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東京五輪、猛暑・熱中症に打つ手なし。組織委は「最終責任者は誰か」の質問を完全無視=三宅雪子

東京五輪まであと1年をきりましたが、酷暑対策はまったく進んでいません。そこで組織委に対して、ボランティアや観客が熱中症になった場合の責任の所在や、最終責任者は誰かなどを問う4つの質問を送付しました。回答が届いたので紹介します。(『三宅雪子の「こわいものしらず」』)

※本記事は有料メルマガ『三宅雪子の「こわいものしらず」』2019年9月6日・13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:三宅雪子(みやけ ゆきこ)
元衆議院議員。玉川学園女子短大、共立女子大学を卒業。テレビ局勤務を経て、2009年群馬4区で民主党から立候補し、比例復活当選。現在は、執筆やネット配信、福祉や介護のアドバイザーなどをしながら政治活動を行っている。

観客の健康までは知らぬ存ぜぬ?最終責任者を問う質問はガン無視

酷暑対策に決定打なし

9月に入り暑さもかなり楽になってきましたが、今年の夏もまた深刻な酷暑でした。

そんな中、来年2020年の本番に備えて東京五輪のテスト大会が各地で開かれましたが、予想していた通り、暑さ対策には決定打がなく、いったいこの1年間、何の準備をしていたのかと思うほどの状況でした。

都や組織委が準備したミストシャワー、保冷剤配布、日陰の造成、送風機などは、いずれも体感温度を下げるほどまでの役割を果たさず、ミストや送風の範囲外にはまったく効果が無いことが分かってしまったのです。

暑さから身を守るのは自己責任?

とはいえ私にとっては、このような状況になることは当然、予想できていました。

昨年も当メルマガで「ブラックボランティア」を取り上げましたが、組織委や都は責任が曖昧なため、酷暑対策に真剣味が足らず、アイデアレベルの対策を並べるだけで、有機的な連携や工夫などしないであろうことが想像できたからです。

その結果、大会期間中にボランティアや観客が熱中症にかかる危険性が確実に増していると感じました。

さらに7月の組織委理事会などで、ボランティアや観客が暑さから身を守るのは自己責任だという驚くべき発言も報じられたため、私はWEBマガジンのWEZZYならびにサイゾー社との連名で、組織委に対して以下の質問を送付し、9月5日それに対する回答を得たので、ここに紹介します

「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」への質問

  1. オリパラ期間中にボランティアや観客が熱中症になった場合、その責任の所在はどこにあると考えているか
  2. オリパラ期間中のボランティアと観客を酷暑から守る部署、最終責任者は誰か。部署名と責任者の肩書き、名前を明示してください
  3. オリパラ期間中、ボランティアや観客に熱中症による後遺症または死亡者が出た場合、組織委はその人たちに対する補償責任を負うのか
  4. ボランティアを加入させるとしている保険の補償内容を明示してください

Next: 回答は逃げ道だらけ?熱中症になった場合の責任を初めて認めたが…



「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」の回答

・東京2020組織委員会(以下、組織委員会)が募集・運営する大会ボランティアにつきましては、ケースバイケースの判断とはなりますが、基本的には組織委員会が責任を負うものと考えております。大会ボランティアのみなさまに対しては、熱中症を防ぐために、研修で暑さ対策に関する周知徹底を行うとともに、活動時には暑さ対策グッズとして、水や体調管理ブック等を配布する予定です。また、休憩時間を十分に取れるようなシフトの考え方を検討しております。ただ、大会ボランティアは、あくまで任意参加ですので、無理をせずにご参加いただければと考えております。なお、大会ボランティアについては、保険(組織委員会負担)に加入いたします。

観客のみなさまにつきましては、組織委員会の責めに帰すべきと判断される場合に組織委員会の責任となると考えております。組織委員会では観客のみなさまに対し暑さ対策に関する情報提供やファーストレスポンダーによる会場内の巡回のほか、仮に熱中症にかかってしまった場合に使用できる会場内医務室の設置や救急車での搬送体制など、安心して観戦できる環境整備に努めてまいります。観客のみなさまにつきましても、無理をせずにご観戦いただければと考えております。

