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業績の上昇からピーク局面は買いか?投資判断を決算発表後すぐにしたほうがいい理由=山本潤

景気や業績動向には回復と下降のサイクルがあります。回復局面をボトムからピーク、ピークから再びボトムの2つに分割。どちらの局面で株を買うべきでしょう。(『億の近道』山本潤)

※このコラムは、2005年10月4日に書かれたものです。当時の経済的背景に基づいていますので、ご留意の上お読み下さい。

【第5回】PERが高いときに買い、低い時に売るがなぜ正しい?好決算の銘柄に逆説が当てはまるワケ=山本潤

※1~4回は最終ページに掲載

投資タイミングが決算発表後すぐにやってくるのはなぜか

業績の回復局面を2つに分割して考える

「増益率の変化の度合いで買いのタイミングを探る」という説明をもう少しさせてください。

景気や業績動向にもサイクルがあります。サイクルとは循環という意味で、回復局面があって、ピークがあって、下降局面があって、そしてボトムがあります。ボトムから次のボトムに向かうまでのサイクルをひとつのサイクルとしてみます。

このサイクルを2つに分割します。ボトムからピークへいく局面。そして、ピークから再びボトムへ向かう局面の2つです。

どちらの局面で株は買うべきでしょうか。

ここで多くの方は、「ボトムからピークへ向かう局面で株を買うべきだ」と考えるでしょう。ところが、それは正しい答えではありません。

それならば、業績がボトムへ向かう局面で株を買うべきでしょうか。それも残念ながら違うのです。

買いのタイミングを思い出してください。ボトムからピークへと向かう局面は、さらに2つに分割されるべきなのです。ボトムからの回復局面の途中まで。これを第1のカーブと名づけます。そして、回復途上の段階からピークを迎えるまで。これを第2のカーブと名づけます。

第1のカーブ、ボトムから回復する局面を、業績動向に照らし合わせるとどんなことがいえるでしょうか。業績動向を考えるときは、増益率の変化という観点とその度合い(=インパクト)で考えてください。

第1のカーブ、最初のボトムから回復局面です。言えることは、こんなことでしょうか。

(1)減益局面から増益局面へと企業の業績動向が改善することが予想される
(2)増益に転じたばかりの企業であれば、さらに増益率が加速度的に改善することが予想される
(3)赤字だった企業が黒字化することが予想される。もしくは、赤字が著しく縮小することも予想される

これは、まさに買いのタイミングの定義そのものでしたね。景気循環や業績動向の循環において、第1のカーブは「買い」のタイミングなのです。

それでは、第2のカーブを分析しましょう。

第2のカーブとは、回復途上からピークアウトまでの局面です。業績は回復しているものの、ピークを打つわけです。

この局面では、多くの投資家が間違えてしまいます。ほとんどのプロのアナリストがこの局面を「買い」として後で悔やむ局面です。魔の第2カーブなのです。

言えることは、
(1)増益率は鈍化してしまう
(2)赤字企業は黒字化するか赤字が縮小する

このケースでいえば、(1)の増益率の鈍化は「売り」のタイミングです。また、(2)の赤字が黒字化は、一見「買い」のように判断されがちですが、業績のピークアウトの後のことを考えると、その後、また赤字になる可能性が強く、判断に迷うところです。

Next: 投資家が嫌うピークアウトで、株を買うとどうなるのか?



株価は常に先行指標、業績ピークの前に株価はピークアウトする

投資家は、「ピークアウト」という言葉の響きが嫌いです。ピークアウトとは「伸び悩み」、「足踏み」、「鈍化」を意味します。どれも成長とは逆のイメージです。そうです。この局面では、株は、下がり始めるのです。

つまり株式市場は、いつもスターを求めているのです。

どんな逆境にも負けない(=どんな景気の後退局面でも大幅な増益を達成できる)ヒーローを求めています。増益率を高めている間は、企業はヒーローなのです。しかし、一旦、落ち目になると、他のヒーローへと目移りしてしまうのです。増益率が鈍化しただけで、「期待を裏切った」とされ、お払い箱になります。アイドルの世界ではよくあることですが、株も芸能の世界と変わらない側面があるのです。

一般的に言われていることです。

株価は景気や業績動向の先行指標なのです。株価は業績を半年から一年早めに織り込んでいくので、景気指標や業績がピークに達する前に株価はピークに達するのが普通です。実際の景気の波と株価の波は違うのです。

株価は業績を半年から1年早めに織り込んでいくので、業績がピークに達する前に株価はピークに達して、そこからは業績が悪くなくても下落を始めるのです。

多くの投資家が陥る罠が、この第二のカーブ(=増益率やモメンタムの低下局面)なのです。

業績のピークが近づき、まだ、増益基調は維持されているため、投資家は、「弱気」になれません。なぜならば、まだまだ増益が続くのは事実だからです。

しかし、ピークアウトが近いため、そわそわした雰囲気になってきます。「もうそろそろ売らなければならないかな」と感じ始めている。でも、売れないのです。

理由は、そう思っている間に、あるいは、その前に株価が先に下がってくるからです。心理的には、株価が下がると売れなくなるものです。

なぜならば、業績がよいので、株価はまた戻ると思ってしまうからです。あるいは、自分が高値で売れなかったことが悔しくて、下がってからは、むしろ買い増す、つまり、ナンピン(当初買った値段よりも安く買うことによって買いコストを下げる戦略)を入れてしまうのです。ナンピンを入れるということは、簡単には売らないという決意です。

機関投資家は簡単には売買判断を変えることはありません。自らの間違いを認めるよりも、「PERが安いから保有していても文句はいわれない」と開きなおる面があるのです。

業績はよいのに株価は下がる。

どういう現象が起きると思いますか?PERがとても安く見えるのです。PERが下がってくると心理的に売れなくなってしまう。「こんなにPERが低いから売るのはもったいない」という気持ちが勝るからです。

専門用語では、これをバリュエーション・トラップといいます。これを放置しておくと、大変なことが待ち受けています。

第2のカーブは、本来、株を売却するタイミングなのです。売りのタイミングです。しかし、買い下がりという結末を迎える人があまりにも多い難関なのです。

image by:biletskiyevgeniy.com / Shutterstock.com

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億の近道』(2020年1月15日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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