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好調な米国株の上昇を牽引するアップル株…iPhone不調でも株価が上がり続けるのはなぜか?=栫井駿介

ナスダックが史上最高値を更新したほか、S&P500、ダウ平均も高値圏推移するなど米国株が好調です。今回は、いずれの指数にも影響の大きいアップルに注目します。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

Appleが史上最高値を更新し、バフェットは+80%のリターン!

減収減益でも株価が上がるのはなぜなのか?

米国株が好調です。11月1日にはハイテク銘柄中心に構成されるナスダック平均が史上最高値を更新しました。S&P500指数も最高値、ダウ平均も高値圏で推移します。

ナスダック指数(出典:Bloomberg)

注目すべきは、いずれの指数でも高い割合を占めるApple(AAPL)の株価です。過去最高値を更新し、指数上昇の原動力となりました。

出典:Google

Next: アップルの株価がここにきて過去最高値を更新する背景とは…



米国株の上昇を牽引するAppleの恐るべき強さ

同社は10月30日に決算を発表しました。その結果は「減収減益」。それでも最高値を更新するとはどういうことでしょう。

一つの理由は、業績が市場予想を上回ったことです。米中貿易戦争の煽りを受けて、中国での販売低迷が懸念されたことから市場は慎重に見ていました。事前のハードルが低かったことが「ポジティブサプライズ」を生んだのです。

もう一つの理由は、決算の内訳にあります。以下のグラフがカテゴリー別の売上高です。


主力のiPhoneは14%もの減収になっています。これは世界的なスマートフォン売上高成長率鈍化とリンクしています。ピークは超えたと見て良いでしょう。

一方で、それを補っているのが「サービス」や「ウェアラブル等」です。特に注目に値するのが、「サービス」カテゴリーです。これは、iCloudや音楽、ニュースなどのサブスクリプション(定期購読)ビジネスを指します。

Appleと言えば、iPhoneやMacなど、物を作って売るハードウェアの会社でした。世界中の人々がスマートフォンを持つことで爆発的に成長しましたが、限界もあります。実際に、iPhoneの売上高は減少に転じました。

しかし、Appleはすでに先手を打っていました。それこそが、「サービス」カテゴリー、すなわちソフトウェアだったのです。

Androidと異なり、あえてOSをオープンにせず囲い込みを行いました。その先にあったのが、クラウドや音楽です。スマートフォンを持ち続けると、やがてデータや音楽を常に持ち運びたくなります。

それらのサービスを「サブスクリプション」という形で提供すれば、多くの人は端末にあらかじめ入っていて、便利なAppleのサービスを利用するようになるのです。

これぞまさに、他者を寄せ付けない「経済の堀」の典型です。iPhoneを単なる物売りで終わらせず、消費者がもはや手離すことのできない「相棒」として課金させ続けることに成功したのです。

最近では、カメラやワイヤレスイヤホン(AirPods)の性能もグングン向上させています。カメラが高画質になればデータ容量は増えますし、イヤホンが進化すれば音楽を聞きたくなるでしょう。

こうしてハードからソフトへ、そしてまたハードへと無限の消費ループを生み出しているのです。

サービスには原価がかかりません。たとえ売上高が減少しても、利益率は大きく向上していくでしょう。つくづく恐ろしい会社だと感じます。時価総額世界2位はやはり伊達ではありません。

Next: 評価の低いアップル株をウォーレン・バフェットが買えたワケとは?



バフェットはApple株ですでに80%のリターン。なぜ買えたのか?

Appleに前々からベットしていた著名投資家がいます。言わずとしれたウォーレン・バフェットです。

2016年から本格的に同社株を買い続け、現在ポートフォリオの24%を占める筆頭銘柄となっています。

平均取得単価が141ドル、現在の株価が255ドルと、すでに80%ものリターンをあげています。これだけ大きな銘柄を、ポートフォリオの1/4まで買い増してこれだけのリターンを出せるのはとんでもないことです。

バフェットがAppleを本格的に買い始めたタイミングでは、実は多くの投資家がAppleを評価していませんでした

スマートフォン市場の拡大には限界が見え、成長力に衰えが見え始めていたからです。性能の進化も止まり、消費者の買い替えサイクルは長期化するだろうと考えました。

一方で、その頃のPERは12~13倍程度に据え置かれていました。バフェットはその割安さに目をつけたのです。安くなった時にどんどん買い入れ、あとはひたすら待っていました。それが、3年経った今大きく花開いているのです。

バフェットがこの未来をどこまで予想できていたかわかりません。ただ、「『経済の堀』を持つ優良な銘柄を、割安なタイミングで買う」という原則に忠実な取引を行っていたことは間違いありません。

AppleTVなど新たなサービスも始まり、今後ますます「サービス」カテゴリーの拡大を図ってくるでしょう。強力な「経済の堀」がどこまで収益を拡大させるか、これからも注意深く見守っていきたいと思います。


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image by: Denys Prykhodov / Shutterstock.com

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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2019年11月2日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

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