コロナ禍を受け、IMFは世界経済見通しを下方修正。さらに、景気後退時でも貯金を切り崩して消費を支えるはずが今回は違う、と従来との差異を示しています。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)
※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2020年6月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
IMFの下方修正から見える世界経済の動き
IMF(国際通貨基金:International Monetary Fund)が世界経済見通しを下方修正しました。世界のメディアが懸念とともに報じています。
IMF曰く、「消費とサービスの生産が顕著に落ち込む」と。合わせて「景気後退時には、多くの場合、消費者は貯蓄を切り崩したり社会的セーフティネットや家族の援助に頼ったりして消費を平準化する。そのため、消費が受ける影響は投資に比べて小さくなる。しかし今回は、消費やサービスの生産も著しく落ち込んでいる」とも。
景気後退時でも貯金を切り崩して消費を支えるはずが今回は違う、と従来の景気後退との差異を示しています。
相対的に製造業は良いとの判断も可能です。ハイテク株が今局面にて伸びたのも、こうした考え方が背後にあります。
今後を占う「2つの注目点」
今後を占う上では、2つの点が注目され易そうです。
<その1:消費はいつ回復するのか?>
1つは弱い消費がいつ回復するのか。5月の指標をみると押し並べて改善を示していました。米国の消費はコロナ禍前の部分もみられたくらいです。
これが抑圧された消費が一気に噴出した結果なのか、回復の一歩なのか、6月以降の指標で確かめられます。もし単なる「一気に噴出」ならば、IMFの見通しは現実味を増してきます。ネット社会の情報伝達速度を考慮すると、「一気に心配して一気に消費」の可能性もあるかなと気になるところです。
<その2:過剰在庫が積み上がることはないのか?>
もう1つは「製造業は良いとして、過剰在庫が積み上がることはないのか」という点です。コンピューター関連の投資もここ数年、波が大きい感じがします。
一例がビットコインをはじめとする仮想通貨(暗号資産)関連への投資です。ビットコイン価格が急騰から急落へと転じた過程に合わせる形で、製造業関連の収支も上下しました。
今は「巣ごもり」「テレワーク」の名の下にハイテク企業への注目が高まっています。しかし、こちらにしても新たな勤務形態が落ち着くのに合わせて、需要も一巡するはずです。これは5G関連とはまた別のことでして、注目度が混同・増幅されていないかという気もします。
結局は服の流行り廃りと同じで、どの流れに乗り易いかということなのかと。ファッション同様、予測を当てることは難しいのですけど、流行りが一巡したかどうかを見ることくらいは可能です。
なんとなく「製造業は良い」も、市場はこなしたのではないでしょうか。
次は、「おカネがあふれているから」だけでリスク資産価格を押し上げることができる時機探し、のはず。近視眼的には「午後の日銀ETF買い期待」もこの一種ですけど、より大きな動きを勘案する中では、もう少し地固め局面が必要です。
Next: ちょっと気になるのが債券、特に米国債の動きです。株安を受けて長期金利――
気になる米国債の動き
ちょっと気になるのが債券、特に米国債の動きです。株安を受けて長期金利は低下しましたが、幅は小さめです。一般的に金利がある程度低下して来ると、「債券よりも株のほうがお得」となって株買いに動意を与えます。
でも、金利があまり下がらなければ、「債券から株」も勧めにくいところです。
Fedも日銀と同じ様な形で米国債等を買い入れています。このため、米国債市場の動きも大人しくなりつつあります。これは市場全体の活力を奪う要因にもなります。日本株が良い例です。
別の言い方をすれば、米国債買いが目立った時こそ、株の押し目買い好機です。何処も中央銀行の存在感が膨張したため、市場活力は見え難くなっています。
そんななかでも米国債には未だ息吹が感じられると、確認したいところです。
今回のまとめ
・IMFが見通し下方修正、通常の後退局面にて起こる消費下支えの欠如を指摘
・「製造業は良い」は何時まで有効でしょうか
・米長期金利の動きが緩慢になりつつあることも、株買い時機を見難くしています
<初月無料購読ですぐ読める! 7月配信済みバックナンバー>
※2020年7月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
- 20200702 #0793 Fedは「支配」に「経済の体温計」崩壊を意識(7/2)
- 20200701 #0792 BISが示す中銀のジレンマ(7/1)
※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2020年6月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
『高梨彰『しん・古今東西』』(2020年6月25日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中
高梨彰『しん・古今東西』
[月額880円(税込) 毎週月・火・水・木・金曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
チーフストラテジストとして、年200回ほど発行していたメルマガ『古今東西』が、『しん・古今東西』としてここにリニューアル。株・債券・為替などの金融市場全般から、マクロ経済、市場心理など、「これ何?」なことを徒然なるままにお伝えします。四方山話も合わせ気軽に読めて、しかも相場を「自分で判断出来る」ようになるメルマガです。是非一度お試し下さい。