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外国人労働者受け入れ拡大!亡国の特命委員会が破る50年来のタブー=三橋貴明

「成長を確保するには、(外国人労働者を受け入れ)労働力を増やしていく以外に方法はない」と主張する自民の「労働力の確保に関する特命委員会」は、資本主義の基本すら知らない、産業革命前の「頭」なのです。

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年3月4日号より
※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

外国人労働者の受け入れ拡大では日本は経済成長できない

「ヒトを増やせ」は産業革命前の発想

改めて書くまでもありませんが、経済成長、つまりは国民が豊かになるとは、マクロ的には実質GDPの拡大であり、ミクロ的には実質賃金の上昇です。

実は、上記二つは「所得の実質値が増える」という意味では、同じ話になります。

所得の実質値が上昇するためには、生産者一人当たりの付加価値の「量」が増える必要があります。と言いますか、実質的な所得の増大とは、金額ではなく「付加価値の生産量」の拡大そのものなのです。

これをマクロで見ると、実質GDPの成長になります。ミクロで見ると、実質賃金の上昇です。

さて、それでは生産者一人当たりの付加価値「量」を増やすには、どうしたらいいでしょうか。生産性向上以外に方法がありません。といいますか、生産性の向上とは生産者一人当たりの付加価値「量」の拡大、そのものです。両者は同じ話なのです。

すなわち、経済成長とは生産性の向上そのものなのでございます(ただし、生産者と比して仕事(需要)が十分に存在する。という前提条件を満たす必要がありますが)。

それでは、生産性の向上のためには、どうしたらいいでしょうか。産業革命以降の資本主義の世界では、生産量は「モノ」「ヒト」「技術」という経済の三要素の掛け算で決まります。

モノとは、「土地」「資源」といった有形非生産資産に加え、「工場」「インフラ」「機械設備」など、人間の投資活動により拡大する生産資産が含まれます。土地や資源は、これは国土に備え付けられていたもので、簡単に増やすことはできません。

それに対し、インフラや工場、機械や設備といった生産資産、さらには「技術」は、投資により強化することができます。すなわち、モノと技術に対する投資、「設備投資」「公共投資」「技術開発投資」の三投資が、ヒト(労働)一単位当たりの生産量を増やすのです。つまりは、生産性を向上させます。

そして、企業や政府、国民が生産性向上のための投資を拡大するのは、どんな時期でしょうか。ズバリ「人手不足」の時期になります。

実際、超人手不足で完全雇用が成立していた高度成長期、日本国民は設備投資、公共投資、技術開発投資によりモノと技術を強化し、生産性を著しく向上させました。さらに、高度成長期はヒトが大事にされ、自動的に人材投資が拡大しました。

産業革命前は、生産量は「ヒト(労働)」と「土地」で決まってしまいます。というわけで、経済規模を拡大するには、戦争で土地を奪うか、もしくは「ヒトを増やす」しかありませんでした。

とはいえ、産業革命後の「資本主義」の世界では、生産量は「ヒトの量」ではなく、生産性向上のための投資に依存しているわけでございます。

現代の日本において、「経済成長のために外国人を~」などとやっている連中は、資本主義の基本すら理解しておらず、産業革命前の世界を生きていることになります。

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自民・労働力の確保に関する特命委員会は「亡国の特命委員会」である

自民党は、3月中旬に「労働力の確保に関する特命委員会」を立ち上げ、移民を含めた労働力としての外国人の受け入れに関する議論を開始する。特命委の委員長となる木村義雄参院議員が3日、ロイターに明らかにした。

同委では4月中に提言をまとめ、政府に提出する。木村氏が委員長を務め、顧問に野田毅氏、村上誠一郎氏、逢沢一郎氏などを迎える。

特命委の目的について、木村氏は「50年来のタブーを破って、外国人の労働力としての受け入れに関する議論に踏み込む」と述べた。

人口減少に伴う労働力人口の減少が予想され、「成長を確保するには、(外国人労働者を受け入れ)労働力を増やしていく以外に方法はない」とし、このタイミングでの特命委発足について「背に腹は代えられない」状況にあるからだと述べた。

ただ、党内では外国人労働力の受け入れに反対する声も根強くもあるため、その是非を含めて議論する。

また、提言をまとめるのは7月に予想される参院選挙前となるため、「移民」という言葉を盛り込むことは難しい、と木村氏は述べた。<後略>

出典:自民党が移民に関する議論開始、3月中旬に特命委=木村参院議員 – ロイター

ね?
「成長を確保するには、(外国人労働者を受け入れ)労働力を増やしていく以外に方法はない」
木村議員は資本主義の基本すら知らず、産業革命前の「頭」なのです。このレベルなのですよ。

しかも、根本から間違った政策を、「50年来のタブーを破って、外国人の労働力としての受け入れに関する議論に踏み込む」などと、やたら勇ましく、格好つけた宣言と共に推し進める。

繰り返しますが、我が国の政治家は「このレベル」なのです。

経済成長率を抑制し、国民の実質賃金を引き下げ、貧困化へと導く路線を、根本から間違ったレトリックに基づき突き進む。国家とは、このように亡国に至るのです。

労働力の確保に関する特命委員会は、「亡国の特命委員会」なのです。

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