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表に出せない中国の厄介な問題~習政権に入り込んだイスラエルのモサド

市場は中国の経済指標に一喜一憂していますが、中国はより厄介で大きな問題を抱えています。習政権は新疆ウイグルのイスラム系民族の扱いに苦慮しており、政権内部に入り込んだイスラエルの諜報組織モサドと係わりのある共産党幹部がこれを刺激しています。(『マンさんの経済あらかると』)

デフレ圧力、イスラム国、モサド~中国が抱える大問題の本質

経済成長率の低下と失業率の上昇

東京市場は最近、中国の動き、指標に一喜一憂しています。年初以来、中国不安が日本株売りの材料にされがちでした。このため、人民元の下落に歯止めがかかり、あるいは上海株が反発すると、日本株にも安堵の買いが入るようです。

しかし、中国が抱える問題の本質は、実は表に出ないところに多く潜んでいます。

まずGDPについて2つの問題があります。1月19日の発表で、昨年10-12月期のGDPは前期比1.6%と7-9月の1.8%を下回り、前年比では大方の予想通り6.8%成長と、7-9月期の6.9%から小幅減速となりました。2015年通期では6.9%成長と、25年ぶりの低成長となりました。当局は不動産、株価の低迷も少なからず影響したと説明します。

上海総合指数 週足(SBI証券提供)

GDPに関わる2つの問題のうち、まず1つが、これで失業率が上がったことです。中国政府は、これまで公式には失業率が4%前後で安定しているとしてきました。

ところが、今回、国家統計局の調査によると、失業率は5.1%前後と発表されました。調査が一貫していれば、昨今の成長率のもとで失業率が上昇したことになります。

しかし中国では約35年にわたる一人っ子政策を続けてきたため、生産年齢人口が増えなくなり、雇用吸収に必要な成長率は5%か6%でよくなったといわれます。

中国はこのところ7%前後の成長を確保しているので、本来なら失業率は下がることはあっても、上がることはまずないはず。

それにも拘らず失業率が4%から5%強に上昇したということは、実際の成長率が7%でなく、世情言われるように3%か4%がせいぜい、ということか、はたまた4%という公表失業率が嘘だったか、ということになります。

どちらに転んでも、中国にとっては「不都合な事実」で、表に出すわけにはいきません。

GDPにまつわるもう1つの問題は、固定資産投資の伸びが、中国の成長減速にそぐわない高い伸びを続けているため、供給過剰と言う中国の基本的な問題が解決せず、むしろ不均衡が一層拡大していることです。

「加速度原理」の考え方が答えを得る大きなヒントになります。少し説明しておきましょう。

中国経済はつい先ごろまで10%以上の成長をしていました。年14%成長という高成長もありました。それが今7%以下に減速しています。

そこで問題は、生産設備(資本ストック)の増加テンポも、成長期待に応じて調整する必要があることです。GDPが14%成長なら生産設備(資本ストック)も14%増加させ、GDPが7%成長に落ちれば、生産設備の伸びも7%で良いわけです。

ここで問題となるのは、生産設備(資本ストック)の伸びを14%にするのに必要な設備(純)投資と、生産設備の伸びを7%増やすのに必要な設備純投資を比較すると、後者は前者の半分で良いことになる点です。

例えば資本ストックが100兆元のとき、これを14%増やすのに必要な設備投資は14兆元ですが、7%で良ければ7兆元になります。

Next: 中国が苦しむデフレ圧力の正体/習政権に入り込んだイスラエルのモサド



中国が苦しみ、世界にばらまかれるデフレ圧力の正体

つまり、成長期待が急速に低下すると、それに合わせたストックの調整によって、設備投資というフローの数字が加速度的に大きくなったり小さくなったりします。中国が14%成長から7%成長に落とす過程では、設備(純)投資は、増加率ではなく絶対額が半分になる必要があります。つまり、投資額は50%減で良いことになります。

ところが、昨年の中国のGDPは6.9%に減速したのに、固定資産投資は10.0%の増加となりました。増加率は確かに減速していますが、絶対投資額が昨年より10%も大きいために、生産設備の伸びは相変わらず10%以上の高成長に見合った増加を続けている可能性があります。

需要が7%以下なのに、設備が10%以上のペースで拡大を続ければ、一層供給過剰が広がります。

これが中国にとって大きなデフレ圧力になっており、現に生産者物価が46か月連続の下落を続け、その歯止めもかかっていません。

最近では在庫の置き場がないほど在庫が積みあがっていると言います。同時に世界に鉄鋼など供給過剰の製品を安く輸出し、世界にデフレをばらまいています。輸出圧力がかかり、輸入を抑制すれば貿易黒字が高まります。

さりとて、供給力を抑えるために設備投資を半分にすれば、GDPが2ケタのマイナス成長となって、社会不安、政治不安が高まります。いっぺんに調整できないまでも、せめて設備投資の伸びをゼロにして、その間個人消費や輸出で稼ぐしかありません。

今の中国GDPは、成長を維持したいのか、固定資産投資の調整ができておらず、不均衡がますます拡大する状況です。

もう1つの大問題、習政権に入り込んだイスラエルのモサド

次に表に出せない難題は、西部の新疆ウイグル地区のイスラム系民族と、イスラム国の扱いです。

新疆ウイグルの西側周辺には、トルクメニスタンなど、トルコ系イスラム民族の不安定国家が多数控えています。彼らの多くはスンニ派で、旧ソ連を離れてからは、国家としての統制が十分取れていません。ここにイスラム国のメンバーが多く入り込んでいるようです。

習政権はこのイスラム系民族の扱いに苦慮しています。この少数民族を弾圧すれば、その背後にいるイスラム民族をも敵に回すことになります。イスラム国のテロも予想され、政府もその警戒を強めています。

逆に、その関係を緩和し、資金面で支援をすると、その資金が結果的に背後にいるイスラム国の手にわたる可能性もあります。

更にまた、イスラエルの諜報組織モサドと係わりのある共産党幹部が習政権に入り込んでいます。しかも、日本の官房長官に相当する要職についています。

このモサドがときにイスラム民族を刺激し、あるいは彼らに扮してテロを仕掛けることもあるようです。習政権がこの扱いを誤ると、政権の体制を揺るがすほどの不安定要素になりかねません。

市場は中国指標に一喜一憂しますが、中国の抱える問題は、より厄介で大きな問題ゆえに、一朝一夕には解決できません。

裏を返せば、見た目の安定化、解決策は、一時的なもので、時間をかけてこの困難を切り抜けるしかなく、その間は悪い指標や材料がいつ飛び出してもおかしくありません。

【関連】中国発「逆オイルショック」はこれからが本番だ~高まる世界デフレリスク

マンさんの経済あらかると』(2016年1月20日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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