マネーボイス メニュー

年金、あと30年で枯渇へ。生涯現役を強制される若者にもう老後はない=矢口新

5年に1度の「年金財政検証結果」が公表された。日本経済のマイナス成長が続き、労働参加も進まなければ2052年度には国民年金の積立金が枯渇するとある。(『相場はあなたの夢をかなえる —有料版—』矢口新)

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる —有料版—』2019年8月28日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

「痛みを分かち合う」? 政府の失敗を国民に押し付けているだけ

今の高齢者がもらえる年金、現役世代男性の手取りの61.7%

厚生労働省が公表する5年に1度の「年金財政検証結果」では、年金の所得代替率が61.7%に低下した。所得代替率とは、厚生年金加入の現役世代男性の平均手取り収入に対しての、2019年現在の年金支給額である。

以下に要点をまとめた。
参考:将来の公的年金の財政見通し(財政検証)- 厚生労働省

「2019年現在の年金支給額は、現役世代男性の平均手取り収入に対して61.7%(所得代替率)と、『マクロ経済スライド』制度により5年前の62.7%から低下した。この制度は、高齢化による現役世代の負担増を緩和するために高齢者の年金支給を抑制する制度である。

所得代替率は経済成長率が横ばいで、実質賃金の伸びが1%以下の状況が続くと2058年度には44.5%にまで低下する。

この場合、50%の給付水準を維持するためには現役世代の保険料率の引き上げなどの対策が必要になる」。

マイナス成長が続けば、2052年に積立金が枯渇する

「それでも14年の財政検証に比べると、わずかに改善した。類似した経済前提のケースで所得代替率が42%まで落ち込むという結果だった。

5年間で2.5ポイント上昇したのは、女性や高齢者の就業率が当時の想定よりも上昇し、年金制度の支え手が増えたためだ。

しかし、介護の必要度が高まる75歳以上の高齢者が増えていくのを踏まえると、過去5年に進んだような高齢者の労働参加もいずれ限界を迎える。検証よりも厳しい未来が待ち受ける可能性も否定できない。

一方、経済成長と労働参加が進み、実質賃金が1%超伸びるケースを前提にしても、2040年代後半に年金財政の均衡が図られる時点で、50.8~51.9%に低下する。

また、厚労省が用いた6つの経済前提ではどれも実質賃金が増えるが、過去5年間で実質賃金が増えたのは16年度の1年だけだ。日本経済のマイナス成長が続き、労働参加も進まなければ2052年度には国民年金(基礎年金)の積立金が枯渇する」。

Next: 月収5.8万円以上ならパートやバイトでも年金を負担?



現在20歳の若者は8年9ヶ月長く働く必要がある

「保険料支払い対象者を月額5.8万円以上の収入を得ているすべての雇用者、およそ1,050万人拡大すると、財政均衡時点が早まり、所得代替率は4%超程度引き上げられる。基礎年金支払い年数を現在の60歳から65歳までに延長すると代替率は6%超上昇するとの試算も示した。

現在20歳の若者が今年65歳の人と同じ水準の年金を受け取るには、68歳9カ月まで働いて保険料を納め、年金をもらい始める年齢も同様に遅らせる必要がある。今年65歳になる高齢者と比べて働く期間を8年9カ月長くすれば所得代替率61.7%が維持できる。

今年で40歳の人は67歳2カ月まで働き、それまで年金の受け取りも遅らせれば、今の65歳と同じ年金水準になる。

一方で、国民年金のみで見た所得代替率は2019年現在36.4%。現在、国民年金のみの加入者が保険料を40年間支払って受け取る年金額は月当たり約6万5,000円となっている。

日本の高齢者の所得のうち、労働所得は38.7%を占める。米国の35.2%を上回り、日本の高齢者就業は世界でも進んでいる。

一方、配当など資本所得の占める割合は10%で、米国の13.9%やフランス17.2%、英国12.1%を下回る」。

月収5.8万円以上ならパートやバイトでも年金を負担?

年金保険料支払い対象者を拡大するというが、

「国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入して、社会全体で支え合う公的な制度です。現役時代に被保険者として加入して、月々の保険料を納めることにより、将来、自分自身の生活を保障する年金を、生涯にわたって受け取ることが出来ます」

とあり、満額を受け取るためには、学生でも無収入でも、「定額保険料 1カ月16,340円(平成30年4月から)」を納める必要がある。

従って、ここで述べられている新たな対象者とは、厚生年金保険・健康保険(社会保険)の支払い対象者だ。つまり、現在「所定内賃金8.8万円以上、雇用期間が1年以上の見込み、学生でない」などとされている加入資格を、月額5.8万円以上の収入を得ているパートやアルバイトを含むすべての雇用者に拡大するということだ。

Next: 年金だけじゃない?健康保険料、介護保険料も制度存続の危機へ



「痛みを分かち合う」の茶番

こうした危機的な状況は年金制度だけではない。健康保険料介護保険料なども、引き上げなければ制度そのものが成り立たない。

財政も同じだ。それで、10月からは消費税率が引き上げられる。

これを政治家は「痛みを分かち合う」ためだと言うが、国の経済運営のツケを国民に押し付けているのだ。

そもそもの発端は、経済成長を止めるような税制にしたことだ。分かち合うのは痛みよりも、喜びや富の方がいい。

続きはご購読ください。初月無料です

【関連】年金支給は完全終了へ。史上空前の運用大失敗で2000万不足どころの騒ぎじゃない=今市太郎

【関連】日本で急増する「住所を喪失」した人たち~車上生活、漂流女子、8050問題が行き着く地獄=鈴木傾城

<初月無料購読ですぐ読める! 8月配信済みバックナンバー>

※2019年8月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

・格差拡大に脅える富豪(8/29)
・痛みを分かち合う政策(8/28)
・Q&A:信用取引(8/27)
・自社株買いが多い理由(8/26)
・目から鱗「疫病と世界史」(8/26)
・目から鱗の世界史 ー 南米の征服者(8/22)
・目から鱗の世界史 ー 日露戦争(8/21)
・皆既日食という奇跡(8/20)
・目から鱗の世界(8/19)
・株式市場の乱高下(8/19)
・「キャッシュならある」、けれども(8/13)
・私のポジティブな気づき(8/8)
・Q&A:トレードがうまくいかない(8/7)
・「ねらわないと悔いが残る」(8/6)
・フォーブス、ポジティブな気づきをくれた10本の記事(8/5)
・自助努力は欠かせない(8/5)
・マイナス金利と、間接金融の終焉(8/1)
→いますぐ初月無料購読!

image by:beeboys / ShutterStock.com

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる —有料版—』2019年8月28日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

【関連】ミニストップ、193店閉店で経営悪化が止まらない。もう取り返せない4つのしくじり=栫井駿介

【関連】損保ジャパン4000人削減で最悪の労働搾取モデルが完成。業務自動化で年収250万減へ=今市太郎

相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』(2019年8月28日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―

[月額880円(税込) 毎週月曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
ご好評のメルマガ「相場はあなたの夢をかなえる」に、フォローアップで市場の動きを知る ―有料版― が登場。本文は毎週月曜日の寄り付き前。無料のフォローアップは週3,4回、ホットなトピックについて、より忌憚のない本音を語る。「生き残りのディーリング」の著者の相場解説!

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。