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東京「都市封鎖」は不可能。緊急事態宣言をしても海外のようなロックダウンはできない=澤田聖陽

ネット上では「東京でロックダウンが起こる」との声が高まっています。しかし日本では諸外国のような都市封鎖は不可能です。法律を確認しながら解説し、政府が緊急事態宣言より先にやるべきことを考えます。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)

※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2020年3月31日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

東京でロックダウン(都市封鎖)が起こる?

ネット上では「東京がロックダウン(都市封鎖)されるのではないか」という噂が広まっているようです。

すでに日本政府や知事からもかなり強い形で自粛要請は行われています。それにもかかわらず東京においてコロナウイルスの感染者が増えているため、今以上に強い形で行政による何かが行われると考える人が多くいるようです。

おそらく中国で行われた武漢の閉鎖、アメリカのニューヨークやヨーロッパ諸国で行われているロックダウンを想定して言っているのでしょう。

法治国家では、行政は法律に基づいて行われており、まず法律を冷静に確認する必要があります。

日本ではロックダウン「要請」しかできない?

一般的にネット等で言われている「東京でロックダウンが起こる」というのは、国が緊急事態宣言を行い、その後、東京都知事が東京のロックダウン(都市封鎖)を発表するというものです。

緊急事態宣言は、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法(新型コロナウイルス特措法)に基づき行われます。

新型コロナウイルス特措法により、すでに政府内に対策本部が設置されており、感染症の専門家による諮問委員会が緊急事態宣言を出す要件を満たすと提言すれば、首相が緊急事態を宣言できるとなっています。

新型コロナウイルス特措法を見ると、第45条・第45条の2・第45条の3の部分がロックダウンに関連する条文になると思います。

少し長くなりますが、以下に条文を記載します。

第四十五条 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、当該特定都道府県の住民に対し、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。

2 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設(通所又は短期間の入所により利用されるものに限る。)、興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定する興行場をいう。)その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者(次項において「施設管理者等」という。)に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。

3 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。

内容を読んでいただければわかる通り、政府が緊急事態宣言を行っても、最終的には都道府県知事は要請することしかできません。

Next: もう1つ関連する法令として、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療――



諸外国のような都市封鎖は「不可能」

もう1つ関連する法令として、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)があり、新型コロナウイルスの感染がさらに広がった場合に備えて、すでに感染症法の一部を改正、施行しています。

ロックダウンに関連する条文は、以下の33条になるかと思います。

(交通の制限又は遮断)
第三十三条  都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため緊急の必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、政令で定める基準に従い、七十二時間以内の期間を定めて、当該感染症の患者がいる場所その他当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある場所の交通を制限し、又は遮断することができる。

こちらは強制力があり、それに反した時は50万円以下の罰金という罰則規定もあります。

しかしながら最大72時間という期限を設定されており、この法律をもって諸外国のようなロックダウンを行えるかという点については、結論としては無理ということになります。

要するに日本においては、現行法では長期(72時間を超える)の強制力のあるロックダウンは出来ず、都道府県知事による要請しかできない、ということになります。

もちろん要請であるから効果が全くないと言うつもりはありません。

緊急事態宣言が行われ、都道府県知事から今よりもより強い形で要請が行われれば、それに反した行動を行う人は社会的な批判や制裁を受けることになり、感染拡大の抑制には一定の効果はあるとは思います。

しかしながら諸外国で行われているようなロックダウンとは違った形になります。

政府が損失補償案をまとめるのが先

また緊急事態宣言を行い、それに基づいて都道府県知事が要請を行う場合、法律上は要請ですが、今までの要請のように、それに伴う損失を政府が補償しないというわけにはいかなくなると思います。

よって緊急事態宣言を出すのであれば、損失の補償案をまとめてから宣言する必要があります。

例として、イギリス政府は3月20日、休業を余儀なくされる従業員の給与の80%を、1人当たり月2,500ポンドを上限に政府が肩代わりするとしました。3月1日に遡り、当面3カ月間実施する(今後延長の可能性もあり)と決めています。

アメリカは総額約220兆円の緊急経済対策で、現金給付等で補償を行おうとしています。

日本においても、緊急事態宣言を出して経済活動を宣言するならば、相応の補償が求められてくるのではないかと思います。

アメリカでの感染者の急拡大を目のあたりにしており、東京でも感染者数が日々増えてきているので、早めに緊急事態宣言をし、ロックダウン(日本では法的にはあくまで要請だとしても)をして感染を防ぐべきだという意見は正論です。

しかしながら、ロックダウンを行うことで経済活動のかなりの部分が止まるわけですから、補償なしで行えば、結果として多くの自殺者を出すという結果になりかねません。

ロックダウンを行うべきだというのは簡単だが、行政の立場としては当然補償と一体でなければと考えるのは当然であると思います。

Next: 仮に日本政府が、法律上は要請であるから補償は必要ないと考えているよう――



緊急事態宣言より先にやることがある

仮に日本政府が、法律上は要請であるから補償は必要ないと考えているようなことがあるとすれば(さすがにそれはないと考えているが)、ロックダウンをしても十分にコロナウイルスの拡大を抑えるような外出抑制効果を期待できないと思いますし、その後に大量の自殺者を出すなどの負の遺産が残ることになります。

個人的な意見としては、今はまだ緊急事態宣言を出して東京をロックダウンするような状況ではないと考えています。

外出自粛の要請が効いていないという報道がされていますが、もちろん一部ではそのような人があるのは確かですが、マクロで見れば多くの国民が政府や自治体の要請に応えて自粛していると思います(少なくとも繁華街はガラガラです)。

あとは緊急事態宣言を出さないとしても、飲食店や商店等の補償を早めに進めてあげるべきだと思います。(すでに小池知事に会見でも飲食店が名指しで悪者になっていますし)そうすれば飲食店や商店は安心して休業することができます。

飲食店や商店が休業していれば、夜に外出する目的もかなり少なくなります。

彼らも、今は屈(かが)むべき時だということはわかっていると思いますが、従業員もいますし安易に休業するというわけにはいかないわけです。

早めに補償を行うことを決めて、この1~2か月間、彼らが安心して休業できるような環境を整えてあげる事が、今行政のやるべき仕事だと考えています。

個人的には上記の通りの考えですが、緊急事態宣言が出される可能性は五分五分だと思います。

菅官房長官は会見で明確に否定していましたが、医師会の要請などもあり、医療の現場からは必要だという意見も強いようです。今後の感染者数拡大の状況次第かとは思います。

政府がどのような判断を行うか、注視していく必要があります。

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元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』(2020年3月31日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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