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本当はこわい米国の失業率、雇用統計マジックに隠されて増殖するホームレスたち

米国の雇用統計について、大手メディアは「失業率のみ」を見て改善したと報道しています。しかし、これはまったく実態を表していません。景気の回復などしていないのです。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)

※本記事は、『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』2019年5月10日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

就職をあきらめた人やホームレスはカウントせず。驚きの実態は?

大手メディアは失業率「改善」と報道するが…

米国の雇用統計は、バラ色の幻想を振り撒くように、断片的なものしか報じられていません。失業率のみを、大手メディアは報道しています。

「5月3日発表の4月の雇用統計によると、失業率は3.6%と前月から0.2ポイント改善し、1969年12月以来、49年4カ月ぶりの低水準となった」。このように大喜びです。 

米国の失業率とは?

米国の雇用統計は、とてもわかりにくいものです。

失業率=失業者数 ÷ 文民労働力人口(就業者数+失業者数)×100です。

まず生産年齢人口というものがあり、これは総人口から16歳未満の子どもを除いて、さらに現役の軍人数、刑務所や病院に入所している人々を引いたものです。文民人口は、この文民労働力人口+文民非労働力人口(本当は労働可能だが働いていない人口)の合算です。

なお、文民労働力人口は、就業者人口+失業者人口の合算です。

言い換えれば、就業者人口+失業者人口+非労働力人口(労働をしない人) = 文民人口 です。 

米国政府雇用統計では、就業者人口を「Employed」、失業者人口を「Unemployed」、非労働力人口を「Not in labor force」と呼んでいます。

「就業者人口+失業者人口」の合算である文民労働力人口は、「Civilian Labor Force」と呼んでいます。

繰り返しになりますが、この文民労働力人口に非労働力人口を合算したものが、文民人口であり、それが「Civilian Noninstitutional Population」です。

失業率に「非労働力人口」は含まれていない

以下、(イ)の画像をご覧ください。

5月3日に発表された最新の4月の雇用統計です。文民人口は2億5,869万人、そのうち文民労働力人口は1億6,247万人。この文民労働力人口の中の1億5,664万人が就業者人口です。

そして、失業者人口は582万人です。これを文民労働力人口で割ると、失業率の3.6%になるのです。

つまり、非労働力人口は、失業率の分母に含まれていないのです。ここが、よくわからない影の部分になるのです。

Next: 就職をあきらめた人やホームレスはカウントせず。驚きの実態とは?



就職をあきらめた人やホームレスはカウントされない

さらに総人口は増加しますので、人数で見てもわかりにくくなっています

先程も申し上げましたように、問題は非労働力人口です。この中には、年金生活者だけでなく、妊婦なども含まれています。

それだけでなく、よい仕事が見つからず、求職活動を諦めて家にこもった人々や、ホームレスの人々も含まれています。 

失業率は減っているが、仕事がある人も減っている

そこで、文民人口を100として、就業人口、失業人口、非労働力人口の比率の変化を見ることで、雇用状況がわかりやすくなります。

過去のデータを抜き出し、文民人口を100として、横棒グラフ(ア)を作成しました。

青色棒グラフ:就業者人口 Employed Level(SL地区連銀の表現)
赤色棒グラフ:失業者人口 Unemployed Level (同上)
黒色棒グラフ:よくわからない非労働力人口 Not in labor force(同上)

上記の合計が、文民人口「Civilian Noninstitutional Population」です。

「Civilian Labor Force」は文民労働力人口で、就業者人口(青色部分)と失業者人口(赤色部分)の小計です。

2001年3月と2019年4月を比較しますと、確かに失業者人口(赤色部分)は2.9%から2.4%へ減少しています。

しかし重大なポイントは、就業人口(青色部分)の比率が、64.3%から60.6%へ減っていることです。3.7ポイントの減少だから大したことはない、と思ってはいけません。これは、仕事を持っている人の比率が減っているということです。

