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東京電力が「トモダチ作戦」の米空母乗組員から訴えられた本当の理由=不破利晴

東京電力福島第一原発の事故から5年。これだけの罪を犯しておきながら、誰も責任を取らないのは世界広しといえども日本ぐらいのもので、世界はそんな日本の無責任体質を半ば嘲笑し、半ば呆れているに違いないのだ。(『インターネット政党が日本を変える!』不破利晴)

墓穴を掘った東電<9501>の「お粗末すぎる」リスク管理

東電元幹部ら強制起訴

東日本大震災における東京電力福島第一原発の事故については、これまで誰も責任を取らない、だれも断罪されないという信じられないような無責任体質を震災後5年に渡りさらし続けてきたが、ここにきてようやく東電幹部の一部が強制起訴されるらしい。

東京電力福島第一原発事故で、検察官役の指定弁護士は二十九日、東電の勝俣恒久元会長(七五)ら旧経営陣三人を業務上過失致死傷罪で在宅のまま強制起訴した。公判では、全交流電源喪失が起きるほどの巨大津波の襲来を予測できたかが、最大の争点となる。<中略>

他に起訴されたのは、ともに原子力・立地本部長を務めた武藤栄元副社長(六五)と、武黒一郎元副社長(六九)。

起訴状では、福島第一原発の敷地の高さ(海抜一〇メートル)を超える津波が襲来し、浸水で重大な事故が起きる可能性を予測できたのに、原発の運転停止を含めた津波対策をすべき注意義務を怠り、東日本大震災に伴う津波で重大事故を引き起こし、四十四人死なせ、十三人にけがを負わせたとされる。<後略>

出典:巨大津波予測が最大の争点 東電元トップら強制起訴 – 東京新聞(2016年3月1日)

本来的には、これまで原発を推進してきた自民党を中心とする政治家、大震災でまるで役に立たなかった民主党を中心とする政治家、東電を管理運用してきた企業家、そして忘れてならない原発ムラに巣くう官僚をはじめとするその他諸々の連中を、次々と断罪せねばならぬだろう。

しかし、現実には東電の一線を退いた老いぼれたちをアリバイ作りのごとく起訴し、そして彼らは有罪となるも執行猶予や軽い罰金刑で手打ちとなる可能性が極めて高いと言わざるを得ない。

東京電力<9501> 月足(SBI証券)

誠に残念ではあるが、それでもこれを契機に世論が盛り上がり、多くの関係者が責任を追及され、そしてそれが被害者への補償に繋がればと願っている。

だいたいこれだけの罪を犯しておきながら、誰も責任を取らないというのは世界広しといえども日本ぐらいのもので、世界はそんな日本の無責任体質を半ば嘲笑し、半ば呆れているに違いないのだ。

そして、原発訴訟に関して、忘れてならないことがもう一つある。

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実は謎が多い~空母「ロナルド・レーガン」乗組員による東電訴訟

東日本大震災(3.11)が起きた時、イスラエルは東北地方に現地支援スタッフを派遣し、その活躍はイスラエルらしいメディア攻勢のもとに、テレビを中心的な媒体として我々の目に飛び込んできた。

しかし、その後のイスラエルは経費として数千万といった金を日本に請求してきたことも、確かにイスラエル“らしい”やり口であった。

忘れてならないことは、イスラエルのことではない。もっと強烈なものだ。

東日本大震災での「トモダチ作戦」で一躍名を馳せたアメリカ航空母艦、ロナルド・レーガンの乗組員らが東京電力を相手取り計1億4000万ドル、日本円にして約120億円の賠償を求める訴えを米サンディエゴの連邦地裁に起こしたという事実である。

