだ まさや)
事業(医業)経営に関する生命保険・損害保険活用術に精通し、過去20数年間で保険提案した法人数は2,500社以上。現在は大阪を拠点として保険代理店経営・保険営業を行うかたわら、年間60回程度の講演や、業界紙・本などの執筆、コンサルティング業務を展開中。著書に『ここから始めるドクターマーケット入門』(新日本保険新聞社)『法人保険販売の基礎』(電子版・保険社)など。

法人契約の生命保険に関する経理処理ルールがどう変わる?

改正案のポイントをチェック

すでにご存じの方も多いと思いますが、4月10日の拡大税制研究会にて国税庁より生保協会へ法人契約の生命保険に関する経理処理ルールの案が提示されました。

この後、4月11日の午前0時ちょうどに「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)ほか1件の一部改正(案)(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)等に対する意見公募手続の実施についてがアップされ、その中に改正案が掲載されています。

※参考:「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)ほか1件の一部改正(案)(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)等に対する意見公募手続の実施について-e-Gov(2019年4月11日公開)

この改正案のポイントを私なりに整理をしながらまとめていきます。

〇定期保険と第三分野保険の取扱について同一ルールを適用する。

〇最高解約返戻率が50%以下のものは全額損金計上とする。

〇最高解約返戻率が50%超70%以下となる保険契約については、支払保険料の40%を資産計上とし、残り60%を損金計上とする。なお保険期間の40%相当期間の間のみ上記処理として、40%期間経過後は支払保険料の全額を損金処理する。さらに資産計上した金額については保険期間の75%期間を経過した後から保険期間終了までの間で均等に取り崩して損金に計上する。
※なお被保険者一人あたりの年換算保険料相当額(総払込保険料÷保険期間の年数)が20万円以下のものについては全損でも構わない

〇最高返戻率が70%超85%以下となる保険契約については、支払保険料の60%を資産計上し、残り40%を損金計上とする。
※期間の考え方は50%超70%以下と同じ。

〇最高返戻率が85%を超える保険契約については、当初10年間は最高返戻率に90%を掛けた割合を資産計上とし、残りを損金計上とする。11年目以降は最高返戻率に70%を掛けた割合を資産計上として残りを損金に計上する。なお、最高返戻率までの期間が5年未満の場合には5年間とし、10年未満の場合には保険期間の1/2相当期間までの取扱いとする。この損金割合は最高返戻率に達するまで行い、その後は(当年度の解約払戻金額-前年度の解約払戻金額)/年換算保険料で計算した割合が70%を下回る年度までこの損金割合を継続する。その後この割合が70%を下回ったのちは支払保険料を全額損金に計上し、そして最高返戻金額に達したのちは残り保険期間で按分をして資産計上額を取り崩す(※編注:初出時、一部内容に誤りがあったため、2019年4月15日に修正いたしました)。

〇本取扱に変更するために法基通9-3-4から9-3-7(2)は通達発遣日以後の契約について適用をする。

これが改正案の概要です。

さらに注目すべきなのは、個別通達の新旧対照表で、ここを精査していくと結構多くの改正点があります。

〇法基通9ー3ー5(1)(2)において第三分野商品も対象になる事が明記されたのを受けて文言が「保険金」から「保険金または給付金」という文言に変わっています。

→これを受けて某社で流行っていた法人契約の特定疾病保険金を個人で受け取るスキームも同時に規制がされたと認識しています。

〇法基通9ー3ー5の2が新設され、この中で第三分野商品については保険期間は「116歳満期」として計算するとされており、従来の「105歳」からシレっと延ばされています。

〇法基通9-3-7(2)については洗替対象外契約として従来の養老・終身・年金以外に定期と第三分野保険が追加されています。

以上が今回の改正内容です。

Next: 改正を受けて、どんなことが起こりうるのか?



解約返戻率が100%を下回ると、保険を使った課税繰延効果が得られない

2月13日に提示された方向性では「透明性や簡便性に配慮」とされていましたが、非常にややこしいルールという印象がぬぐえないですね…。

ただ、私が提唱している「実質返戻率」(※いわゆる保険設計書に記載されているウソの「実質返戻率」ではありません)に当てはめて計算をすると、みごとに解約返戻率が100%を下回ると保険を使った課税繰延効果が得られないことが判明しました…。

そういう意味では完全に保険を使った課税繰延は終わったルールになっている点は評価できるのでは?と思っています。

これにより粗雑な課税繰延しか提案ができない保険募集人は法人保険業界から強制退去させられるので良かったのかも知れません。

ただ懸念するのは、この改正により定期保険や第三分野保険を活用した課税繰延提案ができなくなる分、法基通9-3-4(3)のいわゆる養老保険を使ったハーフタックスプランを活用しようとする向きが増えることです。

ハーフタックスプランについては否認事例が多くあるのと、使う商品によってはそもそも普遍的加入に対する問題がある点と、労基法上の問題も発生するので素人が生半可な知識で提案すると大変な目にあうのも事実です。

これからしばらくは、過去に販売した全損商品の出口に関するクレームとハーフタックスプランのミスリードによるクレームが多発しそうな生命保険業界ですね。

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『奥田雅也の「無料メルマガでは書けない法人保険営業ネタ」』(2019年4月11日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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