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G20思惑からの株高は反動に要注意 所詮はノイズ、期待せず失望せず=馬渕治好

2/26(金)~2/27(土)のG20財務相・中央銀行総裁会議で、大きな材料は出ない見通し。事前に期待するのもおかしいと考えますし、事後に失望するのもおかしいと思います。もし、今週にG20を口実とした株高・外貨高が起これば、来週その反動が出る恐れがあります。ただ、長期的な相場の流れから考えれば、ノイズ(雑音)に過ぎません。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)

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方向感の出にくい今週、G20を口実とした株高・外貨高に要注意

まずは先週(2/15~2/19)の世界経済・市場を振り返って

世界的に株価が反転上昇したが、日本株などに上値の重さも目立った

【まとめ】
先週は、世界的に株価が上昇気味で推移しました。また、外貨相場(対円)は、週末にかけてやや円高方向に振れましたが、一時のような円高一本槍の商状ではありませんでした。とはいうものの、特に日本株については、上値の重さが目立ちました。
国際商品市況も、総じて落ち着いた動きでした。ただし、サウジアラビアとロシアの生産量を巡る会談については、減産合意に至らなかったため、一時は原油価格の下振れを生じる局面がありました。

【詳細】
先週は、世界的に株価が上昇気味の推移をみせました。そうした相場付きを見るために、まず、先週の世界の主要な株価指数の騰落率ランキングをみてみましょう。

上昇率トップ10は、上昇率の高い順に、ベネズエラ、TOPIX、ルクセンブルグ、日経平均、デンマーク、ギリシャ、アイルランド、フランス、フィンランド、スウェーデンでした。

日本株が上位に入っていますが、これは2/15(月)の大幅な反発が寄与している形(あるいは、騰落率を対先週末比で計算していますので、前週末2/12(金)の大幅下落が逆に先週の上昇率を押し上げた形)であって、その後の日本の株価は勢いを失いました。たとえば日経平均株価は、2/16(火)以降は16000円を出たり入ったりの推移を続けました。

こうした日本株の上値が重い動きについては、最近の乱高下で、投資家心理が慎重化し、買いも売りも進めにくい状況に陥っているためではないかと推察されます。

一方、先週株価指数が下落した国は3か国しかなく、パキスタン、スリランカ、インドネシアと、いずれもアジア諸国でした。株価が上昇はしましたが、南ア(ワースト4位)、メキシコ(10位)も、冴えない展開でした。

外貨相場については、週初に外貨高・円安が進んだ後、週末にかけては円高方向に揺り戻しがありました。この円高への戻りも、日本株の上値を抑える要因になったと考えられますが、特に円高をもたらすような材料があったわけではなく、やはり方向感が見出しにくいなか、ちょっとした売買で相場が振れているのだと思われます。

ここで外貨相場(対円)の騰落率ランキングをみると、週末にかけての円高への振れにより、対円で下落した通貨数(円高になった通貨数)がやや勝りますが、極端に円高だった、というわけではありません(ただし、騰落率の計算上、円高が進んだ前週末(2/12、金)と比べている点は、割り引いて考える必要があります)。

騰落率ランキングベスト10は、上昇率の高い順に、メキシコペソ、南アランド、コロンビアペソ、ロシアルーブル、チリペソ、中国元、カナダドル、ノルウエークローネ、豪ドル、台湾ドルで、資源国が多く含まれています。これは、全般的な国際商品市況の持ち直しによると考えられます。

一方ワースト10は、下落率の高い順に、韓国ウォン、ブラジルレアル、アルゼンチンペソ、スイスフラン、アイスランドクリーナ、英ポンド、ルーマニアラウ、ユーロ、ブルガリアレヴ、デンマーククローネで、韓国はウォン安阻止に追われる事態となっています。また、欧州通貨が多く含まれていることが目立ちます。この背景は、英国で6月にEU離脱を問う国民投票が行われることとなり、市場が英国のEU離脱リスクを意識したためでしょう。

先週は原油などのエネルギー価格や、銅などの工業用原材料価格が、総じて堅調に推移しました。ただ、原油先物価格が、2/16(火)から2/17(水)にかけて、上下に振れる局面がありました。

これは、まず2/16(火)にサウジアラビアとロシアが、生産量の調整を巡って会談する模様だ、との報道が流れ、協調して減産するのではないかという期待が広がって、原油価格が上振れをみせました。最終的には、ベネズエラとカタールも加わっての4か国協議となりましたが、各国の生産量を今年1月の水準から増やさない(他の原油生産国が同調するという前提条件付き)といった合意にとどまり、増産しないものの減産もしないという結果になったため、今度は原油価格が反落しました。