訴えの理由として、「東京電力が福島第1原発事故について誤った情報を伝え、危険なレベルまで被ばくさせた」ことを挙げている。

つまり、乗組員側は、

「米海軍が東電による健康と安全に関する偽りの情報を信頼し、安全だと誤解させられた」と主張。「東電だけが入手できた当時のデータによると、原告が活動していた地域における放射線被ばく量は、チェルノブイリ原発から同距離に住み、がんを発症した人々の被ばく量にすでに達していたことになる」と指摘している。
出典:時事通信(2012年12月27日)

のだ。

アメリカは言わずと知れた訴訟社会であり、この件も福島の惨事をネタに一山狙っていると受け止められても仕方がない側面はある…かもしれない。それでも乗組員の主張には事態の本質的を突く箇所があるのは否めない。

それが「東京電力が福島第1原発事故について誤った情報を伝え…」に凝縮されている。

結局、東京電力の隠蔽体質は事故をさらに悪化させ、周辺住民にもいらぬ被爆を被らせたことは事実であり、これはそっくりそのまま日本政府の隠蔽体質についても痛烈な批判を浴びせるものだ。

ここで不思議なのは、乗組員らが訴えを起こしたのは日本の司法に対してでなく、アメリカの「サンディエゴの連邦地裁」である、ということである。このようなことが実際に成り立つのか?当初、私は非常に不思議に思った。

このことを的確に解説してくれたのが、名古屋市在住の弁護士、岩月浩二氏である。岩月弁護士は私も集団訴訟の原告の一人として参加している、「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」の弁護団団長を務めている方である。

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墓穴を掘った東電。近い将来、日本でも驚くべき判決が下される?

アメリカの裁判所に、なぜ米兵の東電に対する損害賠償訴訟の管轄が認められるのか?岩月弁護士のブログ『街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋』によれば、つまりはこういうことだ。

実は、東京電力はどういう理由かは定かでないが、アメリカの首都ワシントンに事務所を構えているのだ。この事実が問題の本質の全てと言って良い。

東電の原発事故についてアメリカの裁判所に司法権が及ぶ理由は、被告(=東電)の所在地がアメリカにあるからだ。つまり、支社や事務所がアメリカに存在する場合でも、所在地がアメリカにあると見なされるのである!

このことから浮き彫りになってくるのは、被告所在地は最も一般的な管轄原因である、ということなのである。

当たり前といえば当たり前だが、その意味では岩月浩二氏が指摘するように、東京電力のリスク管理はあまりにお粗末と言う他ない。詳細は東電のお粗末 被曝米兵「トモダチ」損害賠償訴訟 – 街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋に目を通していただきたい。

日本の電力大手とはいえ、アメリカにまで事務所を構える蓋然性は見当たらず、アメリカは原発先進国といえども、そうまでする程の収集すべき情報がふんだんにあるとも思えないのである。

これは対アメリカというよりは、むしろ東電幹部がアメリカに外遊に来た際、何かと世話を焼くための出先機関だったのではなかろうか。そのような無駄なことに金を使うから、東電は墓穴を掘ってしまったのかもしれない。

東京電力については方々から訴訟が取り沙汰されているが、アメリカの訴訟いかんによっては日本でも驚くべき判決が下されるかもしれない。日本は対米従属が基調である。このことは無論、司法においても例外ではないのである。

【関連】“ローコスト”な原発の正直なコスト~過酷事故の発生確率は4.3%/年=吉田繁治

インターネット政党が日本を変える!』(2016年3月3日号)より
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「あなたにとってハッピーな世の中とは、どのようなものですか?」驚かせてすみません。私は不破利晴と申します。私は、元駐レバノン特命全権大使・天木直人氏と共に、「インターネット政党」の成功に向けて活動しています。インターネット政党『新党憲法9条』のWebサイトをつくり、日々の運用管理をしています。想像して欲しいことがあります。→「毎日働き詰めで辛くありませんか?」→「生きることに目的を見失って辛くありませんか?」→「あなたにとってハッピーな世の中とは、どのようなものですか?」インターネット政党の主役は「あなた」です。

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