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ZOZO前澤氏、売却で命拾い。創業経営者が持ち株9割を担保に多額借金は許されるのか=今市太郎

ヤフーへのZOZO売却が話題ですが、実はかなりリスキーな状況だったことが判明。前澤氏はなぜか自らの持ち株を担保に、銀行から多額の借金をしていたのです。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)

※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2019年9月16日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。

担保は1,600億円分のZOZO株? もし株価が暴落していたら…

前澤氏は崖っぷちだった?

ZOZOの前澤社長の電撃企業売却はさすがに市場に大きな驚きを与えるとともに、株価の上昇で喜ぶ関係者が多いのではないかと思われます。

zozo<3092> 日足(SBI証券提供)

企業創業者が上場した自分の会社を売却するというのは、米国のIT企業などでは決して珍しいことではありません

また企業規模が大きくなるにつれて創業者の手には負えない経営状況が到来することもあるわけですから、今回のような電撃企業買収が起きるのは決して不思議なことではありませんし、売却したオーナー企業経営者が責められるようなものでは断じてありません。

しかし、前澤氏の今回のケースはなんとか売却が成立したからいいようなものの、徐々に明らかになるその中身は相当、上場企業経営者としての企業倫理を疑う内容になってきています。

市場ではすっかりその売却だけがフォーカスされていますが、実態を見ますとかなりリスキーな状態であったことが今さらながらにわかる状況です。

実際の2018年収入は140億円前後か

前澤氏というのはいきなりIPOで億万長者にのぼりつめたことから、これまでかなり脇の甘い発言などをツイートしてきています。

と、あえて言わなくもいいようなことをおめでたくツイートされています。

しかし、これは税金にちょっと知見のある人間ならば、すぐに年収がいくら程度なのかがわかってしまうのです。

前澤氏の年収の構成要素は、
・会社からの役員報酬
・持ち株の配当金
・持ち株の売却益
の3つであることは、誰が見ても明らかです。

2018年度というのは「2018年収入」の書き間違えであろうと思いますが、
・会社からの役員報酬:1億円程度
・持ち株の配当金:42億円程度
・持ち株の売却益:(319万1,200株程度と想定して)だいたい100億円弱程度
と思われます。

保有株の9割を担保に多額の借金

半分を税金でもっていかれても、年間70億が残れば十分にお金持ちとして暮らしていけるはずです。

しかし、前澤氏はなぜか自らの持ち株を担保にして、銀行から実に多額の資金を借り受けているのです。

Next: 銀行の担保に入っているのは1,600億円!? もし株価が暴落していたら…



銀行の担保に入っているのは1,600億円という巨額さにびっくり

オーナー企業の経営者の年収など、いくら詮索してみても何も意味はありません。高額品を購入するなりなんなりご自由にしてくださいませ、というのが基本的な感想です。

ただ前澤氏の場合、必ずしもそうとはいえない状況が明らかになってきており、保有株をベースとした異常な借金による金の引き出しが今さらながらにその姿を現しつつあります。

前澤氏の保有株のうち、実に1,600億円分が金融機関からの借り入れの担保に入っているというのです。

今回Yahooに売却する保有株式30.37%は、直近の株価ベースならほぼ2,500億円弱となる見通しです。

また残りの6.29%についてもYahooは取得したいという意向のようですから、追加で500億円程度を手中に収めることになるのでしょう。

こうなると借金の返済と税金の支払いをすると、ほぼ彼の手元には700億円前後が残るものと思われます。

これだけでも十分な大金持ちといえるわけですが、この話の中で大きな問題と感じるのは、そもそも持ち株で巨額の借金をしていることです。

ZOZOにおけるもっとも大株主の経営者が別に金に困っているわけでもないのに持ち株を担保に借金しまくりで返済に窮する状況に陥るというのは、いくらなんでも常軌を逸するものがあります。

株価が暴落していたら一体どうするつもりだったのか?

上場企業経営者が自社株買いをして株価の価値を高め、ストックオプションを高値で売り飛ばすというのは最近では常態的に繰り広げられており、さすがに企業の自社株買いが米国議会でも大問題になりつつあります。

IPOを果たしたオーナー社長が持ち株を徐々に売り飛ばすというのはまだしも、持ち株を担保に最大その9割近くまで差し入れて借金をしていたという話はさすがに聞きしにまさるものがあります。

単に借金の額が人様よりも大きかっただけであると平然と説明する前澤氏の上場企業経営者としての倫理感が大きく問われる内容と言わざるをえない状況です。

個人投資家で言えば証拠金取引の話と似たようなもので、なにか問題があれば追証を求められるのと同じように、貸し付けた担保の株価が暴落などで大きくその価値を棄損することになった場合に、前澤氏は一体どうやって返済するつもりだったのでしょうか?

Next: 絵画売却で1,600億円まで借金を減らした?上場企業経営者の資質はあったか…



上場企業経営者の資質はあったのか

実際に借り入れ資金で購入した絵画などは、恐らくそれなりの損をしながら処分して返済に充て、足元の1,600億円まで借金額を縮減させていたようです。

しかし、本来やらなくてもいいことに時間をかけ、しかも会社の経営に非常に大きな影響を与える行為をしでかしているわけですから、呆れるほかはありません。

当然、こうした貸付には金融機関から一定の株価水準に対し売り条項が設定されているわけで、担保価値を失いかけた途端に前澤氏は保有株を売却しなくてはならない厳しい局面に追いやられていた可能性もあったということになります。

いま米国では社債市場が非常にリスキーな状況になりつつありますが、前澤氏の一連のこの持ち株担保の借金術は世界的に見てもかなり稀有なもので、とてもではありませんが一流企業の経営者のやることとは思えません。

Yahooに救われたZOZOと前澤氏

言ってみればYahooは、ZOZOと前澤氏の神様のような存在で、かろうじて大惨事にならずに企業売却で済んだというのが実情なのでしょう。

非上場の株式ならいざしらず、IPO後のオーナー企業経営者の株式の扱いというのは非常に繊細なものがあり、ステークホルダーに多大な影響を与えるものであるはずです。

しかし、これを平気でそのほとんどを借金のかたにして金を引き出していたという話は、企業経営者の倫理としてかなり問題であり、こんな会社への投資など絶対してはならないものであったことを改めて強く感じる次第です。

ツイッターで100万円を配る話が出たころから「このおっさん本当に大丈夫か?」と思ったものですが、実際はぜんぜん大丈夫ではなく、Yahooと孫さんに助けられてやっとリスクを免れ、第一線から無事退くことができたというわけです。

Next: なぜほかの経営陣は止めに入らない? リスクだらけだったZOZO株



リスクだらけだったZOZO株

通常、お金持ちが自分のIPOの利益金で何を買おうが使おうが他人がとやかく言うべきものではありませんが、前澤氏に関しては、アウトの寸前まで行っていたことが今さらながらによくわかる状況です。

しかし、まともな経営陣の取り巻きが誰か止めに入らなかったのでしょうか

企業が断末魔の経営状態で自己保有株を差し出して金融機関から資金を引き出すというのはありえる話ですが、まぁ銀行も無節操によくも経営者個人に貸し付けたという感があります。

例えば、かのアマゾン創業者でCEOのジェフ・ベゾスが日本円で10兆円あるアマゾンの株式資産を担保に、米系銀行から9兆円を借り受けていたという事実がわかったら、果たしてアマゾンの株価はどうなってしまうでしょうか?

それを考えれば、この前澤という人物の行為の異常さと愚かさが今さらながらに顕在化してくる今日この頃です。

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今市太郎の戦略的FX投資』(2019年9月16日号)より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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