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上場来高値を更新し続けるNY市場…それに比べて、日本株のブレが大きいのはなぜか?=馬渕治好

このところ、米国株に比べると日本の株価の振れが大きく、しかも日本株の値動きが米国株に劣後しています。そこで今回は、その理由について解説します。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2020年1月19日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。

日本企業の経営を不安視して手を出さない、外国人投資家

事業の選択や集中、株主還元に積極的な企業に対しては買い目線?

このところ、米国株に比べると、日本の株価の振れが大きく、しかも日本株の値動きが米国株に劣後している(株価上昇局面でも、日本株の上昇率が小さい)という展開がしばしば生じています。

その背景ですが、まず日本株の振れ幅が大きい、というのは、たとえば年初の中東情勢を巡る株価の上下動をみると、米国の株価指数の変化率に比べ、日経平均やTOPIXの変化率の方が大きかったことなどに表れています。

そうした日本株の変動率の高さの背景には、多くの要因があると考えていますが(一例として、振れの大きい世界の設備投資に依存した日本の製造業が多い、など)、最も大きい要因は、国内投資家の売買の層が薄く、海外投資家の売買に振り回されている、という面が挙げられるでしょう。結果として、通常は現物の売買代金が少なくなり、海外短期筋の日経平均先物の売り買いに振り回されていると言えます。

そうした国内投資家の層の薄さ、という点に関連して、足元では、米国株の高値更新を背景に、海外短期筋が日経先物を買い上げて、日経平均株価を吊り上げています。一方、国内投資家の現物株の買いが、幅広く東証一部全体に入りにくいので、NT倍率(日経平均÷TOPIX)が上昇しています。

米国株に対して日本株が劣後しているといった点は、日経平均÷ニューヨークダウの比率に表れています。日本円と米ドルといった、通貨の違いを解消するため、米ドルに換算した日経平均をニューヨークダウで割った比率を見ると、長期的に2015年8月をピークとした低下傾向を覆すことができていません。また、短期的には、昨年12月半ばから倍率の低下に拍車がかかっています。

こうした現象を受けて、日本株は米国株に対し出遅れ過ぎているので、海外投資家が日本株を全体底上げ的に買ってくるのではないか、との声も(日本国内では)聞こえます。しかしそうした見解については、筆者が接触している海外投資家は、総じて否定的です。逆に、「日本株が出遅れているのは、出遅れて当然という理由があるからであって、単に株価が劣後しているから買いだとは考えない」という答えです。

その日本株が出遅れて当然、という要因として指摘されるのは、「日本の企業経営に問題がある」という点です。具体的には、経営が合議制で責任の所在があいまいで、リスクをとって攻めることをためらい、経営の方針転換にも時間がかかる、といったようなものです。

もちろん、海外投資家は、すべての日本企業の経営がダメなままだ、とも考えてはおらず、事業の選択や集中(事業売却やM&Aなど)、自社株買いや配当増による株主還元といった動きの積極化は、高く評価しています。ただ、逆に言えば、そうした前向きな経営の変化が生じている企業の株は買えるが、そうでない企業は、いくら株価が安値に放置されていても、買う気はしない、ということになります。

つまり、海外投資家の買いは選別的なものにとどまり、日本株の全体的な出遅れ修正は起こりにくいと考えられるでしょう。

Next: 12月の米国の建築許可件数は、前月比で3.9%減少



理解の種~世界経済・市場の用語などの解説

<建設許可件数>

米国の建設許可件数とは、住宅を建てる前に、申請を行なって地方自治体の建設許可を得ることが必要な場合がありますが、その許可が得られた件数を集計した統計です。住宅着工件数と、同時に公表されます。

この建設許可件数は、景気動向に最も先んじて動くと考えられていますが、それは「建設許可を受ける→住宅を建て始める(住宅着工)→建築が進むにつれて、建設資材の購入や建築作業員への賃金の支払いが行なわれていく」という順で、事態が進んでいくからです。

メルマガ内の「過ぎし花」で述べたように、12月の住宅着工件数は、前月比で16.9%も増加しました。しかしその背景には、12月が好天であったため、建築業者が作業の着手を進めた、という要因が大きかったとの指摘があります。

加えて、12月の建築着工許可件数は、前月比で3.9%減りました。その動きが時差を伴っていずれ住宅着工に影響してくると考えられるため、今回の住宅着工件数の急増は一時的なもので、今後大きく反落する、と見込むべきでしょう。

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2020年1月19日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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