さらに、非労働力人口(黒色部分)は32.8%だったのが、37.2%へと増えています

2019年の就業者の非正規と正規従業員比率は、18年前と大きく異なっているのです。また、給与が安いため、複数の仕事に就業している人も少なくないのです。

失業者数(赤色)は減っていますが、安心してはなりません。非労働力人口(黒色)は増えているのです。この中には 就職をあきらめた失業者も含まれているのです。

このように、米国の公式失業率では、真の姿は見えないのです。

2019年4月の失業者人口の582万人と、非労働力人口の9,622万人の合計数は、1億204万人となります。

10年前の2009年3月の失業者人口の1,342万人と、非労働力人口の8,0895万人の合計数は、9,437万人でした。

18年前の2001年3月の失業者人口の614万人と、非労働力人口の7,038万人の合計数は、7,652万人だけでした。 

Next: 就職をあきらめた人はどれくらい?実は景気回復などしていなかった…



就職をあきらめた人はどれくらい?

では、就職をあきらめた人々の数を推定してみます。

まずは過去10年間の非労働力人口の変化を見てましょう。

以下、(ウ)のグラフをご覧ください。2009年の平均非労働力人口と、2018年の平均非労働力人口、そして、その内訳を示しています。

<2009年平均非労働力人口の内訳>

16歳−64歳の障害者は962万人、65歳以上の障害者は1,130万人で、障害者合計は2,093万人
16歳−64歳の健常者は4,057万人、65歳以上の健常者は2,015万人で、健常者合計は6,072万人

<2018年平均非労働力人口の内訳>

16歳−64歳の障害者は1,021万人、65歳以上の障害者は1,365万人で、障害者合計は2,387万人
16歳−64歳の健常者は4,425万人、65歳以上の健常者は2,759万人で、健常者合計は7,184万人

それぞれのグループの増加率は、以下のようになっています。
16歳−64歳の障害者は1.06倍、65歳以上の障害者では1.21倍に増加
16歳−64歳の健常者は1.09倍、65歳以上の健常者では1.37倍に増加

16歳−64歳のグループでは、健常者の非労働力人口が、障害者の非労働力人口よりも、増加率が高いのです。

非労働力人口とされているうちの半数は、身体が健康で働ける人だった

続いて、以下(エ)の円グラフを御覧下さい。これは2018年の非労働力人口の内訳です。

<非労働力人口9,571万人の内訳>

16歳−64歳の障害者1021万人で全体の11%、65歳以上の障害者1365万人で全体の14%
16歳−64歳の健常者4425万人で全体の46%、65歳以上の健常者2759万人で全体の29%

身体が健康で一番働くべき世代が4,500万人近く存在していて、彼らが非労働力人口全体の5割弱を占めていているのが米国の現状です。

なお、米国の15歳から64歳までの労働力人口は2019年4月時点で 2億635万人程度だと推定されます。約10年前の金融危機で、その後の労働参加率は63%以下に落ちたのですが、それ以降、ずっと62%から63%のままです。

経済の回復なんぞ、まったくしていないことがわかります。

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・失業率が低いのに、増えるのは何故?(5/22)
・ロシア新車販売:2019年4月(5/21)
・インド新車販売 2019年4月/中国新車販売:2019年4月(5/20)
・やっとキャッシュレス社会の脆弱さに気が付いたようだ/金準備の完全実地棚卸監査要求法案(5/17)
・トラック クラス8:2019年4月/4000人首切りで、黒字にします(5/16)
・豪州新車販売:2019年4月/当初の予想は甘く、実態は更に悪化したので(5/15)
・環境汚染問題でも産金量、産銀量が減るかも知れない(5/14)
・ここでも世界景気後退を示唆/米国国民の個人破産状況:2019年3月度(5/13)
・米国の失業率を見ても真の姿は見えない(5/10)
・財政規律が遵守されなければ、どうなるのだろう?(5/9)
・インドの中央銀行が金準備を本格的に増やすのではないか?(5/8)
・貿易量から見ると、現在は2008年以降で最悪の状態(5/7)
・米国新車販売実績:2019年4月/カナダ新車販売:2019年4月(5/6)
・自動車メーカーのリストラ/国際空港が語る貧困(5/2)
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2019年4月配信分
・バーゼル規制で価格上昇はあるか?(4/30)
・ドイツ銀行、合併断念の公式発表(4/27)
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2019年3月配信分
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2019年2月配信分
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2019年1月配信分
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いつも感謝している高年の独り言(有料版)』(2019年5月10日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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