日本では儲かっている会社でも平気で工場移転やリストラを行っています。まさにデフレスパイラルが起きており、世間は職業もお金もなく家にいるしかない人を「引きこもり」と表現しています。(『「ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!」連動メルマガ』児島康孝)
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インフレ懸念など10年早い。日本はデフレ対策を全力でやるべき
大恐慌の後は簡単にインフレにはならない
1929年10月、NY市場の株式大暴落から始まった世界恐慌。
アメリカの金利は、1940年頃に金利がゼロに近づきます。そして、金利が3%・4%・5%といった正常なレベルに戻るのが、1960年頃です。
実に1940年から20年かかっているのです。大恐慌からでは、約30年です。その後、1960年から1980年へとインフレの時代となります。
そして、2008年のリーマン・ショックで、再び世界恐慌が起きました。2010年頃の金利は、ゼロ近辺。
過去にあてはめますと、今回、金利が正常化するのは2030年頃となります。まだ、これから10年先の話です。
ですから、インフレを心配するのは、2030年から2050年になってからで、十分ということになります。
今、インフレを心配するのは間違い
デフレ対策が必要な今、インフレを心配するのは間違いです。
どんどん金融緩和をしないとすぐデフレ傾向になりますし、金融緩和をどんどんしても、そう簡単にはインフレにはならないのです。
実際、アメリカでは減税や短期・米国債の増発を行って緩和政策をとっていますが、インフレ率はそれほど上がってきません。
これは、なぜなのか?
重要ポイントは、「雇用」にありそうです。
Next: 工場がよそに移転するだけで、その街はデフレ・スパイラルに…
工場の海外移転がデフレを生む
これは、日常生活で考えてもわかりますが、雇用が大規模に喪失した後は、そう簡単にお金を使える状態に戻りません。
再び景気が良くなり、多くの人に雇用が行き渡るまで、10年・20年とかかります。
そこまできてやっと、インフレになるような、紙幣の流通量の過剰が問題になってくるわけです。
ですから、今の日本のように、40代・50代が大量にリストラされて収入を失ったような状態では、とても紙幣が余っているような状態にはならないわけです。
また、トランプ大統領は、アメリカ国内の工場=雇用を重視していますね。ここにグローバリストには欠けている視点があるからです。
例えば、ある工場が閉鎖され、海外に移転したとしましょう。その従業員は収入を失います。これは、グローバリストも認めていますね。
しかし、従業員は、その工場へ交通機関で通ったり、車で通っていました。電車やバスの運賃が支払われたり、ガソリンスタンドでガソリン代が支払われたり、こうした経済活動も消えてしまいます。
また、その途中で、カフェに寄ったり、レストランに寄ったり、スーパーで買い物したり、こういうことも、すべて失われてしまうのです。
工場が移転されなければ、近くに家を買っていたかもしれません。家を買えば、家具やカーペットも買い…というように、経済活動が循環するわけです。
しかし、工場が消えれば、徐々に途中の店も消え、家も買われなくなります。どんどん、悪くなるばかりです。
これがデフレ・スパイラルの一端です。
リストラがデフレ・スパイラルを引き起こす
これは、工場に限りません。
会社でリストラが行われ、従業員が減ると、近くの駅へ寄る人も減り、そこで何かを買うことも、減るということです。
ですから、工場の閉鎖や会社のリストラは、そこだけではなく、その周辺にデフレ・スパイラルを引き起こすわけです。
さらに、その従業員の子どもの学費が払えないとか、子ども服が買えないとか、従業員の家族間でも、デフレ・スパイラルは拡大します。
ですから、トランプ大統領が、懸命になって、工場の海外移転をやめさせようとしたり、しているのは、実は、波及効果が大きいのです。
Next: 失業者を「引きこもり」と呼んでいる?日本にデフレ・スパイラルが蔓延中
失業者を「引きこもり」と呼ぶ日本
日本では、儲かっている会社でも、平気で工場移転やリストラを行っています。
トランプ大統領のように懸命にやめさせようとする政治家は、日常生活では見たことがないです。
そして、日本を見ますと、こうした負のデフレ・スパイラルが、いたるところで顕在化しています。工場の海外移転、商業施設の閉店など、これらが2次波及・3次波及しています。
家族間でのデフレ・スパイラルも波及・拡大していますが、最近ニュースでよく聞く「引きこもり」という用語は、為政者にとって実に都合の良い言葉だと感心しました。
というのは、ニュースで「失業者」「無職」と連呼すると、経済政策の失敗を責められるからです。
しかし、「引きこもり」というと、個人の問題になり、お金が無くて家にじっとしている人でも、すべて個人の資質問題にすりかえられるわけです。
「引きこもり」と言うのと、「失業者」「無職」と言うのは、まったくイメージが違います。ニュースでアナウンサーが「失業者が」「無職が」と言うのとは、大違いですね。
デフレ・スパイラルがあふれている日本
話は戻りますが、工場閉鎖や商業施設が閉店した分は、どこに行くのでしょうか?
これは工場の移転先、つまり新興国や、その新興国で開店する商業施設へ行くわけです。こちらは、雇用増加のプラスのスパイラルが生じるわけです。
ですから、日本も工場や商業施設の閉鎖を食い止めないと、どんどん景気が悪くなります。いえ、すでに悪くなっています。
つまり、インフレ率が上がるまでもっと紙幣を配らなければ、デフレは続いたままで、日本の経済力も衰退するばかりです。
よく言われる生産性や効率性は、それほど重要なポイントではありません。
海外に行ってみればわかりますが、日本の工場や商業施設よりももっと低いレベルの国はいくらでもあるのです。もちろん、向上心や改善・改良は良いことですが、それを追求してリストラや効率化を究極的に進めても、多くの失業者と、破格の報酬を得るCEOが現れるだけ。それはすでに実証されています。
それさえも、国力の衰退、国民の貧困化が全体に及ぶと、リストラ後の企業もデフレ・スパイラルに巻き込まれます。
最近の日本はこの段階にあり、リストラした大企業でも、業績が悪化しているところがかなり出てきています。
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インフレ率や為替レートが「適正度」を示す
今、インフレを心配する必要があるのか否か。紙幣の量が多すぎるかどうかは、インフレ率や為替レートで「判定」できます。
経済政策の当局者がどのように言い、マスコミがどのように報じても、インフレ率や為替レートは正直です。
インフレ率がゼロ近辺の日本では、紙幣の流通量が不足しています。そして、紙幣が不足していれば、品薄感から円高になります。
逆に、1970年代にあった狂乱物価のような時代には、紙幣の量が多すぎるので、吸収して減らす必要があります。
ですから、インフレ率をみれば、経済政策が正しいかどうかはすぐわかります。
最近、アメリカのFRBの当局者が、アメリカのインフレ率が思ったように上がってこないので、金融政策の「再点検」を始めています。
FRBは、インフレ率を重要視して気にかけていますから、日本ももっとインフレ率を重視し、早く2%や3%といった「最低体温」に戻さなければなりません。
つまり、狂乱インフレを恐れて金融政策で「引きこもり」をするのは大きな間違いであり、経済の「最低体温」まで上がるように、金融緩和、紙幣の流通量の増加を急いで行う必要があります。
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『「ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!」連動メルマガ』(2019年6月3日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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