金(ゴールド)の価格がプラチナを上回ってから約6年。なぜ希少性の高いプラチナが、金の半値ほどしかないのでしょうか。その理由と、コロナ禍におけるプラチナ相場について解説します。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。
金より希少なプラチナ、なぜ安い?
金(ゴールド)の価格がプラチナを上回って、6年近くが経とうとしています。
僕などは「プラチナが金より断然に高い世界」で長いこと生きてきましたので、なかなかこの現状がしっくりときません。
人間が有史以来で掘り出した量を比べますと、プラチナは金の1/30ほどに過ぎないそうです。
しかも1年あたり新たに採掘する量を比べても、金の約3,500トンに対しプラチナはたったの190トンほどです。
これほど希少性の高いプラチナが、なぜ金の半値ほどしかしないのでしょうか?
いろんな理由があると思いますが、ひとつの理由として次のことが挙げられると思います。プラチナは、金のように「準通貨」とは位置付けられていないためです。
産業用途の豊富さが価値を下げている
金は産業用途が少なく、それだけ純粋に通貨的性格を持ちやすいといえるでしょう。
これに対してプラチナはどうか。プラチナは、例えば自動車の触媒や医療器具、電子機器といった多方面の産業で使われています。
例えばですが、もしプラチナが金のように準通貨的性格を持っていたらどうでしょう。昨今のような過剰マネーの環境下では、プラチナの希少性から考えると、例えば1オンス=3,000ドル、4,000ドルといった値が付いていても不思議ではありません。
そのような高値ではとてもではないですが、自動車の触媒として使えませんし、他の産業用途でも使用されなくなってしまうでしょう。
このように私たちにとってプラチナが有益な金属であるがゆえ、かえって準通貨として用いられない理由のひとつだと思います。
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希少過ぎておカネの代わりにならない
あと希少性の高さも、プラチナが準通貨になれない理由のひとつだと思います。
通貨として用いられるためには一定の流通量が必要です、銀のようにあまりに多ければ準通貨としてふさわしくはありませんし、逆にプラチナのように少なすぎても、通貨として使用するのに不便です。
このようなことからプラチナは準通貨としての性格を持っていないのだと思います。
そして、そのことが現在のようなお札ジャブジャブ環境で、準通貨として存在感を高める金(ゴールド)に比べて、安値に放置される理由のひとつではないかと僕は思います。
通貨ではないので、昨今のように紙幣過剰時代には、おカネの代替品である「金」よりも安くなる…というワケです。
コロナ禍で供給不足に。ここからプラチナ相場はどう動く?
では、今後のプラチナ相場はどう動くのでしょうか。
準通貨としての性格を持たないとすれば、相場は主に産業用金属としての需給で決まることになるでしょう。
先日、プラチナの国際調査機関であるワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)が、2020年4-6月のプラチナの需給のまとめを発表しました。
それによると、世界のプラチナ需要はコロナ禍の影響をモロに受け、対前年同期比で-19%の50トンにとどまったとのことです。
これに対して、供給はどうだったのでしょう。コロナによる悪影響は需要以上に大きく、供給のほうは同35%減の44トンまで落ち込みました。その原因は、世界のプラチナの70%を産出する、南アフリカ鉱山の産出停滞だそうです。
WPICはコロナ以前の時点では、2020年の需給を8トンの余剰と見ていました。それが直近の予測では、逆に10トンの不足に修正されています。
年間の需要が250トンほどしかありませんので、この供給不足10トンは決して小さなものではないと思います。これは年終盤のプラチナ相場に、なにがしかの影響を与えるのではないでしょうか。
ご参考までに、現在のプラチナ価格は1オンスあたり850ドル前後。これに対して、年初時点ては同970ドルほどでした。
『一緒に歩もう!小富豪への道』(2020年9月25日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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