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迫るリーマン・ショックの再来。米国経済を襲うシャドーバンキングのリスク=矢口新

住宅ローン市場で、流動性のひっ迫のリスクがあるとの報告が出てきた。シャドーバンキング業者と地銀が資金繰りに苦しみ、新たなバブルが弾けようとしている…。(『相場はあなたの夢をかなえる —有料版—』矢口新)

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる —有料版—』2019年11月7日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。信済みバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

リーマン・ショックと同じ構造? 住宅ローンでバブルが弾ける…

住宅ローン市場が崩壊する?

2019年11月、米金融安定監視評議会(議長はムニューシン財務長官。パウエルFRB議長も参加)は11兆ドル規模の住宅ローン市場で流動性のひっ迫のリスクがあるとの報告を受けた。

米住宅市場では、銀行が扱わない高リスク分野を中心とする住宅ローンの組成および債権回収業務でシャドーバンキング(※編注:証券会社やヘッジファンドなどの「銀行ではない」金融会社が行う金融仲介業務のこと)が急成長している。

2015年3月にはFRBフィッシャー副議長が、ノンバンクによる融資割合が増える中で規制当局が監督を改善し、新たなルールを検討する必要があると指摘していた。

2018年にはカリフォルニア大学バークリー校のウォレス教授らが「住宅ローン市場における流動性の危機」と題する論文を発表、シャドーバンキング業者の多くが資金的に不安定だと指摘した。

シャドーバンキング業者は、金融ストレスが発生すれば取り下げられるであろう短期の銀行与信に依存している

翌日までの資金すら調達できない金融機関も…

金融ストレス」や「短期の銀行与信」という言葉にピンと来た人たちはおられるだろうか?

では、米の銀行間短期金融市場で、翌日物という超短期の金利が10%に高騰したことがあったことを思い出された人がいるだろうか?

9月の2回目の利下げに先立つ17日、翌日物レポ金利が一時10%に上昇した。

このことを受け、ニューヨーク連銀レポ取引を通じて531億5,000万ドルの資金を供給した。こうした資金供給は金融危機時以来のものだった。

このことは、高金利を払わなければ翌日までの資金すら調達できない金融機関があったことを意味している

そして、その理由として、「四半期の法人税納付や国債入札の決済立て込みに伴う混乱」が指摘された。

Next: 応急措置だけを続けるNY連銀。シャドーバンキング業者は命拾いしているが…



応急措置を続けるNY連銀

ところが異例だったレポ取引はその日から連日続き、1日当たり最低750億ドルを市場に供給することを、2020年1月まで継続すると発表された。

とはいえ、売り戻し条件付きのレポ取引では、750億ドルを供給しても翌日には同額吸収し、また同額供給するので、いつまでたっても応急措置でしかない

資金ひっ迫の原因が「四半期の法人税納付や国債入札の決済立て込みに伴う混乱」ならば、それで収まるのだが、本当に資金不足のところが出てきていたのなら、ほとんど役立たない

そこで、FRBは10月15日から毎月600億ドル規模で短期国債を購入するとし、2020年の4−6月期まで継続すると発表した。仮に6月15日まで同額で続けると、4,800億ドルの資金供給となる。

そこでもFRBは「措置はテクニカルなもので、金融政策とは一線を画している」と述べた。

規制緩和でシャドーバンキング業者は命拾い

そしてFRBは10月10日に、米銀と外国銀行に対する自己資本比率と流動性カバレッジ比率規制の緩和を発表した。

流動性カバレッジ比率は金融危機を受けて導入していたもので、高品質の流動資産を、30日間の厳しいストレス環境下で必要とされる流動性以上に、保有することが義務付けられていた。

規制緩和は、資産規模に応じて4つのグループに分けて適用。

大手米銀など最上位の「カテゴリー1」は従来の規制と変わらないが、地銀などの「カテゴリー4」(総資産1,000億〜2,500億ドル)は規制が大幅に軽減されるか、全くなくなる

つまり、「金融ストレスが発生すれば取り下げられるであろう短期の銀行与信に依存」していたシャドーバンキング業者は、当面、生き延びることができるのだ。

3回連続の米利下げ

そして、10月29日のFOMCでは、3回連続となる計0.75%利下げを行った。

9月17日に、翌日物レポ金利が一時10%に上昇したことは、フィッシャー副議長やウォレス教授の懸念が実現したことを示唆している。

そして、その後のFRBの一連の行動は、それが示唆に終わらずに、相当深刻なレベルであったことを表している。

Next: あのサブプライム・ローンと本質は同じ。住宅ローンで新たなバブルが弾ける?



新たなバブルが弾ける?

銀行が扱わない高リスク分野を中心とする住宅ローンとは、本質的にはサブプライム・ローンと同じだ。

過大な信用供与でつくったバブルが崩壊したのが、サブプライム・ショックリーマン・ショックだった。

そして、バブルの規模の信用拡大に合わせるかのように実弾の資金供給を行い、バブルの痛手をカバーした。

ところが、そうした資金供給による値上がりを背景に、再び過大な信用供与が行われていたのだ。

そして、そうした信用供与を個人相手に行ってきたシャドーバンキングと、業者相手に行ってきた地銀が、資金繰りに苦しんでいる

新たなバブルが弾けようとしている。

当局は利下げと資金供給を再開し、規制緩和も行った。

そうして見ると、FRBの利下げは、これで打ち止めとは言い切れないかも知れない。

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・米経済にシャドーバンキング(影の銀行)のリスク(11/7)
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image by:Motortion Films / Shutterstock.com

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる —有料版—』2019年11月7日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

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相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』(2019年11月7日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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