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トランプに挑戦する候補者はだれに?2020アメリカ大統領選の前哨戦がスタートした=真殿達

長丁場のアメリカ大統領選挙、まずはトランプに挑戦する民主党の候補者選びが始まった。名乗りを上げるものが多すぎ、3回目の討論会が9月に予定されている。(『投資の視点』真殿達)

筆者プロフィール:真殿達(まどのさとる)
国際協力銀行プロジェクトファイナンス部長、審議役等を経て麗澤大学教授。米国のベクテル社、ディロン・リードのコンサルタント、東京電力顧問。国際コンサルティンググループ(株アイジック)を主催。資源開発を中心に海外プロジェクト問題への造詣深い。海外投資、国際政治、カントリーリスク問題に詳しい。

2020年のアメリカ大統領選に向け、左傾化する民主党

絞り込みが始まる民主党候補

長丁場のアメリカ大統領選挙が始まった。まずはトランプに挑戦する民主党の候補者選びである。20名を超える候補が名乗り出て、既に2夜に及ぶ討論会が2回行われた。

名乗りを上げるものが多すぎて一晩のテレビ番組ではカバーしきれなかったのである。第3回目の討論会は9月12-13日に予定されており、そこでは選挙資金と推薦人数で絞り込みが行われ参加資格者はほぼ半数に減るとみられ、来年初の予備選挙開始頃には資金が底をつく候補が撤退し、さらに半減すると予想されている。本選挙に向けての淘汰が始まろうとしている

それにしても急進左派(超リベラル)が目立つ。4年前、最初は泡沫候補扱いされながらヒラリー・クリントンをギリギリまで追い詰めた、バーモント州選出上院議員バーニー・サンダースが再登場している。

あの時に社会主義者と自称したバーニー・サンダースが穏健派と感じられるほどに、候補者たちは大きな政府を掲げる。国民皆保険、違法移民への年金や社会保険付与容認、大学授業料支援、銃規制、厳しい環境規制導入等々到底実現できそうもない左派のアジェンダが繰り広げられ、数少ない中道候補の前副大統領バイデンも言葉の上では左旋回気味である。

アフガニスタンに従軍したばかりかハーバード大学出身でローズ奨学生としてオックスフォードでも学び、内外の政策に明るく弁も立つピート・ブデイジッチ(インデイアナ州サウスベンド市長)の主張は中道左派に入るかもしれないが、「同性愛者の大統領候補」との事実は、主張を越えて超リベラルなイメージを与えている。

さまざまな調査機関によると、民主党支持者のほぼ6割が中道候補を望んでいる。今年11月に77歳になるオールドタイマーの元副大統領バイデンが全体のほぼ3割の支持を得て、一頭抜けているのは、この中道候補期待を反映している。ところが候補者が並び立つと左派、それも相当尖った候補のオンパレードになっているので、候補者選びが中道候補に収斂していくのかどうか定かではない。

選挙資金集めでは、サンダースとブデイジッチが大きくリードしている。資金量が支持基盤の強大さに比例するとみなされるので、そこからサンダースとブデイジッチが予備選挙までは勝ち残る可能性が高い。

黒人(インドとジャマイカのハーフ)でカリフォルニア選出上院議員のカマラ・ハリスも黒人票や女性票、マイノリティ票、何よりも巨大人口を擁するカリフォルニアを地盤に予備選挙までは勝ち残るとみられている。

サンダースよりも激しいリベラルとして注目されるのが、マサチューセッツ州上院議員かつハーバード大学教授のエリザベス・ウォレンで、サンダースと同じ地盤を食い合う。今はバイデン30%、ウォレン、サンダース各15%、ブデイジッチ8%、ハリス7~8%といった数字が独り歩きしている。支持率は、テレビ討論やどんどん俎上に乗ってくる過去のスキャンダル等によって動くので、現下の数字はまだあてにならない

Next: 民主党が左傾化したのは、オバマの再選戦略が要因



左傾化はオバマ再選戦略以来のこと

民主党が左傾化したのは昨日今日に始まったことではない。意外に思われるかもしれないが、オバマが大統領再選に臨んだ時に用いた支持基盤の徹底的掘り起こし策が始まりだったといえる。

イラク介入に手を焼いた挙句リーマンショックに襲われた、惨憺たるブッシュ政権の幕切れから救世主のように登場したオバマには大きな期待が寄せられた。ところが、就任後半年もせぬうちに支持率が激減し、最初の中間選挙に惨敗すると法案はことごとく議会を通らなくなり、多くの問題を大統領令で何とか切り抜けることになった。

それでも、共和党支持者から総スカンを食らい続け、民主党支持者にのみ支えられて2期目の選挙に臨んだオバマの戦略は見事だった。全国をくまなく回るよりも、伝統的に民主党の指示が厚い地域、黒人、マイノリティ、LGBT等の票を掘り起こしに注力し、強くもない共和党候補のミット・ロムニーをかわすことに成功した。

2期目の政策は選挙戦略に呼応し、一段と左傾化した。オバマ・ケアがその典型で徹底的な弱者救済的リベラル政策に走った。同じ民主党政権でもビル・クリントン時代とオバマ時代は、プロ・ビジネスvsアンチ・ビジネスという点でも大きく異なっていた。厳しい環境規制がその好例である。

オバマ政権後の大統領選挙で、地盤の徹底的掘り起こし戦略を踏襲したのは、ヒラリー・クリントンではなくドナルド・トランプだった。長い大統領選挙期間を通じてモーメンタムを作るには全国的支持の広がりよりも、そこそこの広がりを持つ地盤での熱狂的支持の広がりの方が、創り出しやすく、しかも集中力を生みやすい。

投票に結び付くかどうかわからない万人受けする戦術よりも、確実に投票する自分の支持母体を徹底して耕すことで、全国的広がりを持つ候補を破ることができた。

民主党の極端すぎる左傾化はこうした実績と無縁ではない。ならば、左傾化が「分断するアメリカ」を象徴しているといえるのかどうか。選挙で勝つために観念的な分断を創り出す力が働いているのではないのか。問題は、それでトランプに勝てるのか、である。

トランプがツイッターで揶揄するSleepy Joe(ジョー・バイデン)がこれまでのところ民主党のトップランナーでいることは、中道候補でなければ選挙に勝てないという気持ちを多くのアメリカ国民(民主党支持者)が抱いているためだ。もう一人の中道候補LGBTのブデイジッチはこれからどんな戦いぶりを示すのか。また、似た者同士のサンダースとウォレンのどちらが先に撤退するのか。

勝ち残りがもう一方の支持基盤を併せ、バイデンやブデイジッチやハリスを破りノミネーションを受ける可能性はあるのか。まだまだ序盤とはいえ、淘汰に至る適者生存の意味するところは深長である。

※ご注意
投資判断はご自身で行ってくださるようお願いいたします。当講座は投資判断力を強化することを目的とした講座で投資推奨をするものではありません。当講座を基に行った投資の結果について筆者及びインテリジェント・インフォメーション・サービスは責任を負いません。

image by : >Evan El-Amin / Shutterstock.com

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億の近道』(2019年8月19日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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