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業績が成長しているのに株が売られるのはなぜ?株価を動かす「収益モメンタム」の正体=山本潤

投資家は、モメンタムの強い企業を好感して株を買います。この「モメンタム」とはどんなものでしょうか。今回は株価との関係性を踏まえて解説します。(『億の近道』山本潤)

※このコラムは、2005年9月20日に書かれたものです。当時の経済的背景に基づいていますので、ご留意の上お読み下さい。

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熟練の投資家たちは、業績から何を読み取っているのか

投資家が重視するモメンタムの変化

増益率の変化をモメンタムといいます。企業の「収益モメンタムが強い」という表現を使います。投資家が好感するのはモメンタムの強い企業です。なかなか日本語に言い換えにくい言葉ですが、あえて言うなら、「増益率の高さ」でしょうか。逆に、「収益モメンタムが低下している、悪化している」ときは、株価は冴えない展開となります。

非常に重要なポイントなので、覚えておいてほしいのですが、かなり高い増益率を達成したとしてもモメンタムが低下する場合があるのです。いくら増益を続けても収益モメンタムが低下して、株価は下がってしまうことがあるのです。

たとえば、こんな場合です。前期に100%の増益率を達成した企業があるとしましょう。増益率100%といえば、収益が1年で2倍になったということです。

その企業が本決算の発表で、今期の増益率を30%で発表したとしましょう。30%の増益率といえばかなり優秀ですね。これほどの高成長企業は探すのが大変なぐらいです。重要な点です。いくら稀有な高成長企業であっても、株価は暴落してしまうことがあるのです。

ロジックは簡単です。増益率が鈍化してしまったからです。100%の増益率の後、人々はさらに100%の増益率を期待していたかもしれません。

100%は無理にしても、80%ぐらいの増益率は達成できるかなと見ていたかもしれません。それが「たったの30%」の増益率では失望ものです。期待外れなのです。

増益率が著しく鈍化した場合、「モメンタムは悪化した」といいます。高い増益率を維持しているのにも関わらず、悪化や鈍化という表現を使わざるを得ないのです。

そして、悪化、鈍化という表現は株価には必ずといってよいほど、マイナスに効くのです。

増益企業のモメンタムの悪化が株価の下落を招くということは、案外、企業経営者もわからない人が多いのです。仕事柄、社長によくインタビューをしますが、「なぜ株価が下がるんだ?業績は堅調なのに…」と愚痴をいう経営者が案外多いので驚いています。上場企業の経営者の中にも株価の見方がわからない人が多いことの裏返しです。

あまりにも高い成長をしてしまうと、どんどん成長の選択肢が狭まってきます。大型で自社で有利のM&Aをしたり、大幅な株式分割を実施したりするぐらいしか手がなくなってきます。

考えてみれば当然のことです。100%成長を10年続けたら、利益規模は何倍になるでしょうか。1,000倍以上になります。ところが、市場の規模には上限があります。市民の財布の中身を全部足した以上に個別企業の売上げが成長することはありません。高成長企業は、ゆくゆくは、その成長を鈍化させる以外には選択肢はないのです。

Next: モメンタムと株価の関係を読み解く5つのパターンとは?

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