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92年、95年、98年の中間反騰のきっかけは「政策」(本文より)

衆参ダブル選挙は7月10日で決まりだ~ついに放たれる3発の“実弾”=山崎和邦

衆参両院ダブル選挙は7月10日(日)になるだろう。3発の“実弾”を国民に事前提示し、5月のG7議長国としての実績をアピールした上で、野党不和の間隙を突いて打って出る。(山崎和邦 週報『投機の流儀』(罫線・資料付)

自民党が満を持して放つ3発の実弾 その驚くべき経済効果とは?

衆参両院ダブル選挙は7月10日しかない

なぜ7月10日か。18歳以上の若者が初めて選挙に参加できるのは公示期間の関係で7月10日以降となる。7月17日は3連休の真ん中だし、翌週24日では学生は夏休みに入ってしまう。従って7月10日しかない。

安倍首相は5月26~27日開催のG7伊勢志摩サミットで、世界首脳をリードする議長国のまとめ役としての役割を果たして世間にアピールし、支持率を上げたタイミングで総選挙に打って出る。

無論、衆参両院ダブル選挙だ。なぜダブル選挙かと言えば、野党に対抗する手段がなく、まとまりもないからだ。坂本龍馬が今はいない。薩長の見解相違を乗り越え、好き嫌いを乗り越え、「倒幕」という一点突破で薩長同盟を締結させた坂本龍馬が今はいない。このスキを狙ってのダブル選挙であろう。

今後は政策色の強まる展開か

「憲法改正」だけでは自民は負ける

自民党としても、1955年結党以来の党是であり岸家の家訓でもある憲法改正だけを標榜しては負ける。それは第1次安倍内閣で「美しい国、日本」という情緒的な標語を打ち出して大失敗したことから学習しているはずだ。

そこで用意されたのが「経済」という実態ある現世的なテーマである。12年11月、衆院解散時には「日本を、取り戻す」「経済を、取り戻す」を標榜して、ホンネの憲法改正はオクビにも出さなかった。

この時は、「民主党から取り戻す」などとケチなことは言わず、「デフレと長期停滞から取り戻す」と意訳した。7月10日はそうはいかないかもしれない。衣の下に隠した憲法改正という鎧をアラワに見せなければならないであろう。それを犯した上で勝たねばならない。

そこで用意される現世的な「実弾」は次の3つとなる。

Next: 安倍自民党が放つ“実弾”3発の驚くべき経済効果



1.最低でも5兆円規模の財政出動

1つは最低でも5兆円規模の財政出動である。すなわち、アベノミクス「3本の矢」の2本目の矢「機動的な財政出動」の出番だ。財政出動は現ナマがまかれるのだから実体経済にただちに効く。しかもケインズの乗数効果がかかって効く。

これは、「失われた13年」(りそな銀行への公的資金注入で不良債権の最終的処理が終わるまでの1990年~2003年の13年)の時代、不良債権山積みの最中でさえも財政出動で景気が一時的に回復し、それを先取りして日経平均が6割上がったことが3回あったことからも明らかだ。相場は過去を記憶して動く生き物である。

1992年~2000年の中間反騰と「政策」


1992年安値にかけての調整と中間反騰入り局面


1995年安値にかけての調整と中間反騰入り局面

2.消費増税の延期

もう1つの弾は消費増税の延期である。

今、一次産品の価格下落によって物価上昇が抑制され「2%」に届かない。この状態で消費増税を再延期しても、日本国債が暴落することは絶対ない。

無論、長期的な財政健全化を生き甲斐としている財務官僚は反対する。それを抑えるために安倍さんは、盟友麻生さんを財務官僚の人事権を握るトップの立場に据えてある。

財務官僚の秀才たちは人事権に一番弱い。しかも財務官僚出身の内閣官房参与・本田悦郎氏をして「消費増税を延期しなけりゃとんでもないことになる」とテレビカメラの前で喋らせている。

一昨年、5%から8%への消費増税の際、内閣官房参与の浜田宏一氏、本田悦郎氏などは大反対していた。景気が優先だと主張した。筆者にはそれを読めなかったが、彼らの言うとおり消費は低迷し「2%目標」の達成も延期された。原油価格の暴落という外部要因まで加わったが、ともかく、当時の彼らの増税反対はこと景気に関しては的中していた。

これでもし来年10%にすれば、3年間で5%から10%に上げた計算になり、「消費税を3年間で2倍にした先進国は世界に1つもない、そういう無茶はやるな」という言い分が出る。

Next: 3.「いつでも抜くぞ」刀の柄に手をかけ売り方を睨む黒田日銀総裁



3.策師・黒田総裁の大胆な金融政策

3つ目の弾は、今までアベノミクスの中心だった「第1の矢・大胆な金融政策」だ。これとて終わったわけではない。

12月18日の黒田発言は日経平均5千円安(19,800円~2月12日の14,862円)の引き金を作ってしまったし、1月の「マイナス金利導入」は混乱を招き、事後に賛否の諸説が出回った。だが、策師黒田総裁の“灰色の脳細胞”は枯渇したわけではない。

しかも、今後の日銀金融政策決定会合は先週号で述べたとおり「6対3」で決められる。彼は「いつでも抜くぞ」と刀の柄に手をかけて売り方を睨んでいる。

各局面の指数化による日柄・調整の比較

この3つの弾をそろえて7月10日を迎えるつもりであろう。しかも第1の弾(財政出動)と第2の弾(消費増税延期)は目に見えるかたちで出る。

現に16日開催の「国際金融経済分析会合」では、消費増税反対の自説を説くことを期待して、ノーベル賞受賞学者で「今の時期に日本は消費増税をやるべきでない」とするスティグリッツ博士とクルーグマン博士を呼んだ。これが世論を作るためなのはミエミエである。

自民党は、自分で呼んだ憲法学者にテレビカメラの前で「違憲だ」と言われて慌てたから、今回は学者を選びに選んだだろう。

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山崎和邦 週報「投機の流儀(罫線・資料付)」』(2016年3月27日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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