富士フィルムが2021年3月を期限にゼロックスとの販売提携を解消する旨を通知していたことが2020年1月6日に報じられました。今回は、その内容を紹介します。(『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』柴山政行)
富士フィルム、ゼロックスと提携解消で業績や株価はどうなる?
もとは子会社の富士ゼロックスが提携していた
2020年1月6日の日経朝刊一面で、富士フィルムがゼロックスとの販売提携を解消する旨を通知していた、と報じられていました。
期限は2021年3月だそうです。
従来、子会社の富士ゼロックスが米ゼロックスと提携関係にありました。
このあたりの事情について、富士フィルムホールディングス(HD)のニュースリリースで詳しく報じられています。
技術/ブランドライセンスや販売テリトリーなどを規定した技術契約を2021年3月末日をもって終了
2020年1月6日
富士フイルムグループの富士ゼロックス株式会社(本社:東京都港区、社長:玉井 光一)は、米国ゼロックス・コーポレーション(以下、米ゼロックス)との間で技術/ブランドライセンスや販売テリトリーなどを規定した「技術契約(Technology Agreement)」を、現行の契約期間満了日の2021年3月31日をもって終了することを決定し、米ゼロックスへ通知しました。富士ゼロックスと米ゼロックスは、それぞれが開発した技術を相互に利用できる関係を長らく続けてきましたが、富士ゼロックスは、自社の技術開発・商品開発のスピードやレベルの向上により、現在では独自の技術に基づいて自社商品や米ゼロックス向け商品を開発・製造し、供給しております。
米ゼロックスとの「技術契約」が終了した後も、富士ゼロックスは自らの技術に基づく商品の提供を継続します。
また、販売テリトリー制のもと、当社がアジアパシフィック地域において「富士ゼロックス」ブランドによる販売活動を担い、米ゼロックスはその他の地域において「ゼロックス」ブランドによる販売活動を担当していますが、今回の決定により、2021年4月から販売テリトリーの制約がなくなり、当社は新たな自社ブランドにてワールドワイドにビジネスを展開します。
加えて、「技術契約」の終了に伴い、当社は2021年4月1日に社名を「富士フイルム ビジネスイノベーション」に変更します。富士フイルムブランドのもとでグループ内の連携を強化することで、シナジー創出を加速させ、革新的な価値の提供を目指します。
クラウド、AI、IoT技術を活用したソリューション・サービスの市場導入を加速するなど、ドキュメント領域およびドキュメント周辺領域での事業強化、ならびに今後は新たな領域での事業拡大を迅速に展開していきます。
なお、米ゼロックスとの商品供給契約は、「技術契約」終了後も存続しますので、米ゼロックスとの間で、互いを商品供給パートナーとする関係は引き続き継続します。
新聞によりますと、富士ゼロックスは毎年100億円規模のブランド使用料をゼロックスに支払っていました。これがなくなる代わりに、ブランドがなくなるため、富士ゼロックスは自力では販売ルートを開拓していく必要性が高まったのですね!
ブランド使用料は、一種の無形財産を使用することに対する費用支出と考えられます。
ゼロックスという名前自体が一種のブランド価値を持つ財産ともいえますね。
Next: ブランド名の価値を捨てて、富士フィルムは今後どうするのか?
自ら市場を開拓するという意気込みを感じる、ゼロックスとの決別
「柴山コピー機」という名称を聞いたら、なんじゃそれ?となって、怪しそうで、そのコピーを使う気になれないですよね。
柴山会計ラーニングの簿記教材、というからそれを知っている方には簿記教育の信頼性を感じていただいて、教材の購入につながるのと根本の原理は同じです。
その分野での実績や知名度があるブランドは、その名称やノウハウを使用することで収益機会が増大しますから、そこに利用価値が生じるわけです。
ゼロックスのブランド・ノウハウと決別することで、自ら市場の開拓をしよう!という意気込みを感じます。
いっぽうで、ゼロックスから請け負っているOEM(相手先ブランドによる生産)は当面継続する、ということで、一気に関係をなしにするのではなく、様子を見ながら今後の展開を徐々に変化させていく余地を残しているのだと思います。
これを受けて、富士フィルムの株価と今後の業績がどうなるか、気になりますね。
image by : Lutsenko_Oleksandr / Shutterstock.com
『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』(2020年1月6日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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