(4)ボランティアを加入させるとしている保険の補償内容を明示してください
・検討中です。

回答:公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 戦略広報課

回答がわかりづらい

まず感じたのは、組織委広報課は質問に対する回答の仕方が分かっていない、あるいはわざと分かりにくい書き方をしてくる、ということです。

通常のビジネス文書では、こちらが箇条書きで質問している場合、その項目ごとに回答するのが礼儀というものですが、そういう最低限の書式的知識・マナーが欠落しているようです。

私は過去に3回ほど組織委に質問していますが、彼らの返答はいつも上記のように雑然としています。こちらの質問にきちんと答えず、聞いてもいないことを長々と書き連ねるのが、この組織の特徴です。

初めて熱中症の責任を認めるも、しっかり逃げ道を用意

では、中身を見てみましょう。注目すべきは、ボランティアの熱中症の危険性に関しては「基本的には組織委が責任を負うものと考えている」と渋々認めた点です。組織委が、このように自らの責任の存在を認めたのは、恐らく初めてでしょう。

とはいえ「ケースバイケースの判断」「ボランティアはあくまで任意参加」という文言を入れ、無条件に責任を負うものではないことをきっちりと匂わせています。組織委にも使用者責任があると一応は認めつつ、最初から逃げ道を用意している感じです。

ですが、その任意参加するボランティアに対し、組織委は「1日8時間、連続5日、合計10日以上の勤務」という厳格な条件を出して採用しています。

そうした条件のもとで働いてくれる人々の健康を守るのは組織委に全責任があるのは当然であり、「ケースバイケースの判断」などと逃げ道を作ることは許されません

また、「大会ボランティアについては、保険(組織委員会負担)に加入いたします」などとまるで保険を用意しているから心配ないと言わんばかりです。

しかし、その保険内容については未だに検討中であるといいます。保険があるから心配するなと言って11万人以上の人々を集めながら、その内容は未だに未決定で明かせないというのは、後出しジャンケンにも似たズルさを感じます。 

Next: 観客の健康までは知らぬ存ぜぬ?/最終責任者を問う質問だけガン無視



観客の健康までは知らぬ存ぜぬ?

観客に対してはさらに態度が曖昧です。「組織委員会の責めに帰すべきと判断される場合に組織委員会の責任となると考えております」などとまわりくどい条件をつけるのなら、どのような場合が「組織委の責めに帰すべきと判断」されるのか、きちんと明示すべきです。

また、「仮に熱中症にかかってしまった場合に使用できる会場内医務室の設置や救急車での搬送体制など、安心して観戦できる環境整備に努めてまいります」などと書いていますが、そんなことはイベントの主催者が準備すべき最低限の安全対策であって、だから安全だと納得できるわけがありません。

観客は全員が高額なチケットを購入して全世界から集まってくるのであり、有料であるからには安全を保証されていると認識して会場に来るのです。

そうした人々に対する責任を「責めに帰すべきと判断される場合は組織委の責任」と言うのは、ボランティアに対する「ケースバイケース」と同様に、完全な逃げの姿勢ではないでしょうか。

担当部署・最終責任者を問う質問だけガン無視

そして最も不誠実だと思うのは、質問の(2)で「ボランティアと観客を酷暑から守る部署、最終責任者は誰か。部署名と責任者の肩書き、名前を明示せよ」という要求を完全に無視していることです。

なぜ回答しないのかの説明すらなく、この期に及んで責任の所在を曖昧にしておこうという、逃げの姿勢が際立っていると思います。

皆さんはこの回答をどう感じられたでしょうか。この回答に対する再質問を直ちに送付し、さらに追及を続けるつもりです。

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・演歌歌手・神野美伽さんのブログが炎上
・「週刊ポスト」韓国特集騒動
・リツイートは賛同行為?
・僧侶がヘイト
・東京オリパラ組織委、熱中症責任の所在を明確にせず

三宅雪子の「こわいものしらず」VOL200(9/6)

・私が総理になったなら
・今ごろ育メン?
・ネトウヨの定義
・日韓関係~北海道への影響
・東京オリパラ組織委、熱中症責任の所在を明確にせず
・Tokyoインパール2020の記録49
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三宅雪子の「こわいものしらず」』(2019年9月6日・13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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3年3ヶ月の与野党国会議員の経験を生かし、三宅雪子独自の語り口で、あたたかみのある中にも、言うことは言う「こわいものしらず」なコラムを展開します。加えて、「教えて!○○さん」「名言・迷言・明言」「永田町コトバ」「ヒトリゴト」「話はそれますが…」など、私的なコンテンツもローテーションでお届けする予定です。

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