ただ、中長期的には減産に向けて進んでいくのではないか、との観測があり、それはこの後で述べます。

この他の材料としては、2/15(月)から春節休暇明けとなった中国株式市場が、休場であった一週間における、他諸国の株価下落との「周回遅れ」を一気に取り戻し、大暴落をみせるかもしれない、と警戒していました。

しかし実際には、滑り出し月曜日の中国株価下落は限定的で、その後も落ち着いた推移となったため、「日本も中国のように、春節で一週間、場を閉めていた方がよかったのではないか」という冗談も聞こえます。

経済統計では、2/15(月)発表の日本のGDP統計は、10~12月期の実質経済成長率(前期比年率ベース)が1.4%減と、市場予想の0.8%減を下回り、見込まれていた以上に悪い内容となりました。今年1~3月分も、このまま株安・円高が続くとマイナス成長に陥るとの警戒が広がっていますが、この日の日本株は、前週末からのリバウンドが勝る展開となりました。

Next: 【展望】G20注意点/材料乏しく、目先は方向感が現れにくい



今週(2/22~2/26)の世界経済・市場の動きについて

材料が乏しいなか、目先は方向感が現れにくい展開か

【まとめ】
今週は、市場を大きく動かしそうな材料が乏しく、方向感の現れにくい市場動向を予想します。
ただ、2/26(金)~2/27(土)に、G20財務相・中央銀行総裁会議が開催されます。ここで何か策が出るかもしれないので、株売り・外貨売り(円買い)を仕掛けにくい、という声があり、そのため世界市場に膠着感が強まるかもしれません。しかし、もともと何も大した策は出ないので、来週のことになりますが、短期的に市場に失望が出る懸念が残ります。

【詳細】
今週は、市場動向に大きな影響を与えそうな材料が少ないです。米国では住宅関連統計が多く発表されますが、それ以外に主要国で注目される経済発表は余りありません。この点から、今週の世界市場は、方向感が明確には現れにくいと予想します。

日本では2/26(金)に1月の消費者物価が発表される予定で、いわゆるコアCPI(消費者物価から生鮮食料品だけを除いたもの)前年比は、昨年12月の0.1%上昇から、プラスマイナスゼロに低下すると予想されています。それはどうせエネルギー価格下落の影響であって、景気が良いとか悪いとか、日銀の政策が効いているとか効いていないとか、騒ぐようなものではないのですが、騒ぎたい人はどうあっても騒ぐと思います。

G20(主要20か国)財務相・中央銀行総裁会議が、2/26(金)~2/27(土)に、上海で開催されます(中国が議長国です)。ここで、最近の市場波乱などを受けて、協調した策が打ち出されるのではないか、とすれば、株を売りこんだり円買い(あるいは新興諸国通貨売り)を進めたりはしにくい、という声が聞こえます。

もちろん、最近の市場波乱を注視しているとか、新興諸国経済の動向を注意深く見守っている、などの声明は出るでしょうが、それだけでしょう(それ以上何もやりようがありません)。

また、中国経済減速に対する懸念について、議論はなされるでしょうが、中国は議長国として、自国の経済政策をああだこうだと言われることは極力避け、議論が自国に集中するのをごまかそうと全力を尽くすでしょう。

このように、G20で大したことはもともと出ないのですから、事前に期待するのもおかしいと考えますし、事後に失望するのもおかしいと思います。それでも、勝手に期待して勝手に失望する向きや、それを煽る専門家、さらにはそれにつけこもうとする投機筋は、どうやっても騒ぐと懸念します。

もし、今週にG20を口実とした株高・外貨高が起これば(あくまでも実体経済の改善や投資心理の好転ではなく、G20が口実にされた場合です)、来週その反動が出る恐れがあります。ただ、長期的な相場の流れから考えれば、ノイズ(雑音)に過ぎません。

Next: 世界経済・市場の注目点~サウジ・ロシア会談に対する海外の見方



世界経済・市場の注目点

サウジ・ロシア会談に対する海外の見方

1ページ目で述べたように、2/16(火)に開催された、サウジアラビア・ロシアを含む4か国会談は、原油の減産合意に至らなかったため、市場は短期的に失望をもって迎えました。

ただ、筆者が中東筋から聞いたところでは――


馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2016年2月21日号ではこの続きとして、原油減産のゆくえについて、この先のスケジュールも踏まえて詳しく展望しています。「原油下落=株価下落」の構図に変化の可能性も?

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【関連】日経平均は予想EPSとドル円の変化に注意を~「理論株価」最新データ分析=日暮昭

馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2016年2月21日号)より
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