ソフトバンク傘下のヤフーが12日、「ZOZOタウン」を運営するZOZOへのTOBを行います。今回は、このようなM&Aのケースを会計的視点から見てみましょう。(『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』柴山政行)
ヤフーがZOZOを買収、国内EC首位が視野に
ヤフーは、ZOZOの発行済株式の50.1%を上限に買い付け
ソフトバンク傘下のヤフーが12日、衣料品通販サイト「ZOZOタウン」を運営するZOZOへのTOB(株式公開買付)を行い、M&A(合併・買収)を行うことで合意し、都内で記者会見を行いました。
ヤフーの河辺健太郎社長は、2020年代前半に電子商取引(EC)を国内ナンバーワンにするという目標が現実的になってきた旨コメントしました。
具体的には、ZOZOの発行済株式の50.1%を上限に買い付け、買収額は最大で4,007億円に上るそうです。国内のネット通販企業の買収では過去最大規模とのことです。
ZOZOの創業者で36.76%の株式を保有している前澤友作氏は、12日付で社長を退任し、TOBを受けて30.37%(92,726,600株)を売却することになりそうです。
1株2,620円×92,726,600株=24,294,369,200円が売却代金です。
数字のけた数が半端ないです。まさに「ケタちがい」(笑)。2,429億円もの売却額です。個人でこのお金が入るのですから(税引き前ですが)、庶民からすると驚愕ですね~。
さて、これに関して会計的な視点で見てみると、ヤフーによるZOZOの株式取得による子会社化と捉えることができます。
当期末のヤフーの決算書では、連結財務諸表の一部として、ZOZOの資産・負債が合算されることになります。
また、買収後にZOZOが稼いだ売上やかかった費用、そして結果としての利益のうち、持分比率に応じてヤフーの損益計算書に加算されるのですね。
公開買付けは10月に開始されるそうです。
連結決算の超入門的な話をしますと、企業買収が完了して、子会社となった日に、子会社の資産と負債を合算した連結貸借対照表を作ることになります。
最もシンプルなケースで、A社がB社の発行済株式を60%取得したという想定で、かんたんに計算例を見てみましょう。複雑にならないように、のれんの発生がないことにします。
(1)A社は、B社の発行済株式の60%を120億円で取得した。A社・B社の買収時の個別貸借対照表は次のとおり。
※買収前のA社の個別貸借対照表
******A社
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諸資産600|諸負債300
******|純資産300
(借方)B株式120(貸方)諸資産(現金預金)120
※B株式…「B社株式」「子会社株式」のこと
※買収時のA社の個別貸借対照表
******A社
ーーーーーーーーーーーーー
諸資産480|諸負債300
B株式120|純資産300
******B社
ーーーーーーーーーーーーー
諸資産350|諸負債150
******|純資産200
ここで、A社が所有する「B株式」120は、B社の貸借対照表・貸方(右側)の純資産200のうち、60%に相当する120と重複します。
(A社とB社の単純合算貸借対照表)
******A社
ーーーーーーーーーーーーー
諸資産830|諸負債450
B株式120|純資産500←(A300+B200)
よって、B株式120とB社の純資産200のうち60%の120は連結手続き上、相殺することになります。
Next: 連結開始時の会計処理を参考事例で確認してみると…
X社が120蔓延を出資してY社を設立した場合
ここで、連結手続きについて、次の参考事例をいったん考えてみましょう。
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(参考事例)X社が120万円を出資してY社を設立した。
(X社の仕訳)
(借方)Y社株式120万円(貸方)諸資産(現金預金)120万円
(Y社の仕訳)
(借方)諸資産(現金預金)120万円(貸方)資本金120万円
******X社
ーーーーーーーーーーーーー
諸資産480|諸負債300
B株式120|純資産300
******B社
ーーーーーーーーーーーーー
諸資産120|純資産120←X社(株主)の「B株式」とカブる
(X社とY社の単純合算貸借対照表)
******X社
ーーーーーーーーーーーーー
諸資産600|諸負債300
B株式120|純資産420
(B株式120と純資産120の相殺消去)
(借方)純資産(Y社)120(貸方)B株式120
【結論:X社の連結貸借対照表】
******X社
ーーーーーーーーーーーーー
諸資産600|諸負債300
******|純資産300
連結開始時は、上のように、子会社の株式を取得前の個別の状態に戻ります。
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以上を踏まえ、さきのA社とB社の単純合算貸借対照表からB社株式120億円とB社の純資産のうち120億円を相殺します。
(A社とB社の単純合算貸借対照表1)
******A社
ーーーーーーーーーーーーー
諸資産830|諸負債450
B株式120|純資産500←(A300+B200)
(借方)純資産(Y社)120(貸方)B株式120
(A社とB社の単純合算貸借対照表2)
******A社
ーーーーーーーーーーーーー
諸資産830|諸負債450
******|純資産380←(A300+B80)
つぎに、B社の純資産80は、A社以外の株主(非支配株主といいます)の持分です。A社の持分ではないので、そのような意味をもつ勘定科目に振り替えます。具体的には「被支配株主持分」といいます。
(借方)純資産(Y社)80(貸方)被支配株主持分80
(A社とB社の単純連結貸借対照表)
****A社(スタート時)
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諸資産830|諸負債450
******|純資産300←(A300のみ)
******|非支配*80
※「非支配」:「非支配株主持分」の略
以上の2段階で考えると、連結貸借対照表の作成プロセスがより明らかになると思います。
ちょっと難しいかもしれませんが、わかる範囲で結構ですので、連結決算のイメージをもっていただけたらと思います。
以上、ヤフーによるZOZOの買収と買収開始時の連結財務諸表の基礎に関するおはなしでした。
image by : phloxii / Shutterstock.com
『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』(2019年9月13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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